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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十五章【逢沢家で恋話】
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【翠視点】170

「誰かさんみたいに、素直になれずにいたらタイミング逃すぞ香枝」


そう言いながら高梨先生が私へと視線を向ける。


(――――この(ひと)、どこまで分かってて…?)

突然私に爆弾を落としてきた先生に、私は反論せず黙ったまま、無表情に努めた。


素直になれずにいるのは、分かってる。

このままだと、ダメだってことも―――…。








「…さてと、帰るかな」

食べ終わったお皿を一緒に片付けてくれて、一段落ついたところで先生が言った。


「え、帰っちゃうんですか?」

優妃が、名残惜しそうな声を出す。


「香枝、そういう台詞は早馬にだけ使いなさい」

「えっ?」

「………」

優妃の肩に手を置いて、高梨先生が爽やかにとんでもないことを言った。優妃はポカンとしたまま動かなくなった。

(まぁ…どういう意味かは、優妃には分からなかったみたいだけど。)


「楽しかったよ。葵さんに起きたらよろしく伝えといてな。」

「はいはい。ではどうぞ、帰ってください。」

リビングのドアを先に開けて、帰るように促す私を先生が愉しそうに見下ろしている。昔からバスケットマンだったからか、背はかなり高い。


(見透かされてるみたいで…なんか、ムカつく)


「ミーちゃんの安定したひねくれ顔も見れたし、これから大人の付き合いがあるからね」


(彼女か…)

そう考えたらチクンと心が痛んで、そんな自分に私は苛立つ。

(って、私には関係ないじゃん…バカか)


「あぁほら…不貞腐れないのミーちゃん。」

クスッと笑みをもらして、先生が少しかがみこむように私の顔に顔を近づける。


「“別れた”んだろ?―――彼氏()とは」

耳元でそう囁いて、先生は玄関へとスタスタ向かう。


「っ!!」

バッと耳を塞ぐ私を横目で見ながら、口の端を上げてニヤリと笑うのを私は見逃さなかった。


(こいつ、こいつ、コイツー!!)


「じゃあな、二人ともメリークリスマース。来週の冬期講習忘れんなよー」

ヒラヒラと手を振りながら、先生は帰っていった。


「うっさい!!はよ帰れ!」

それぐらいしか言い返せなかった私は、やっぱりガキだなぁと思った。


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