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クラスのみんなとプールに行く約束をしていた日。
集合場所に翠ちゃんと向かうところで、私は今日先輩のことを報告すると決めていた。
「あのね…翠ちゃん」
翠ちゃんに会って、すぐに私は声を出す。
「どした?水着忘れた?」
「いや、持ってきたよ。そうじゃなくて…あのね…私ね…」
翠ちゃんに言うだけでも、ドキドキした。なぜか、すごく緊張してきた。深呼吸してから勢いをつけて、一気に告げた。
「私、早馬先輩と、付き合ってる!」
翠ちゃんはあんぐりと口を開けたまま、フリーズした。
そして、少し間があってからリアクションした。
「―――はぁ?いつから?」
「えっと…今日で3日目…かな」
そう。あの日から3日も経った。
毎日先輩から連絡が来るから、私は夢じゃないんだと思えるようになった。
「…ちょっと待て、何でそうなった?一護は?」
訳が分からないと言うように、翠ちゃんが頭を抱える。
「あ…」
(そうだよ、私…。花火大会の日に一護くんと話して…ドキドキしたはずなのに)
先輩と付き合えたことが嬉しくて、それ以外のことが頭の中に無かった。
「まぁ、私は優妃が幸せなら何でもいいけどさ」
何か言いたそうな顔をしながら、翠ちゃんが言った。
「良かったじゃん!女子皆が羨む早馬先輩の“彼女”になれて」
「…うん」
(良かった。嬉しくて幸せ過ぎるくらい…。でもなんだろう、今、何かが、心に引っ掛かっている。)
「翠!優妃!久しぶりー」
透子ちゃんが私たちに声をかけてくれて、その話は終了した。
「皆揃ったことだし、行こっか!」
透子ちゃんが明るく言って、私の前を歩く。
「優妃、おはよ」
透子ちゃんの隣にいた一護くんが、私の方に振り返って、笑顔で挨拶してくれた。
「おはよう…」
(気まずい…。何なんだろう、この…罪悪感のような気持ち…)
私は一護くんの笑顔が眩しくて…、すぐに目をそらした。




