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「あの…どうしてここに?―――田中くんは?」
前を歩く一護くんに追い付いて、私はそう訊ねた。
「遼ならもう帰った」
「そっか…」
素っ気なく答える一護くんに、私は目線を足元まで下げてそう呟く。
(もしかして…――。もしかしなくても…見られてた…よね?)
今の私と三浦さんのやり取り…。――――私のウザい発言とかも…。
堪らなく恥ずかしくなって、私は一人で顔を赤くしてた。
「あのさ、ちょっと…時間ある?」
「……え?…うん…?」
突然振り返った一護くんにそう話し掛けられて、私は驚いて、つい頷いた。
(どこか…行くのかな?)
だけど一護くんは、そのまま私の家の方向へどんどん向かって歩いている。
「い、一護くん?」
もうそこ、家の近くなんだけど…と思って声をかけると、その先にあった公園に一護くんは足を踏み入れた。
(わ…懐かしい公園…。)
一琉とよく遊んだなぁ…と思いながら私は一護くんの後をついていく。
「ちょっと待ってて」
公園のベンチに座ると、一護くんはそう言ってどこかへ行ってしまった。
暫くして、公園内の自動販売機で飲み物を買ってきたのか、一護くんが両手に飲み物を持って戻ってきた。
「お茶とコーヒーならどっち派?」
ずいっと目の前に二つの飲み物を出された。なぜか一護くんの頬が少し、赤くなってる気がした。
「えっと、じゃあお茶で…」
「ん」
私がそう答えると、温かい缶のお茶を渡してくれる。手がじわっと温かくなる。
「ありがとう…いま、お金…」
慌てて鞄から財布を出しかけた私に、一護くんが手を添えた。
「要らない。これは詫びだから」
「え?」
(なんの?――――というか、あの…手が…)
手を振り払うことも出来ず、私はそのまま鞄を見つめたまま硬直。
「それは、これから話す…」
そう言いながら私の手からそっと手を離して、一護くんは缶コーヒーを飲み始めた。
「え…っと、じゃあ。ありがとう…?」
何がなんだか分からず、気が動転していた私はとりあえず落ち着こうとお茶に口をつける。
「………」
「………」
隣の一護くんをチラッと横目で見ると、一護くんはなにも言わずに缶コーヒーを持ったまま動かない。
(一護くんの様子が…なんだか…おかしい?)




