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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十四章【クリスマス】
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朝、私は携帯電話の着信音で私は起きた。

「んんぅ…誰?」


寝起きの悪い私でも、表示されたその相手の名前を見た瞬間、一気に目が覚める。


(え…っ、な、なんで?)

―――――電話をとる手が震えた。


『優妃ちゃん、ちょっと今からウチまで来てもらえないかな?』

紫さんの声が、耳元で聴こえる。

嘘じゃない、現実だ…と、ドキンと心臓が跳ねた。


「え……ど、うしてですか?」

『朝斗が、いま本当に(● ● ●)風邪引いてて。でもわたし今から出掛けなくちゃいけないのよ。』


朝斗さんが、風邪?

それは心配…――――だけど…。


「でも私は…。それに、あの…三浦さん(彼女)は?」

『私、その()(彼女)の連絡先も知らないし。ね、お願い!』

本当に急いでるから、と言われて私はアパートの前まで来てしまった。

ドキドキするのと、同時に思い出してしまう。


『もうここにも来ないでくれるかな?迷惑だから』

―――あの日、朝斗さんが言った言葉を。



「あぁ、優妃ちゃん!助かったわ!これ、合鍵!それから、なんかあれば救急車呼んでくれていいから」

「えっ…」

玄関前で立ち尽くしていた私に、玄関のドアを開けた紫さんがそう言うと私の掌に鍵を握らせた。


「じゃあ、よろしくね」

「あ…え…」

紫さんはブーツのヒールをカツカツ鳴らして、走って行ってしまった。


(良いのかな…本当に…?)

「―――――お邪魔、します…」

小さな声でそう呟いて、私は勝手に家に入った。


朝斗さんの家に入ったのはすごく久しぶりで、それだけで胸が一杯で…涙が出そうになる。


(ダメダメ、私は看病を頼まれて来ただけなんだから!しっかりしろ!)

そう気持ちを引き締めて、私は朝斗さんの部屋へ向かった。


「…朝斗さん?」

ドアを開けて、そっと声をかける。でも、朝斗さんから返事はない。


ね、寝てるのかな?

なんだか苦しそう…寒いのかな?それとも暑い?


ベッドに寝ていた朝斗さんにドキドキしながら近付く。


「―――…ひ?」

(え、今…何か言った?)


「朝斗さん、大丈夫ですか… っ?」

そう小さく声をかけながら顔を覗き込んだその時。突然、朝斗さんの腕が伸びて私をぐいとベッドの上に引き込んだ。

(え?起きて…る?)

そう思った瞬間、―――――…唇に熱い…あの感触がした。


「んっ」

(…え………朝斗さ…ん!?…えっ…?)


「好きだ…」

混乱する私の耳元で、朝斗さんが囁いたのは…。

私がずっと欲しかった言葉。


ねぇ朝斗さん…何の夢見てるの?

それは…誰の夢ですか?

誰に向けた言葉なんですか?


――――…涙が溢れる。


それが、夢の中の誰か(● ●)の代わりだったとしても…涙が出るほど嬉しかった。


(今なら…―――許してもらえますよね…?)


「朝斗さん…好きです。―――好きですよ?」

そう囁いて、眠っている朝斗さんを――――私はそっと抱き締め返した。

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