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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十八章【文化祭二日目】
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「ありがとな」


一護くんの言葉にハッとした。

後夜祭はすでに始まっていて、一護くんが私を見下ろしていた。


後夜祭(コレ)、付き合ってくれて」

照れたように一護くんが言うので、私はつられて赤くなる。

「あ、う…うん。」


「絶対、断られるって思ってたからさ」

「?」


一護くんが苦笑いで、私を見つめて言う。

「最近やたら、俺のこと避けてただろ?」

「あ…いや、それは…………」


ギクリとしながらも、私は誤魔化そうとあたふたとしてしまう。


「大丈夫、知ってるから。俺のせいなんだろ?」

困ったように笑って、一護くんが言った。


「…一護くんの?」


(なんで?―――…それは違う、一護くんのせいじゃなくて私が…)


「勝手だよな、“友達だ”とか言っておきながら」

一護くんが苦しそうに笑うから、胸が苦しくなる。


(違う…。だってそれは…私も、同じだから…―ー――)

私の思っていることと、一護くんの言葉が…シンクロする。


「本当は、優妃のこと好きになってたのに」

(本当は、私も一護くんが好きになってたのに…)


花火大会の日に、初めて一護くんと話して。

“怖い人”から“優しい人”へとイメージが変わって。


そのあとにも変わらずに“友達として”親身になってくれていた一護くんに。

優しい言葉で私を救ってくれた一護くんに。


私は今、きちんと答えるべきだ。


――――私は今、誰が好きなのか。



「ごめんな、困らせて」

一護くんが笑顔を見せて言った。


私は一護くんの笑顔が好きなのに…困らせてるのは私の方なのに…。


今までのことを思い返したら胸が一杯になって…、私は一護くんに、“朝斗さんが好きだ”とハッキリ告げることが出来なくなった。


「ううん。私の方こそ…」

(言えない…。やっぱりハッキリ伝えるなんて…)

躊躇して、言葉に詰まってしまい、私はうつむく。


「ごめんなさい…」

小さな声で謝るのが、やっとだった。



「そんな顔するなよ」

一護くんがわざとらしく明るい声を出す。


「優妃には笑ってて欲しいから」


一護くんの言葉に、私はそっと顔を上げる。

一護くんの優しい瞳に、ドキンと心臓が跳ねた。


「好きな気持ちはケリつけるけど、その気持ちだけは変わらねーから」


「一護くん…」


(本当に優しい人。一護くんは…いつだって優しいんだ…)



「うん」

私がそっと微笑むと、一護くんがニカッと笑った。


一護くんのその笑顔を見たのは、すごく久しぶりで…涙が出そうになった。


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