【朝斗視点】160
『今日、カラオケでクラス会だったらしいぞ。』
その晩、琳護からそんな無駄な情報がlineで送られてきた。
(知ってた…)
というか、直接見たから。
俺はスマホをベッドの上に放り投げ、自分もそのままベッドに横になった。
優妃は今も、一護と…――――?
いや、これでいいんだ…。
逢沢がいつか言っていたことが本当なら、本来は、こうなっているはずだったのだから。
(―――俺が、彼女と付き合わなければ。)
彼女は優しい。
純粋で、真っ直ぐで。
大切だった。
優妃のすべてが大切だった。
優妃が俺の居場所だった。
だからこそ、俺が傍にいたら…――――
家族の居場所がない分、俺はあの子に依存してしまう。
束縛して、依存して、そして彼女は逃げ道を無くす。
(だから、これでいい。)
だから彼女には関わらない。
俺は…平気にならなきゃダメなんだ。
そんなふうに言い聞かせて。
彼女への想いをなくす方法ばかり考えて。
その度に彼女への想いを募らせていることに、俺は気付かなかった。
「朝斗さん?」
「優、妃…?」
あぁ…またこの夢だ。
君が好きで…
好き過ぎて…
もう、夢の中でしか…逢えない。
“俺の優妃”
ずっと、こうして抱き締めたかった。
「朝斗さん、大丈夫ですか…っ?」
ずっと、声が聴きたかった。俺の名前を呼ぶ優妃の声を。
「んっ」
優妃を抱き締めてキスをすると、彼女から生々しい熱い吐息が漏れた。
「好きだ」
好きなんだ。
だから、傍にいて。
誰の居場所にもならないで…ここに。
俺のすぐ隣に。
――――夢の中でなら、許されるだろ?
優妃…――俺の愛しい人。




