おまけ【眠りにつくまで】5
紫さんが男の人?
いやいや、落ち着け。
ただウィッグ着けてただけで、男だなんて判断するのは…―――。
(でも、さっきのあの反応からして…――)
え、でも仮に男の人だったとして、なんであの格好を―――?
(紫さんは、女の子が好き?それとも…)
「優妃、もう寝た?」
朝斗さんの声は、混乱したまま布団に包まって、ぐるぐると考えを巡らせている私の耳に届かなかった。
(そういえば今日、一琉見たときにタイプとか言ってなかった?)
ということは、やっぱり…――――。
スッと長い腕がベッドから降りてきて、ベッドの横の床に布団を敷いて寝ていた、私の髪に触れた。
「朝斗さん?」
朝斗さんの手に気がついた私はベッドの方に向き直る。
すると、ベッドから顔を覗かせていた朝斗さんと目があった。
「なに、考えてた?」
ムウと拗ねたような表情で、朝斗さんは私を見下ろしていた。
「え、いや…。紫さんが女装?していたのが衝撃的過ぎて」
「以前にも言ったと思うけど?」
朝斗さんが低い声で言った。
「他の男の話とかされたくないって。」
(あ…―――、てことはやっぱり!?)
疑問が確信に変わって、咄嗟に思い出したのは、“先ほどのブラのやり取り”だった。
「ひっ」
驚きのあまり変な声が出てしまい、慌てて手で押さえた。
(嘘っ!私、男の人からブラをもらっ…――)
しかも、その場で着けたりして…――。
「優妃?」
(無理!どうしよう、記憶を消したい!というか、あのやり取りを完全消去したいっ!)
頭から煙が出た。顔から火が出るどころではない。
「やっぱり優妃が、こっちで寝なよ」
ベッドから上半身を起こして、朝斗さんが言った。
「や、無理ですって!私はここで大丈夫ですし――…。」
(というか今、それどころではなくて…っ)
紫さんとのあのやり取りが死ぬほど恥ずかしくて、いたたまれずに悶絶していた私は、涙目で答える。
「そ。こっちで寝ないなら、俺がそっちで寝る」
私をじっと見つめながら、不機嫌な表情で朝斗さんが言った。
「え?」
「一緒に、そっちの布団で。」
「えぇっ!?」




