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(びっくりしたぁ…)
『だから私、昔から優妃ちゃんが嫌いだったのよ』
つい先程迪香ちゃんに言われた言葉が何度もよぎる。
―――面と向かって、敵意むき出しで。
あんな風に嫌いだなんて…―――初めて言われた。
(やっぱり、嫌われてたんだ…私)
迪香ちゃんの態度から、何となく気づいてはいたけれどあんな風に言われるとやはり傷付く。
(一琉と幼馴染みだから…――?)
迪香ちゃんは一琉のことが好きなんだと思う。
だからずっと一琉といた私のことは嫌いなんだろう。
『…優妃ちゃんて、どれだけ無神経なの?本当にあり得ない!』
(じゃあ、アレはどういう意味だったのだろう…――?)
考え込んでいるところに、携帯電話が鳴った。
「!!」
朝斗さんからだった。私は飛び付く勢いですぐに電話に出た。
「もしもし、朝斗さん?」
『あー、ごめんねぇ優妃ちゃん』
声は…朝斗さんではなく紫さんだった。
(どうして紫さんなんだろう?朝斗さんが出ないのはなぜ?)
頭がハテナで一杯になる。
『朝斗と今日出掛ける約束してたよね?』
「朝斗さん、どうかしたんですか?」
『うん、ちょっと風邪引いたみたい。とりあえず今日はごめんって連絡しておこうかと思ってさ』
紫さんがいつもの調子でそう言った。
「風邪…って。大丈夫なんですか?」
『今日明日寝ておけば大丈夫でしょ。じゃあそういうことだから…またね』
「あ…」
私が口を開きかけた時にはすでにツーツーと機械音が聴こえてきていた。
(朝斗さんが…風邪…――――)
朝斗さんのことが心配になる。紫さんの口ぶりならたいしたことないみたいだったけれど。
だけど…――――。
私は携帯電話をじっと見つめて立ち止まったまま動けなくなった。
時間は待ってくれない。
一琉と今日約束させられていた大会がもう少しで始まってしまう。
(どうしよう…―ー。どうしたら…―ー――?)
『…優妃ちゃんて、どれだけ無神経なの?本当にあり得ない!』
迪香ちゃんの言葉が、なぜか頭をよぎった。




