おまけ【眠りにつくまで】1
「優妃は、とりあえずシャワー浴びておいで」
朝斗さんが私にバスタオルを渡してくれる。
「あ、はい…」
(あ…、朝斗さん、不機嫌だ…っ)
私は渡されたバスタオルを抱えて、ちらりとソファーへと視線を向ける。
(原因は、きっと…―――)
「わたしのことは、おかまいなくー」
ヒラヒラと手を振り、笑顔で紫さんが言う。
「あ、はい…」
(原因はきっと“彼女”―――紫さんだ…)
つい先程まで、あんなに甘く、幸せな時間を過ごしていたはずなのに。
シャワーを浴びながら、私はその、つい先程のキスを思い出して赤面する。
私の口の中に朝斗さんの舌が…――――。
(って…!!!何思い出してるの!は…恥ずかしっ!!)
自爆して、身悶えていた私は、暫くしてようやく気持ちを落ち着けて――――、バスルームを出た。
タオルで身体を拭いていると、朝斗さんと紫さんの声が聞こえてきた。
「今すぐ出てけ」
「だからぁ、今日は相手が見つからなかったんだって。仕方ないデショー?」
「気持ち悪いからソレ止めろ」
「朝斗くん、さっきから当たり強すぎー。そんなにイイトコだったの…――ぃった!殴んなよイテーな」
「あ、あのぉ…」
入っても良いのかわからず、リビングのドアにくっついてそっと顔を出すと朝斗さんと紫さんが私の方を見た。
「シャワー、お先にありがとうございました…。」
私は二人に軽く頭を下げる。
「優妃ちゃん、髪まだ濡れてるわよ」
紫さんが私の髪に手を伸ばそうとした瞬間、朝斗さんがその手をピシャリと叩き落とした。
(い、痛そう…。朝斗さん、容赦ないな…。)
朝斗さんが紫さんを見つめる。見つめるというより、睨み付けている。
「優妃に触ったら、マジで殺すからな」
唖然としている私の方に向き直って、朝斗さんは心配そうに顔を歪める。
「じゃあ俺…シャワー浴びてくるけど…、」
私の頬にそっと触れて、朝斗さんが言う。
「優妃、何かあったら風呂場まで来てくれていいから」
「大丈夫ですよ、朝斗さん気にしすぎです」
私が笑って言うと、朝斗さんは余計に心配そうに顔を歪めた。




