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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十四章【クリスマス】
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162

「――――…ところで、どうしてここに?」


朝斗さんが、少しつらそうに問い掛ける。その問い掛けに…私はまた、不安で胸が苦しくなる。


(もしかして、帰される…?)


頬に流れた涙を、隠すように慌てて手で拭う。

(これじゃ、私…本当に何しに来たのか…)


朝斗さんに会いたかっただけ?

泣いてすがりにきたの?

違うでしょ…


「紫さんが用事があるからって朝、連絡があって…」

「…そう。(あいつ)、なんで香枝さんに連絡とか…ごめんな。」

「あ、謝らないでください。私は嬉しかったので!」


泣いちゃだめだ…

名前で呼んで貰えなくなっただけで…

他人行儀な口調に戻ったってだけで…

泣くな私…


私は必死にそう言い聞かせて、涙を堪えて笑う。


「嬉しいに決まってますよ、言ったじゃないですか!いつでも連絡してくれたら私、駆け付けますって」


そう。

私はもっと強くなるんです。

貴方にもっと頼ってもらえるように。


「あ、お腹空きませんか?お粥とか作りますよ?」

こんなふうに、この場から逃げようとしてる時点で、まだ私は弱いままだけど…。

(でも…――)


「・・・作れるの?」

朝斗さんが、つらそうなのに意地悪に笑う。

その瞬間、ぎゅぅぅっと胸が締め付けられた。

(あ…――――)

朝斗さんが、素顔を見せてくれた。

付き合ってた時みたいに、心を許してくれてるみたいに。


「し、失礼な!!作れますよ!!キッチン貸していただければ」

自分の気持ちを誤魔化すように、私は声をあげる。


バレませんように…

朝斗さんと話せてることに、ドキドキしてる自分。

笑顔を見せてくれただけで、泣きそうになってる自分。


「――――うん、じゃあ頼む…」

朝斗さんがそう言ってくれて、私はホッとした。


「朝斗さんは、ここで寝ててくださいね」

「え、でも心配だから…」

「ダメ!」

起き上がろうとした朝斗さんを、私は思いきりベッドへ押し戻す。


「寝、て、て下さいね!?」

私が必死にそう言うと、朝斗さんが笑った。


「分かった…」

クスクスと笑いながら、そう言った。

私はすぐに部屋を出て、パタンと閉めたドアに寄りかかる。


(顔が、熱い…)

―――――…まだドキドキしてる心音が、甘い。



(私はまだ弱いままで、貴方に頼ってもらえるほど強くなれてないけど…)


今、この瞬間。

朝斗さんと一緒にいられるだけで。

朝斗さんがそうやって笑うだけで。

それだけで…―――。


私は…―――いくらでも強くなれる気がした。

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