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様子のおかしい一護くんに首をかしげていた私の目の前を、白いものがチラチラと遮った。
「…あ、寒いと思ったら雪…降ってきたね」
(キレイだなぁ…雪…)
どこか心許ない小さな雪が舞い散るのを、公園のベンチに座ったまま少し空を見上げて呟く。
「だな…」
一護くんも、小さく頷いた。
「私ね…、」
私は雪を見ながら、何気なく…一護くんに話し掛けていた。
「…今日一護くんが来ると思わなかった」
雪を見ながら一護くんが黙って私の話に耳を傾けてくれている。
「透子ちゃんと、一緒じゃなかったんだ?」
「…言うと思った。」
私の言葉に、一護くんは少し笑ってそう言った。
(え?)
「その事なんだけど」
一護くんの言葉に驚いたままの私を見て、一護くんは笑うのをやめて…真顔になった。
「俺さ…、透子とは付き合ってないから」
真剣な表情で、一護くんが私を見つめて…まるで決心したみたいに、一言そう告げた。
「………」
(今さらだなぁ、一護くん。私は知ってるのに。)
「うん…、」
一護くんと透子ちゃんは付き合って―――…“ない”?
「え?」
――――付き合って…ない??
「でも…え?あれ?」
思考がついていかない。
(どういうこと?だって二人は…―――。)
「だって透子ちゃんは…」
一護くんのことが好きで…―――。
訳がわからなくなって、あたふたしていた私に一護くんがまた笑った。
「ごめん…えっと私、良くわかってない…。」
「うん…だよな。でも、謝るのは俺の方なんだ」
混乱する私に、一護くんが安心させるように優しく微笑んだ。そしてゆっくり前を向いて、話し出した。
「後夜祭の時、“ケリつける”って言ったのに…」
(ケリ?)
それは、私への気持ちに…―――って言っていた、あの時のこと?
私は、一護くんと後夜祭で話したことを思い出して胸がドキンと跳ねた。
「優妃は朝斗と上手くいってるし、もう諦めようと思った。だから俺なりに考えて、気持ち切り替えようとした――…。」
(え…?)
「だけど、そう“考え”ても…ダメだった。」
(一護…くん?)
ザワザワと胸騒ぎがする。
「透子に本当に酷いことをした。向き合おうとして…中途半端に傷付けた――…」
一護くんの言葉を聴いていくうちに、その先の言葉を予想してしまう。
「頭で考えても思い通りになんかならないって、もっと早く気づくべきだった。…俺は」
(そんな…待って、――――まさか…)
ザワザワしていた胸騒ぎが、ドキドキに変わる。
その瞬間、一護くんと目があった。
「優妃への気持ちを、ずっと捨てられなかった」




