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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十一章【大切な人】
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「優妃、クリスマスどうする?」


よく冷えた朝、吐く息が白いことに驚いていた私に、一琉がそう訊ねてきた。


「どうする…って、何が?」

「僕その日部活もないし。どこか出掛けたいところないの?」


すっかり天使のような微笑みを見せるようになった一琉。

だけど私は心の片隅にこのままじゃダメだという思いを、常に抱いていた。



「ごめん、無理。」

前を向いたまま、私はそう告げた。


「なんで?別にいいじゃん。どうせ優妃予定ないんだろ?」

少し甘えた声で、一琉が私の顔を覗き込む。


(予定はなくても…ダメなんだってば…)

整ったかわいらしい顔を至近距離で直視できるはずもなく、私は顔をそらす。


「あ、ある!友達とクリスマスパーティーするから」

「へぇ―…。いつ?24日(イブ)?それとも25日(クリスマス)?」

どうせ嘘だろと言わんばかりの笑顔で、すかさず一琉が聞いてくる。


「………わ、忘れたけど」

(我ながら、なんて苦しい言い訳…)


「じゃあどちらかは空いてるんだろ?空いてる方でいいし。」

「一琉、あのね私は…―――」

「クリスマスを“幼馴染み”と過ごしたら、“誰か”に迷惑かかるわけ?」


私が断ろうとすると、一琉はいつものように早口でそれを阻止してくる。


「そうじゃないけど、私は…―――」

「聞きたくないっ」

私の言葉を遮って、一琉が切ない声を出す。


(一琉は、ズルい…)


「居場所を…とられたくない」

「一琉…」


(そんなふうに、弱々しい声で言わないで…。)


私が困惑しながら目線を上げると、

三浦たまきさんが、一琉が乗る北高行きのバス停のところで北高の制服を着た男子と話している姿があった。


「たまき!クリスマスは大丈夫なんだよな?」

「うん!空いてるよ!」

「じゃあ予定通り合コン頼むわー」

「うん、楽しみにしてるね!」


ヒラヒラと微笑んで手を振り、彼女は電車の駅の方へと歩き出した。


(私の聞き違いなのか、今“合コン”って聴こえたような?)


「優妃?」

一琉が突然立ち止まった私を不思議そうに見つめる。


(いや、別人かな?だって、三浦さんは朝斗さんの彼女だし、…でも)


――――あの顔、あの髪型、南高(うち)の制服。


見れば見るほどそれは見間違いなんかではないと思い知る。


(やっぱりあの子…三浦たまきさんだよっ)


「あのっ、今の話どういうことですか?」


気づけば私は、話したこともない彼女に話しかけていた。

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