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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十九章【小さな秘め事から】
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私は自然と向かっていた場所の前で足を止めた。



(き、来てしまった…)


途中ドラッグストアに寄り、スポーツドリンクやら冷えピタやらのど飴やらとりあえず“風邪”に良さそうなものを思い付くだけ買って、私は朝斗さんのアパートの前にいた。


呼び鈴を押そうかどうか、悩んだ。

(―――もしかしたら、寝てるかもしれないし…)


そう思うと、こちらから電話することも呼び鈴を押すことも躊躇われた。


ドアの前にドラッグストアのロゴが付いたビニール袋を置いておこうか悩んだが、気付かれなかったらどうしようなどと考えて、私は結局ドアに寄り掛かるようにして立ち尽くしていた。


「あれ?優妃ちゃん…?」


名前を呼ばれて顔を上げると、紫さんが驚いた顔をして立っていた。


「幼馴染みくんの試合、観に行ってたんじゃなかったの?」

「あ…すみません、朝斗さんの風邪が気になってしまってつい…」

「あー…そう。」

紫さんの表情が何となく気まずそうに見えた。だけど紫さんは、すぐに笑顔を向けてくれた。

「それだけ朝斗のことが心配だったのね、本当に可愛いんだから!」

ニコッと微笑んでそう言うと、安心させるように明るい声で続けた。

「でも、優妃ちゃんにうつったら悪いし。今日明日はわたしがついてるから大丈夫よ!」

「そうですか?…じゃあこれ、良かったら…」

微笑む紫さんに、私は買ってきたドラッグストアの袋を差し出す。

「効くかどうかも分からないですけど…」


「…ありがとうね」

私の頭に優しくポンポンと触れて、紫さんが目を細めて微笑んだ。


「朝斗さんに…お大事にって伝えてください」

「うん、気を付けて帰るんだよ」

心配そうにそう言ってくれる紫さんの優しさに胸が暖かくなるのを感じながら私は笑顔で答えた。


「大丈夫です、まだお昼前ですし」

「ふふ。それもそっか!じゃあ朝斗には連絡するように伝えとくわね」

「はい!あ、でも元気になってからで、大丈夫ですから」

「律儀ね…優妃ちゃん。じゃあ」

それだけ言って、紫さんが鍵を開けて家に入っていった。

私はドアが閉まるのを見届けてから、一琉の試合会場へと向かう。



(もう…終わっちゃった?ごめん一琉。今行くから…)


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