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恋してるだけ   作者: 夢呂
第十六章【文化祭一日目】
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「ごめん、優妃!」


翠ちゃんが両手を顔の前で併せて拝むように私に見せる。

あと数分で、朝斗さんの出る演劇「ロミオとジュリエット」が始まるのに、私はなぜ自分の教室(クラス)でこの自作のフリフリエプロンを身に付けているのだろう…――――。



(でも、翠ちゃんが困ってるし…)


「大丈夫、私店番するから行ってきて」

「本当にごめん…!すぐ戻るから」

私が微笑んで見せると、翠ちゃんがそう言いながら教室を出ていった。



つい先程まで翠ちゃんとあちこち楽しく他のクラスの出し物を見て回っていたのだが、何気なく自分たちのクラスに顔を出したのが悪かった。

そう、それは…数分前の出来事。


「あー、ちょうど良かった!」

「ね、翠と優妃ちゃん、二人ともちょっとお店頼むわ!」

エプロンを外しながら、クラスの美樹ちゃんと明日香ちゃんが私と翠ちゃんにそれを渡してきた。


「え、ちょっとどこ行くのよ?」

強引に押し付けられて驚きながらも、翠ちゃんが二人に訊ねる。


「あぁもうロミジュリ始まっちゃうから!ごめんあとよろしく!」

そう言ってバタバタと走って教室を飛び出していった。


…唖然としていた私と翠ちゃんに、今度はクラスの男子が声をかけた。


「おい、翠。三組の木下ってやつが、ちょっと話したいことがあるとか言ってたぞ。今行けるか?」


「え?今?」


「店なら大丈夫、人も少ないし。そんな時間とらせないってさ。行ってこいよ、どうせ告白だろ?」


からかうようにニヤニヤしながら翠ちゃんを小突く。


「…行かないわよ。そんな人知らないし」

「行ってきて、翠ちゃん!私なら大丈夫だから」


(私もその“三組の木下くん”は知らないけど…。でも告白とかなら、ちゃんと話…聞いてあげてほしい。)



―――そして話は冒頭へと戻る。



パフェ屋さんはちょっと人気がないのか集客力もなく、一、二席しか埋まっていない。

そして接客している女子は、私が一人。あとは男子が数人いるが、暇なのか喋っているだけで動く気配はない。


(いたたまれない…。)



「ここ、良いかな?」

そう声をかけられて、私は慌てて顔を上げる。


(あ…――――この人…―ー)

この美しい顔立ちに、見覚えがあった。


(私…知ってる…――――この人…)


「ユカリ…さん…」


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