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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十一章【大切な人】
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【翠視点】144(前編)

「二人、より戻したんだ?」

人気(ひとけ)のない空き教室に入ってくるなり、私の姿を見て彼はそう言って微笑んだ。―――あの、なんの関心も持たない目で。


「あ、そう見え「そんなわけありません!」

嬉しそうに照れる琳護くんの言葉を打ち消すように私は声をあげる。ついでに肩に回された手も叩き落とした。


「…こうでもしないと、早馬先輩とお話しできないと思ったからです」


そう。琳護くんがここへ早馬先輩を呼び出した。―――私の頼みで。


「琳護、いまだにいいように使われてるんだな」

くっくっと笑う早馬先輩。


「話をすり替えようとするのはやめてくださいよ、先輩」

分かってるんだから。そうやって私が本題に入ろうとするのを避けようとしていることぐらい。


「三浦たまきと、本気で(● ● ●)付き合ってるんですか?」

私が真顔でそう直球をぶつけると、早馬先輩は顔に貼り付けていた笑顔を消した。そして私の目をじっと見て、小さくため息をつく。


「本気だよって言っても、どうせ否定するんだろ…」


(あぁ、この感じ。久しぶりだな)


めんどくさそうな態度。何もかもがどうでもよさそうな。

これが早馬先輩の本性。少なくとも私は、これがこの人の()だと思ってた。


「だいたい俺が君に、それを言う必要ある?」


(優妃と別れたら、すっかり元に戻ってくれちゃって…)


―――変わったと思っていたのに。


「私、言いましたよね…優妃を傷付けたら許さないって」


だから最初、私は早馬先輩と優妃は合わないと思ってた。

――――中学時代から彼のことを知っていたから。

他の女の子達みたいに、優妃のことも遊びだったら許せないと思ってた。あの子は不器用で人と関わることにも慣れていないような純真無垢な子だから。


だけど、始まりこそぎこちなかったけど、それでも二人は想い合ってるように見えた。私の心配は無駄に終わったんだと、思っていたのに。


「ち、ちょっと待って!ちょっと待ってよ、翠」

琳護くんが早馬先輩と早馬先輩を睨みつけていた私の間に割って入ってくる。


「傷付いたのは朝斗だろ?俺、優妃ちゃんから直で聴いたんだぞ、“私が浮気したから”だって」


「…浮気?」

琳護くんの言葉に早馬先輩が眉をひそめる。まるで初耳だというように。


「え、違うのか?…幼馴染みとディスティニーランドに行ったとか」

「琳護くんは黙ってて」


私は、琳護くんにピシャリと言い放つ。

(話がややこしくなるから。)


どうやら琳護くんは噂通り、優妃が浮気をしたから二人は別れたと思っているらしい。

まぁ、私も確かに…優妃が浮気を認めたとき、衝撃を受けた。別れた理由が優妃の浮気だなんて、信じられなかった。

だけどその内容を聞いて、“浮気”が優妃の思い込みだと悟った。

二人でディスティニーランドに行ったことが“浮気”だと、優妃は思っている。それが原因で別れたと思ってる。


でも今、早馬先輩が一瞬見せた表情。あれを見て、はっきりと分かった。“浮気”が、幼馴染みとディスティニーランドに行ったことだと聞いて強張った表情が消えた。まるでそれを知っていたかのように。


そもそも、あれは“浮気”なんて大袈裟なものじゃない。そんなことで別れる理由にはならない。言うなればただの嫉妬ぐらいなレベルだ。


―――だから、問題はそこじゃない。


別れた原因は、他にあるはず。

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