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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十九章【小さな秘め事から】
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『優妃、今からうち来れる?』


朝斗さんから返信が来たのはそれから10分後だった。

『はい!行きます!』

返信してすぐに支度を終えると、私は家を出た。



(あ、そうだ…!)

途中で可愛いカップケーキを買ってから、電車に乗り、朝斗さんの家へと向かう。



「優妃」

インターホンを押すと、しばらくして朝斗さんがドアを開けてくれた。

朝斗さんは微笑んでいたけれど、なんだか少し、元気がない気がした。


「朝斗さん、大丈夫ですか?なんか疲れて…る」


玄関で脱いだ靴を整えて終えて立ち上がると、不意にギュッと抱き締められて、私は驚いて硬直する。


(え…っ?え、朝斗さんっ??)


「うん…そうかもな。朝から学校で片付けしたりしてたから」

私の肩に顎を置くようにして抱き締めながら、朝斗さんがそう答えた。

表情は見えなかったけど、やっぱりどこか元気がない気がする。



「あ…朝から学校行ってたんですね、お疲れ様です!あ、私ケーキ買ってきたので今から食べませんか?」

疲れている時には甘いものが良いって言いますよね?と明るく言ってみると、朝斗さんの腕の力が緩まって身体が離された。


「あぁ…ごめん。」


(“ごめん”――――…?)

謝られたことに違和感を感じて私は顔をあげると、朝斗さんと目があった。


「ありがとな」


ふわりと朝斗さんが微笑んで、ケーキの入った箱を持って、リビングへと向かう。


(朝斗さん、そんなに疲れてるんだ…)


朝斗さんの元気がない理由が、文化祭実行委員長としての疲れだと理解した私は、朝斗さんの背中を見つめてそう考えていた。




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