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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十二章【向き合いたい人、逃げたい人】
160/315

【朝斗視点】 149・150

朝、突然現れたのは香枝優妃――――俺の初めての“彼女”だった(● ● ●)女。

どうでもよかった、退屈だった俺の日常を…思いがけず変えた、不思議な女。

そしてそれが、知らなかった自分の心情に気付かされる引き金になるなんて…思わなかった。



別れを告げてからずっと視界に入らないようにしていたのに、突然俺の前に現れた彼女の目からは強い意志を感じた。


直視できないぐらいに…――。


いつも、眩しいくらい真っ白な心を持つ彼女。

そこが好きだった、だけど、それが憎くもあった。


俺とは違いすぎるから――――…。





話の途中で俺のクラスの女子達に突き飛ばされ、膝を怪我した優妃。


それを目の当たりにした瞬間、久しぶりに感情が沸き起こるのを感じた。


「謝れよ…」


自分で感情をコントロールできない。

(それじゃ意味がないじゃないか…―――)



なんとか冷静さを取り戻して、俺は優妃に手を差し伸べる。

「…歩ける?」


優妃に手を差し伸べたのは、足を怪我したから。

優妃でなくても、きっと俺は同じことをしたはずだ。


(いや、違うだろ…)


本当なら、ここまでする必要なんてない。


自分に言い訳して、本当は彼女に触れたいだけだ。

現に俺はいま久しぶりに優妃の手に触れて、胸が熱くなっている。


(何してるんだ、俺は…―――)


もう彼女には近付かないと決めたのは自分だろ。

――――近付いたら、止められなくなるから。

戻れなくなるから。


顔を上げることなく、素早く手当てを済ませて、一刻も早くこの場から立ち去りたかった。


―――優妃の声が、俺の心を支配する前に。


「朝斗さんが今抱えてるその“何か”を、半分は分けてもらえるように…私、強くなりますから。―――だから、いつかすべて…話してくれませんか?」


(君はいつも、俺の思い通りになってくれない…)


傍にいて欲しい時には逃げて

抱き締めれば拒絶する。

すぐにいっぱいいっぱいになって泣くし、

突然放っといてくれと言ったかと思えば、会いたいと言ってくる。


そして今は…――


(別れた俺に、どうしてそんなことを言うんだよ…)


「心を閉ざすことなんて、しないでください。必要なら私、いつでも駆け付けますから。」


(優妃…)


我慢できず、ずっと避けていた彼女の顔を見上げた瞬間…――。


まるで天女が降りてくるかのように丸イスから、優妃が腕を広げて…屈み込んでいた俺をふわりと抱き締めた。


(優妃…)


君とずっと、一緒にいれたら良かった。

あの時間がずっと、続けば良かったのに。


「君を好きにならなきゃよかった…」

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