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「……ひ!優妃!」
私の名前を呼ぶ声がした。
「んん…」
―――寝返りを打ちながら、あれ?もう朝なのか…とうっすら目を開ける。
朝斗さんからの返信を待っている途中で、いつのまにか寝てしまっていたらしい。
「寝起き悪っ」
視界にクスクスと笑う一琉が映り、私はぼんやりと考える。
「―――…あれ?どうして一琉が…」
(えっ!?どうして一琉がここにいる!?)
驚きのあまり、眠気も一気にふっとんだ。
「どうしてって、今日迎えに行くって言っただろ?で、迎えに来たら“優妃まだ寝てるから起こしてきて”っておばさんが。」
なぜか悪びれる様子もなく、というか私が悪いみたいな態度で一琉が言う。
「あぁ…」
(お母さんって、どうしてこう一琉のこと信用しきってるんだろう…)
私はうなだれながらベッドからモソモソと起きる。
「…じゃあ着替えるから一階で待っててよ」
「あ、僕のことなら気にしなくて大丈夫だよ?」
お構い無く~と軽い口調でしれっと言い放つ一琉に、私は過剰に反応してしまった。
「なっ!なに言ってるの?一琉が気にしなくても私が気にするんだってば!」
(私だって一応女の子だし!幼稚園児とは訳が違うんだから!)
「冗談だよ。ほんとバカだなぁ優妃は」
焦る私を面白そうに眺めて、クスッと一琉が笑みをこぼす。
(わ…)
一琉がそんな優しく笑うのはすごくレアで、でもだからって不覚にもドキンとしてしまった自分が憎い。
「もう!早く出てよ」
一琉の背中を押して、部屋から追い出しバタンと大袈裟に音をたててドアを閉める。
(もう…なんなの朝から…っ)
ドアにもたれ掛かりながら、私はため息をついた。




