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恋してるだけ   作者: 夢呂
第一章【夏休み前】
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香枝(かえだ)さん、俺と付き合わない?」


「・・・・」


私の名前は、香枝(かえだ)優妃(ゆうひ)

そう。それくらい、分かっている。

――――自分の名前ぐらい。


だけど、私が辺りを見回したのは、

そんな告白をされたのが信じられなかったからだ。


なぜなら目の前に立っているその相手は、この高校でも有名な、あの(● ●)早馬(はやま)朝斗(あさと)先輩だったから。



「香枝、優妃ちゃん?」


返事をしないでいた私に、早馬(はやま)先輩が困ったように微笑む。



「ええと…――――」


相手は高校のアイドル的存在。

しかも“特定の”彼女は作らないことで有名な先輩。

(だったら、返事は決まってる…―ー)



「ごめんなさい…」

私は頭を下げた。だってそんな人が私なんか本気にするわけがないから。



「そっか、分かった…」

早馬先輩はそれだけ言うと、すぐに背を向けて行ってしまった。


私は頭を下げたまま、先輩の足音が遠ざかるのを聞いていた。



高校の裏庭、放課後に、初めて先輩に話し掛けられたこの日を、私は一生忘れない――――。

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