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恋してるだけ   作者: 夢呂
第二十章【想定外のデート、想定外の展開】
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「ねぇ、ちょっと…っ!どこ行くの?」

私の腕を引きながら、一琉は半歩先を早足で歩く。


「いいから早く来なよ。まったく、優妃はどんくさいんだから…」


「…っ!」

残念ながらその通りなので一瞬言葉に詰まり、私はうつ向きながら不貞腐れる。

「わ、悪かったわね…どんくさくて」

(そんなことしか言い返せないなんて、私って本当にどんくさ…)


自己嫌悪に陥りかけた私に一琉が前を向いたまま言った。

「別に悪いなんて言ってないけど?」


「…へ?」

一琉があまりにらしく(● ● ●)ないことを言うから思わずまぬけな言葉が漏れてしまった。


「っていうか、今更だろ」


振り返った一琉が、いつも通り悪戯にそう言う。

だけどその笑顔は優しくて――――。

私はまたしても一琉の笑顔に心臓がドキンと跳ねてしまった。


「ひ、ひどい!」

自分の感情をごまかすように私は声をあらげた。




「って…ここ!ディスティニーランド!?」


しばらく電車を乗り継いで着いたのは、私が小さい頃からずっと憧れていたテーマパークだった。


「うん。当日券が二枚、たまたま手に入ったからね。優妃、連れてきてやろうかと思って」

一琉が、わざとらしくぶっきらぼうに言う。


(“たまたま”って。…“嘘”だ。)


どんくさい私にだって、それぐらい分かる。

ここのチケットがそう簡単に手に入らないってことも。場所的にも金銭的も、高校生がそんな簡単に来られるところではないってことも。


「なに?嬉しくないわけ?」

一琉が意外そうな表情(かお)をしてこちらをじっと見てくる。


「…―――嬉しい…けど。だけど…」


(初めて来る相手()は…、朝斗さんとが良かった…)

なんて。

そんなこと、一琉に言えるわけない。


私が言葉を濁していると、一琉が強引に私の手を引いてゲートをくぐった。


「ちょ…。…一琉…」

「埋め合わせ、してくれるんでしょ?優妃?」


(私…ずるいよね…)



一琉の気持ちには応えられないっていっておきながら。こんな(ふう)に、流されて…。

本当はずっと連絡が来ないままの朝斗さんのことが不安で…。寂しくて…。

でも目の前の問題(それ)を考えないようにしたくて、こうして過ごしてる私はずるい。


(だけど…こうして私のことを想ってくれる一琉の気持ちは嬉しくて…)


一琉が幸せそうに笑うから、いつの間にか私もすっかり楽しんでしまっていた。


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