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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十四章【クリスマス】
201/315

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『…ヴーッ…ヴーッ…』

マナーモードのバイブ音で、私は意識をとり戻した。


(なんか…電話が鳴っ…て―――?)

なぜか横たわっていた身体を起き上げようと、目を開けた途端、視界に入ってきたのはかなり至近距離の…朝斗さんの寝顔だった。


「ひっ…」

悲鳴に近い声を咄嗟に抑え込む。

(な…っ、えっ?私、今までここで…ね、寝てた? )


自分が今まで、朝斗さんの横で抱き締められたまま眠っていたらしいことにそこで初めて気が付いた。


看病しに来て、うっかり一緒に寝てたとか…。

何してるの自分!

しかも、朝斗さんが隣にいるのに…爆睡とか…!

もう!恥ずかし過ぎる!


私が悶えている間に着信は切れてしまい、私はそっと身体を起こす。


「ん…」

朝斗さんが寝返りを打つ。

それだけでドキーーンッと心臓が止まりかけた。


起こさないようにそっとベッドから降りてから、こっそり朝斗さんの寝顔を近くで見つめる。

ずっと会いたかった人が、目の前で無防備に寝てる。


(―――寝顔も…格好いいんだなぁ…)


私は彼女でもないのにここにいる。

しかもさっき、キスまでしてしまった。

三浦さんに悪いことしてる。

そんな罪悪感も確かにあるけど。

でも、それよりも…―――。


ここ(朝斗さんの隣)にいたいと願ってしまう。



(そ、そうだ!これじゃ寝込みを襲ってるみたいじゃない?――――せめて何か、役に立たないと…っ)


目を開けないでと念じながら、私は朝斗さんの顔を覗き込み、額にそっと手を置いた。


(熱い…冷やさないと…)

そう言えば、首の方が熱が下がりやすいんだったよね?


冷えピタを首の後ろに貼ろうと、朝斗さんの後頭部にそぉっと手を入れる。


「………何、してるの?」

パッチリと目を開けた朝斗さんが、突然口を開いた。

「ひゃっ」

驚いた私は、頭を持ち上げていた手を急いで抜いた。

「って…」

ボスッと音がして、枕の上に朝斗さんの頭が落ちる。

「ごごご、ごめんなさい。すみません…っ、私、あの…」


怒られる?

迷惑だって、言われる?

すぐに帰れって言われる?

そんなマイナスな言葉が浴びせられるのではと、私はビビりながらうつ向いていた。


だけど朝斗さんは、全く想定外の言葉をくれた。

「薬、ありがとう…」

「え?」


「風邪薬…たくさん買ってきてくれて…」

まだつらそうな表情の朝斗さんが、弱々しい声で言った。

(それは…私が以前(まえ)に差し入れした…あの薬のこと?)


「朝斗さん…」

「ん?何?」

(今日は、いつもの朝斗さんなんですね…)

優しくて、穏やかで。

私の知ってる、私の好きな朝斗さん。


(あぁ、どうしよう…感情が…止められない…)


「朝、斗さ…ん」

「何で、泣くの?」

(知ってる、くせに…――――)


貴方が好きだからです。

ずっとこうして…名前を(朝斗さんって)呼びたかった。

私が呼ぶと貴方はいつも、嬉しそうにこちらを向いてくれたから。


好きです。朝斗さん。好きなんです、今も。

例え貴方が、三浦さんと付き合っていても。


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