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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十三章【クリスマスイブ】
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「三浦さんっ」

横断歩道を渡って、私は三浦さんの前に周り込んだ。


「…香枝…さん…?」

驚いた顔をして、三浦さんが立ち止まると、周囲にいた男の人達も彼女につられて立ち止まった。


「誰?―――たまきの友達?」

「この子は―――ただ同じ学校の知り合いなだけ」


私から目をそらして、三浦さんが知り合いの男の人にそう説明した。


「へー、かわいい子じゃん。」

「せっかくだし君も一緒に遊ぶ?」


三浦さんの両隣にいた男の人達が私の方を向いて言った。

知らない男の人に突然ガン見されて、私は身体が強張るのを感じた。


(どうしよう…―――なんか、怖い…)



「…あ…、朝斗さんは…どうしたんですか?」


震える声で…私は三浦さんだけを見て、勇気を振り絞った。

私の言葉に、三浦さんの表情が険しくなる。


「ちょっ、と!香枝さ…っ」

「…なんで一緒じゃないんですか?」


「おいおいお前の友達、なんか怒ってんじゃね?」


私と三浦さんの間に茶々をいれるような男の人の笑い声。それを聞いた三浦さんは、ちょっとこっち来て、と私の腕を引いて男の人たちから少し離れた。



「…勘弁してよ!なんなのこないだから!」

少し声を潜めて、三浦さんが言った。


「だってこんなの、」

私が「間違ってます」と言い終わる前に、三浦さんは言った。

「朝斗と私は、これで上手くいってるの。あなたがどうこう口出さなくても」


(上手く…いってる?)

三浦さんの言葉に、私は驚きのあまり絶句してしまった。彼女はさらに怒った口調で続ける。


「元カノだからって、いちいち干渉して来ないでよ。ってかそーゆーの、ウザいし、イタ(● ●)いよ?」


「そ…―――」

(そんな…――――)


確かにそうだ。

私はいま“朝斗さんの元カノ”で、二人が上手くいってるのなら、私が口を出すのはおかしい。


だけど。


『上手くいってるの』


――――…本当に?

朝斗さんはこれで幸せなの?


不意に、ふわりと笑う朝斗さんの顔が浮かんで、

ギュウゥ…ッと胸が締め付けられた。


――――そんなふうに、思えない…。


「ごめーん。お待たせー」

三浦さんは笑顔で男の人たちの方へ戻るとすぐに行ってしまった。

私はそれを、立ち尽くして見ることしかできなかった。



(朝斗さんは…三浦さんとなら心から笑えてる?)


分からない。

理解できない。

想像できない。―――したくない。


嫉妬だ。私は三浦さんを朝斗さんの“彼女”だと認めたくないと思ってる。



「いつまでそーしてんだ?」


三浦さんの姿が見えなくなるまで立ち尽くしていると、後ろからそんな声がした。聞き覚えのある、優しい声だった。


「帰るだろ?―――――送ってく」


そう言って歩き出す彼の背中を見ながら、私も、後ろをついて歩き出す。

(どうしてここに…―――?)

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