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「翠ちゃんは…」
「ん?」
「後夜祭、誰とペアなの?」
さりげなく、を装って…私は文化祭を一緒に回りながら翠ちゃんに話を切り出した。
「あー、あれ?私はパス」
翠ちゃんは実にあっさりとそう言ってのけた。
「え、出ないの?」
「うんまぁ…興味もないしね」
そこまで言って、私の方をチラリと見た。
「もしかして、誘われたの?一護に」
思いがけず言い当てられて、私はドキリとした。
「…うん」
(なんだろう…罪悪感…?)
「断った?」
「ううん…―――断れなかった…」
私は翠ちゃんの顔を見ることができずにいた。
「はぁ?――何で?それ早馬先輩知ったらヤバいでしょ」
「それは…」
(それはそうなんだけど…―――)
「でも私、このままだと苦しくて…一護くんから逃げてばかりいても何も解決しないと思って…だから」
(私は、私の出来ることを…―――)
「一護くんと、きちんと話したいの」
翠ちゃんの顔を見て、私ははっきりと告げた。
翠ちゃんが呆れながら口を開きかけたその時ー―――。
「一護って、誰?」
翠ちゃんではないその声に、私は驚き振り返る。
「一…琉…」




