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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十三章【クリスマスイブ】
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【一護視点】153(回想録)

【~クリスマス前の、一護と透子の話~】


俺だって頭では解ってた。

こんな報われない思いなんて、さっさと捨ててしまえばいいと。


だけど、気が付けば目で追っていて。

気が付けば想ってた。


―――不毛な、俺の片想い。


ケリをつけると優妃に告げて、諦める方法を探してた…そんな時に、俺は透子に告白された。


中学からずっと好きだったと。


驚いた。こんな想いを透子はずっと抱えていたのか

と。そしてそれに気が付かなかった俺の鈍感さに。


透子のことは好きだ。気さくに話せるし、趣味も合う。だからもしかしたら…。


この想いを消せるかもしれないと思った。


「友達からなら…」


いつかこの友達としての「好き」が、恋人としての「好き」な気持ちに変わるなら。


そう思っていた…―――その矢先。


朝斗と優妃は、――――突然別れた。

優妃の浮気が原因で。


(信じられるわけ、ねーだろ…。)


優妃がそんなことするわけない。あんなに朝斗のことが好きだったのに。ありえねー。




頭ではダメだと分かっていながらも、俺はやっぱり優妃が気になってしまっていた。


諦めるっていったくせに…。嘘つきだ。




――――クリスマスが近づいたある日の放課後、俺は…ある決心をしていた。


「ねぇ一護っ!クリスマスどうする?」


いつものように明るく話し掛けてくる透子を、俺は…見れなかった。


「…透子、ごめん」

俺が頭を下げてそう言うと、透子が面食らった表情(かお)をした。


「あ―…、なんか用事とか?私は別に他の日でも…」

それでも明るく取り繕おうとする透子に、胸を痛める。


「ごめん。やっぱり…透子のこと「ちょっと待って、やだ…」

透子の顔から完全に笑顔が消えた。


「何を言う気…?まだ、私たち何も…」


―――声が震えて…大きな瞳が、揺れている。

勘のいい透子の事だから、俺が何を言うつもりなのか既に解っているようだった。


「ごめん。俺、やっぱり優妃が好きだ」


目を伏せて、俺は告げた。

ハッキリ言うつもりだったから、これで良い。

悪いのは、俺だ。



「…知ってたし」


長い沈黙の後、ハァーッと息を吐いて透子が言った。右手で顔を隠しすと、サラリと長い髪が前に流れた。


(知って、た?)


「バカじゃないの?隠してたつもり?笑っちゃう、バレバレだったっての」


いつもの調子で透子は、半笑いで軽口をたたく。

長い髪で顔が隠れていて表情は見えない。

だけど、分かる。―――…泣いてる。


「透子…」


かける言葉が見当たらなくて、俺は手を伸ばす。

(―――ダメだ…。)


透子の頭を撫でようとして、その手を()めた。

(中途半端にしたら、意味ねーだろ…)


俺が悪いんだから、俺は透子に憎まれればいい。嫌われるべきなんだ。


暫くして、透子が顔を上げた。無理して笑ってるのが分かった…。


「―――大丈夫、私は。うん、大丈夫。分かってたし、いつ言われるかなぁって、思ってたし。」


透子は、良い奴だ。友達も多い。いつも明るい。

いつも笑顔のイメージ。

そんな透子が、無理して“いつもの自分”を作っている。


「でも、応援はしないから。またフラれちゃえ!」


ベッと舌を出してわざとおちゃらけて見せる。だから俺も、いつも通りに応えた。


「―――おう。ありがとな」


「私だっていつまでも好きでいるわけじゃないからね!さっさと諦めて戻ってきなよね」

「なんだそれ、ツンデレか?」


「ばーか」


そう言って、涙を我慢して笑う透子の姿がずっと胸に残ってる。


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