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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十一章【大切な人】
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「お友達と…、ケンカ中?」


三浦さんをじっと見つめた後、私に視線を戻してその人は苦笑した。


「あの…えっと…」

(どちら様…でしょう?)


この整った顔は、どこかで見たことがある。

…あるはずなのに、思い出せない。


髪は明るい茶色に、前髪は長めでしかも毛先はワックスで流れるようにセットされている。

背はスラリと高くて、シンプルでラフな私服姿。

なのにそれが逆に大人っぽく、かつオシャレに見えてしまう。


見るからに、“イケメン”な大学生。


(だけど私に、大学生の知り合いの人なんて…。)


考えても、全く心当たりがない。


「そんな違いますよ…。ケンカだなんて。」

頬をほのかに染めて、三浦さんがおしとやかに言う。


(え、…三浦さん?)

さっきまでの雰囲気が一変したことに、私は唖然としてしまう。

(この雰囲気は、私が彼女を初めて見たときと同じ…―――。)


「じゃあ私、お先に学校行くね」

三浦さんは、固まっている私に笑顔でそう言うと、早足で駅へと向かった。



「―――…今の、朝斗の彼女だよな。」

目の前のその人が、ボソッと呟いた。


(あ…―――)

その口調に私は、“もしかして…”と思い当たる人物が一人、浮かんだ。


「ゆ、紫…さん?」

違ったらどうしようかと不安に思いながら、私はその人の名前を呼んでみた。


「うん?」

彼は、三浦さんから私へと視線を戻す。


(あ、やっぱり紫さんだったんだ…)


今までの紫さんは“女の人”の姿だったから、今日みたいに化粧もしてなくて、髪型も服装も全然男らしくしている紫さんに会ったのは初めてだった。


私は驚きながらも合っていたことにホッとした。


「あれ?優妃ちゃん、もしかしてわかってなかった?」

紫さんはそう言って笑った。


「すみません、その…。いつもと感じが違っていたので…」


「あぁ、そっかそっか!」

アハハと紫さんが愉しそうに笑う。なんだかその笑顔を見るのは久しぶりで、安心して私もつられて笑顔になる。


「優妃ちゃん、学校まで送っていくから少し話さない?」

私の笑顔を穏やかな表情で見つめて、紫さんが優しく言った。


「え…っ?」

突然の申し出に、私は驚いて紫さんを見上げる。

紫さんが、苦笑いを浮かべながら私に言った。


「謝りたいことも、あるしー―――」


(謝りたい、こと…―――?)

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