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「バカなの?」
昨日の放課後の話をしたところ、翠ちゃん、―――逢沢翠が、私にズバッとそう吐き捨てた。
「え…」
「あの早馬先輩に告られたなんて、もう一生分の運を使い果たしたと言っても過言ではないわよ」
「………そっか…」
(ということは、私の一生分の運は、昨日使い果たしたということか…―――)
「それを、断るだなんて…。―ーこれだからお子ちゃまは…」
翠ちゃんがため息混じりに言うと、私をじっと見る。
「な、なに?」
「にしても、早馬先輩も一体どういうつもりだったのかしら。早馬先輩の彼女達って、こう…出るとこ出てる的な?セクシー系が多かったのに」
「翠ちゃん、やめて…」
(出るとこ出てる…って、そんな恥ずかしい表現、しないでよ…)
慌てて翠ちゃんの口を押さえようとした私に、
翠ちゃんは愉しそうに笑う。
「どんだけ純粋なのよ、優妃」
私は生まれてから15年、一度も男の子とお付き合いしたことがない。
というか、男の子と仲良く話すことすら出来ないでいた。
だから昨日の放課後のことは、私にとっては大事件で。
しかも相手はあの、早馬先輩。
「まぁ優妃はさ、優妃のペースで恋とかしてけばいいんじゃない?」
世話好きの翠ちゃんのおかげで、このクラスでもなんとかやっていけている私。
『俺と付き合わない?』
あれは、夢?
図々しい願望が強すぎて、夢になったのかな?
誰にも言えない、私の密かな…初恋。
早馬朝斗先輩。