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「優妃?そろそろ起きないと遅刻するよ?」
「うーん、お母さん…あとちょっと…」
頭上から私を起こす声がして、私はすぐにそうお願いする。
(ようやくさっき眠りについたところだったのに…)
寝返りを打とうとした私は、何かに動きを封じ込まれていた。
(ん?)
次の瞬間、唇に柔らかい感触がして、私はうっすらと目を開けた。
「お母さん、じゃないけど?」
ブハッと朝斗さんが噴き出して笑い出す。
「!!!」
(うわ、完全に寝惚けてたところ見られたっ!?)
私は一瞬で目がさえた。
「す、すみません!今すぐ起きます!」
勢いよく布団から飛び起きた私を見て、朝斗さんがまた笑う。
「朝御飯、食べよう?」
朝斗さんの後をついてリビングへ向かうと、キッチンには紫さんが立っていた。
「おはよ、優妃ちゃん!よく眠れた?」
「っ!」
(ゆ、紫さん!)
またしても、ブラの一件を思い出して私は赤面したままうつ向いた。
「って、うわ…隈が酷いわね…あとでメイクしてあげるわ」
キッチンからこちらへ歩み寄り、紫さんが心配そうに私の頬に手を添えて顔を覗き込む。
(わわわ…っ)
ボッと一気に顔に火がついたように熱くなる。
朝斗さんがすぐに紫さんの手を私から払い除けた。
「触るなって、だから」
「朝からうるさいわねー、朝斗ったら。本当器がちっさいんだから。」
「お前は、そのしゃべり方がキモイ」
「あ゛ぁ?今なんつった!」
はたから見たら、美男美女が口喧嘩しているようにも見える。
(なのに、紫さん…男の人なんだもんなぁ…。)
って、そんなこと思ってる場合じゃなかった!
私のせいで、登校時間まであと僅かなのだ。
「えぇっと、ごはん!いただいてもいいですか?
あの…時間も無いですし…」




