表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十二章【向き合いたい人、逃げたい人】
163/315

【一琉視点】153

「なんでもない…」


(何を言うつもりだったんだ、僕は。)


―――早足で歩きながら、手で口元を押さえる。


僕の願望どおり、優妃は早馬朝斗と別れた。

優妃は“僕の隣に”帰ってきたんだ。


―――――これで良かったんだ。

もともと優妃は、ずっと僕のものだったんだから。


「一琉、ちょっと早いよ…!」

優妃が小走りで追いかけてきて、少し息を乱している。


優妃が「ありがとう」なんて言うからだろ。

僕に、なんの疑いもなく「感謝してる」なんて言うから…―――。


そう言いそうになるのを抑えて、代わりに僕は八つ当たりするようにボソリと呟く。


「どんくさ…」

「っ、ひどっ!」

優妃が頬を膨らませる。リスの頬袋でもあるのかこいつ。

僕の憎まれ口に、毎回面白いリアクションをしてくれる優妃。―――…好きだよ。好きなんだ。


(だから―――…)


「髪、乱れてるよ?あ、いつもか。」

そう言って髪をぐしゃっと撫でると、顔を赤くして怒る。


(――――悪いけど…あの日(● ● ●)のことだけは、言いたくない。)


「もー、静電気で髪直らないよ…」

髪結ぼうかな…とブツブツ言っている優妃に、僕は静かに言った。


「―――ごめん…」

(――――でも、あれ(● ●)は僕のせいじゃない…)


「一琉が謝るなんて、やっぱり明日は雪だ!」

何も知らない優妃は、能天気にそう言って笑った。

優妃が笑うとホッとする。この笑顔を独り占めしたくなる。


(だから、僕が罪悪感なんて感じなくていいはずなんだ…)


僕だって本当はあの時(● ● ●)、一度は諦めようとしたんだ。


早馬朝斗への、優妃の想いが本物だと思ったから。

そしてアイツも、優妃のことを本気で好きなのかと思ったから。


なのに、アイツが…あんなこと(● ● ● ● ●)ぐらいで、優妃を手放したのだとしたら…―――。


「“許さない”…」

強い想いが、つい口をついて出た。


「え、そんな怒らないでよ!冗談なんだから、ね?」

勘違いしているのか、慌ててそんなふうに僕を見上げる優妃に思わず笑みがこぼれる。



(知らないままで、いてよ)


「どーしよっかなぁ…」


優妃にあわせて(● ● ● ●)、わざと不機嫌そうにしながら優妃の頬っぺたを指でつまむ。

「いひぁい、ごめってば…っ!!」


(ずっと、このままで…――――)


僕の隣にいてくれるだけで、それだけでいいから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ