番外編 ~初めてのクリスマス・後編~
番外編 ~初めてのクリスマス・後編~
無事プレゼントも揃い、ラッピングも完璧だ。
俺とキューンは、にやにやしながら東倉庫へ戻った。
「ただいまー!」
「(ただいまッス!)」
「おかえり! 二人ともご機嫌だね? いいことでもあったの?」
俺とキューンは声を揃えて、セトトルたちにこう言った。
「秘密!」
「(秘密ッス!)」
三人はなにがなんやらという感じで、首を傾げている。
はははっ、夜が楽しみだ!
クリスマスだからかは分からないが、お客様は全然来なかった。なので、早く店を閉めてもいいのだが……。
「キューン、ちょっと様子を見てくるから誤魔化しておいてくれるかい? 何時ごろ行けばいいかが知りたいんだ」
「キュン!(任せるッス!)」
俺は四人に告げ、一度おやっさんの店へ向かうことにする。
休みにしてるから構わないんだけど、一応ね。
「ちょっと出てくるね。すぐ戻るから」
「おやすみですから……気にしないで、ください」
フーさんも、着ぐるみ無しでも大分話せるようになってきた。うんうん、とっても嬉しいな。
だが、出るときにキューンの声が聞こえた。
『ボスはどこへ行ったのだ?』
「キューン(ちょっとデートッスよ)」
『なるほど、もてる男は違うな』
キューンに頼んだ俺が間違っていたようだ。次からは、人選に気をつけよう。
おやっさんの店の中は……戦場だった。
「父ちゃん! チキンのローストは!?」
「おう、今やってる! おいヴァーマ! ぐったりしてねぇで飾りつけをしろ!」
「お、おやっさん……。俺はクリスマスなのに、さっきまで七面鳥を捕まえに出てたんだぞ!?」
「私だって捕まえに行っただろ! でも、ちゃんと休まず机を並べているんだよ!」
ど、どうやら足りない食材は、ヴァーマとセレネナルさんが捕まえに行ったらしい。
お礼を言っておこう。そう思い俺が近づこうとすると、さっき閉じたばかりの扉が開かれた。
「会長! モミの木を確保しました! 飾り付けする物も持ってきています!」
「うむ! 助かったぞカーマシル!」
「ナガレさん、そこ退いてください。今は取り込み中です!」
「す、すみません」
あれ? 俺、一応こちら側だよね? なのに邪魔者扱いだ。
いや、手伝ってもらっているのに文句は言えないけどさ……。
「あなたたち! 飾り付けが可愛くありませんわ! 後、この輪っかが雑ですわ! やり直してくださいませ!」
「なぁ、アトクール。俺たちは、なんで輪っかを作ってるんだ?」
「……たまには、こういうのも良いではないですか。それよりもダグザム、手が止まっていますよ」
「お前、案外ノリノリだな……」
三管理人が飾りを作っているのは、とてもシュールだ。
俺もなにか手伝ったほうがいいかもしれない。そう思い、とりあえずウルマーさんに声をかけた。
「ウルマーさん、なにかお手伝いすることは」
「ごめんボス、忙しいから他に聞いてくれる? 準備は後一時間くらいで終わるはずだから。ううん、終わらせるから!」
「はい、分かりました」
「ウルマー! できたぞ! 持ってけ!」
「あいよ!」
すごく忙しそうだ。仕方ない、アグドラさんと副会長組に聞こうかな。
今度はモミの木を飾り付けている二人へ近づき、声をかけてみた。
「お二人とも忙しそうですね。なにかお手伝いします」
「ん? いや、ここは二人でいい。すぐに終わるしな」
「会長。一番上につける星は、もう少し大きい方が良かったでしょうか?」
「ふむ……。いや、このくらいでいいだろう」
「かしこまりました」
……どうやら、ここでも役立たずのようだ。
となると、あそこか。……あそこかぁ。手伝ってもらってるのに嫌がるのもあれだし、俺は管理人たちの場所へ向かった。
「あの」
「ですから! 輪っかは綺麗に作ってくださいませ!」
「わ、悪い」
「なにかお手伝いを」
「……ダグザム! そこ! 壁につけているやつです! 曲がっていますよ!」
「す、すまん」
「……」
俺はその場を離れた。
うん、きっとあれはあれでうまくやっているに違いない。きっとそうだ。
さて、となると一番安全なところが残ってしまった。いやー、はっはっは。最初からここを手伝いにくれば良かったね。
「ヴァーマ、セレネナルさん、なにかお手伝いしますよ?」
「お、ボスか」
「ん? ヴァーマ、なにか落ちたよ?」
「……はっ、待て! 触るな!」
ヴァーマは落とした箱を、拾ったセレネナルさんから素早く取り上げた。
なにか見られたらまずい物だったのだろうか? ヴァーマにしては珍しい。一体なんだったのだろう。
「なんだい、それ?」
「いや、これはだな……気にするな! セナルには関係ないことだ!」
「ヴァーマ、その言い方は……」
「あー、はいはい。そういうことかい。分かった分かった、ごめんよ。気にしないことにしておくよ」
「おう、そうしておけ!」
おいおい、ヴァーマそれはまずいだろ。さすがの俺もヴァーマに注意をしようとしたのだが、セレネナルさんに止められた。
そしてにやにやと笑いながら、首を振っている。
「ボス、いいんだよ。気にしないでおくれ」
「ですが……」
「いいからいいから。あぁ見えて、気が利く男なんだよ」
俺には全く理由が分からなかった。でも、セレネナルさんの機嫌が良さそうなのでいいのかな?
首を傾げながらも、慌ただしく二人を手伝っていると、準備がようやく整った。
「よし! できた! みんなお疲れ! お茶でも入れるね!」
ふー、やっと準備が終わった。本当に一時間で終わらせてしまうとは……。他のお客さんへの用意だってあるはずなのに、頭が上がらない気持ちだ。
そしてウルマーさんに出されたお茶を……あれ? 俺の分がない。
「ボス、なにしてるの?」
「え? お茶を……」
「セトトルとフレイリスを呼びに行かないでどうするの! なんのために準備をしたか分かってる!?」
「すみませんでした! 仰る通りです! すぐに呼びに行きます!」
俺はお茶を飲むことすら許されず、おやっさんの店を後にした。
急遽用意をしてもらったから、ウルマーさんもピリピリしていたのかもしれない。ちゃんとお礼を後でしよう。
「ただいまー」
「あ、ボスお帰り!」
『そろそろ店を閉じようかと思っていたところだ』
「うんうん、ぴったりだったね。片付けも終わっているみたいだし、みんなで出かけようか」
「出かける……ですか?」
「キュン! キューン!(そうッス! まぁ行けば分かるッス!)」
よく分かっていない三人の背を俺とキューンで押す。
さぁ、楽しいクリスマスパーティーだ! 急げ急げ!
おやっさんの店へ五人で来ると、セトトルはパッと笑顔になった。
もしかして、気づいちゃったかな?
「今日はみんなで外食だね! クリスマスだもんね!」
「惜しい! まぁ入れば分かるよ」
「なにか……隠していますか?」
俺とキューンは、二人の問いに笑顔で返した。
まずは二人に入ってもらわないとね! そう思い、二人の後ろに立ったのだが……
『邪魔するぞ』
「せーの! セトトル! フレイリス! メリー・クリスマス!」
パンッパンッとクラッカーの鳴る音がする。そんな物まで用意をしてくれていたのか。
しかし、中の人たちは入ってきた人を見て固まっていた。
「ボス! どういうことだ! ガブを先に入れたら駄目だろうが!」
「す、すみません、おやっさん!」
俺は開幕から、おやっさんに頭を下げるクリスマスパーティーとなったのだ。というか、おやっさんのサンタ帽子姿は……なんというか……笑ってしまった。
おやっさんは怒ることはなかったが、俺の顔にサンタ帽子を投げつけた。痛いです。
その後、俺たちは全員サンタ帽子を被って店の中へと入った。
中に入ったセトトルとフーさんは、大盛り上がりだ。
「すごい! クリスマスツリーだ!」
「壁も、飾り付け、されています!」
「そこは私がやりましたわ!」
「……私の飾り付けは見事なものでしょう」
「疲れた……」
ハーデトリさんとアトクールさんが自慢気に話している。そんな中でダグザムだけが、ぐったりとしていた。
アグドラさんと副会長は、さすがに大人の対応だ。にこにこと笑って見ている。
自分たちが飾り付けたなどと、自慢は……。
「どうだ? ツリーは私が飾り付けたのだぞ?」
「そうなんだ! アグドラありがとう! キラキラしてるよ!」
「お星様、綺麗……」
「はっはっは、喜んでもらえてなによりです」
自慢していました。
これだけ頑張ってくれたんだから、自慢だってしたくなるよね。完璧なクリスマスパーティーだもの。
「このおっきいのなに!?」
「ローストターキーだな。クリスマスといえば、七面鳥だ! 俺とセナルが採ってきた!」
「す、すごいです!」
「父ちゃんと私が調理したんだよ! 二人のためにね!」
それを聞いたとき、なぜかセトトルとフーさんが止まった。
ん? さっきまで喜んでいたのに、どうしたのだろう。
「セトトル、どうしたの?」
「これ、オレたちのために……?」
「うん、みんなが準備を手伝ってくれたんだ」
「ふぇっ……ぐすっ」
「ぐすっ……」
二人とも泣きだしてしまった。そうか、初めてのクリスマスパーティーだもんな……。
俺は二人の頭を撫でてあげる。うんうん、泣くほど喜んでくれて、みんなも嬉しそうだよ。
「二人のためにね、みんながやってくれたんだ。こういうときは、なんて言えばいいと思う?」
「ぐすっ……みんな、オレたちのためにありがとう! メリー・クリスマス!」
「ありがとう……ぐすっ……ございます。メリー・クリスマス」
あぁ、いいなこういうの。ぐっときた。俺も泣きそう。
というか、ウルマーさんとハーデトリさんは泣いている。ダグザムさんが泣いていて、アトクールさんにハンカチを渡されているのには驚いたどね。
俺たちはその後も、楽しいクリスマスパーティーを続けた。
「チキン! うわー! 中にも料理が入ってる!」
「おう、どうだ?」
「おいしい、です!」
「……そうか。しっかり食えよ」
おやっさんはそれだけ言うと、厨房に戻って行った。相変わらず渋い人だ。
でも頭が真っ赤だったから、きっと照れていたんだろう。そんなところも、おやっさんの魅力な気がする。
『ほう、我はこれを一匹全部食べていいのか』
「おう、俺が採ってきたんだぞ? 感謝しろよガブ」
『うむ。良くやったなヴァーマ、セレネナル』
「相変わらず上から目線だけど、尻尾を千切れるほど振ってるね」
ガブちゃんも上機嫌でローストターキーを頬張っている。肉が食べたいと言っていたから、これで満足してくれそうだ。
「カーマシル、ツリーの天辺の星がキューンになっているぞ」
「これはこれで趣がありますね」
「キュンキューン、キューン!(同じくらいの大きさだったので、ついやっちゃったッス!)」
キューンは、なにをしてんの!? ……とも思ったが、まぁいいだろう。たまには、こういうのもね。
ハーデトリさんがフーさんに抱きつき、ダグザムさんがセトトルとローストターキーを食べる。
アトクールさんはキューンを追いかけまわしているが、それもそれで面白い。
はぁ……本当に良かった。
「ボス? なんで黄昏てるの?」
「ウルマーさん? あれ、サンタ服に……」
「ヴァーマに後生だから着てくれって、訳の分からないことを言われてね。私とハーデトリとセレネナルが着せられたのよ……」
「よくお似合いですよ」
「……ありがとう」
ウルマーさんのサンタ服、やばい。すごく可愛い。このまま見ていたら顔が、赤くなってしまう。
ん? そういえば、ちょうどいいな。
俺は胸元からプレゼントの入った箱を取り出した。
セトトルやフーさんが同じ物だと気づいてしまうとあれだし、セトトルたちには見られないところで開けてもらうように言っておかないとね。
「これ、クリスマスプレゼントです。セトトルたちには見られないよう、一人のときに開けてください」
「……え? えぇ? えええええええええ!?」
「もしかして、ご迷惑でしたか?」
「う、ううん! 大丈夫! ありがとう!」
そうだ、他の二人にも渡しておかないとね。俺は厨房に逃げて行ったウルマーさんと別れた。
ハーデトリさんはっと……ヴァーマとセレネナルさんと一緒にいるみたいだ。ちょっとお邪魔させてもらおう。
「ハーデトリさん、ちょっといいですか?」
「いいところに来ましたわ。さ、移動しましょう」
「え?」
「おう、まぁ、なんだ。だから、日頃の礼っていうかだな……」
「はいはい、ありがとうヴァーマ。さっき落としたときの顔が面白かったよ」
「ぐ……」
ヴァーマは顔を真っ赤にしながら、セレネナルさんにプレゼントを渡していた。サンタ服のセレネナルさんに、プレゼントを渡している姿は面白い。
プレゼントを渡す方であるサンタが、プレゼントをもらっているんだからね。
まぁでも、ハーデトリさんが離れようとしていた理由も分かった。俺にとっても、ちょうどいい。ハーデトリさんにプレゼントを渡しておこう。
「ハーデトリさん、これクリスマスプレゼントです」
「……え? え? え? えええええええ!?」
「今日のお礼も兼ねています。受け取ってもらえますか?」
「も、もももももちろんですわ!」
「あ、でもセトトルたちには見られないように、一人のときに開けてもらえますか?」
「分かりましたわ!」
その後、ハーデトリさんは話しかけても反応が無くなってしまった。うーむ、ウルマーさんとは少し違うサンタ服がよく似合っている。
胸元が強調されていて、破壊力が抜群だ。クリスマスって最高だね。
そのまま見ていても仕方ないので、俺は彼女を椅子へ座らせてアグドラさんと副会長のところへ向かうことにする。おや、ガブちゃんもいるな。
「アグドラさん、ちょっといいですか?」
「ん? ナガレさんか、お疲れ様。どうかしたのか?」
「おやおや、年寄りは邪魔ですかね?」
「そんなことはありませんよ。これ、アグドラさんにクリスマスプレゼントです。セトトルたちには内緒にしたいので、一人のときに開けてください」
「おぉ、そうか。ありがとう」
「ナガレさんのことですから、プレゼントは他の人にも渡しているんでしょうね」
「え? はい、そうです。では自分は、おやっさんのところへ行ってきますね」
「……いつか刺されないでくださいね?」
『そのときは我が守ろう』
副会長がなにか小声で言っていたのだが、ダグザムさんが鳴らしたクラッカーの音で、よく聞こえなかった。ガブちゃんもなんか……守る? どういうことだ?
まぁ大事なことなら、また言ってくれるだろう。そう思い、俺は厨房のおやっさんのところへ向かった。
「おやっさん、いいですか?」
「おう、どうした。料理の追加か?」
「いえ、今日のお礼にと……」
「ん? おぉ、こりゃシャツか。ありがとな」
「エプロンは大事に使っているようでしたので、シャツにしてみました」
「おう、助かる」
おやっさん、サンタ帽子は調理場でも外さないんですね。
そんなところも、おやっさんらしくていいと思います!
まぁなにはともあれ、これでプレゼントは配り終わった。
後はセトトルたちの様子でも「あはははははははは!」……セトトルの声だ。一体なにがあったんだ!?
俺が慌てて行くと、そこでは……セトトルとフーさんが顔を真っ赤にしていた。
「あー! ボスー! あはははははは!」
「セ、セトトル?」
「ボス! どこ行ってたんですか!? 探しました!」
「ちょ、フーさんも……くさっ! 酒くさっ!」
誰かが、この二人に酒を!? ……いや、そんな人たちじゃない。ということは、ウイスキーボンボン的な何かを食べちゃったのかな?
「もしかして、お酒が入ったもの食べたんですか?」
「いや、ジュースと間違えて飲んだみたいだ。すまん、見落としていた」
「……申し訳ありません」
「いえ、大丈夫ですよ。ですが、二人を連れて先に帰らせて頂きますね。ほら、二人とも水を飲んで。帰るよ」
「あはははははは!」
「いやー! 帰りたくないです!」
セトトルは笑い続け、フーさんは流暢に話していた。酒って怖い。
仕方なく俺はセトトルを頭に乗せ、左手でフーさんを支えた。
「では、すみません! お先に失礼します!」
「あははははは!」
「いーやー!」
「キュン(お疲れ様ッス)」
『馳走になった。また寄らせてもらおう』
「ガブちゃん! ありがとうございますでしょ!」
『……ありがとうございます』
そして俺たち五人は、一足先に家へ帰って来た。
二人は……ぐっすり眠っているね。都合はいいけど、驚いたよ。
サンタ帽子を被って、二人とも可愛い寝顔だ。楽しかったんだろうな。頑張って良かった。
「じゃあ、俺たちも寝ようか」
「キューン。キューン(そうッスね。十分騒いだッス)」
「二人の枕元にプレゼントを……これ、俺のベッドだよね?」
「キュン、キューン(まぁまぁ、細かいことは気にしないッスよ)」
『二人は、なにをしているのだ?』
……俺とキューンは目を合わせる。いや、キューンに目はないけど。
そして機械のようにギギギッと横を向いた。
『どうしたのだ? その箱はなんだ?』
「……ど、どうしようかキューン」
「キューン……。キュン、キューン(バラすしかないッスね……。ガブちゃん、これはクリスマスプレゼントッス)」
『なにを言っているのだ? クリスマスプレゼントは、サンタさんが持ってきてくれるのであろう?』
や ば い !
ガブちゃんもサンタさんを信じていたようだ! 子供だったことを、すっかり忘れていた!
こ、こうなったら……。
「ガブちゃん、この箱を見てくれるかい?」
『ふむ? 箱がどうしたのだ?』
「ほい! 消えた!」
『ぬぉ! 箱が消えたぞ!』
「という、手品でしたー。さぁ、寝よう寝よう」
『も、もう一度見せてくれ!』
「はいはい、いい子に寝ないとサンタさんが来てくれませんよー」
『二人ともなにをしている、早く寝るぞ』
袖に箱を入れただけで、手品だと騙されてくれて良かった。
サンタさんも大事らしく、すぐに寝てくれたしね。
その後、ガブちゃんが寝たのを確認する。そして俺とキューンは一階へ行き、箱のラッピングを変えた。多目にラッピングを買っておいて本当に良かった。
そして改めてプレゼントを枕元に置き、俺とキューンも眠りにつく。
やれやれ、大変だったな……。世のお父さんやお母さんの気持ちが分かったよ……。
「プ、プレゼントがある! プレゼントがあるよ!」
「靴下を、忘れました……けど、大丈夫でした!」
『我にもちゃんと届いているぞ!』
二人の大喜びする声で、目を覚ました。
覚ましたが……もう少し、寝たフリをしておこう。
「うわー、星のついたブレスレットだ……可愛い!」
「私も、お揃い……です! 可愛い!」
『なんだこのクッションは……悪くないではないか!』
「キューンキューン。キューン(僕はガブちゃんとお揃いのクッションッスね。サンタさんありがとうッス)」
キューンよ、俺の方に声をかけるのをやめなさい。
全く……。でも喜んでくれて本当に良かった。俺も初めてのクリスマスパーティーを楽しめたからね。
でも来年は、絶対にもっと早く用意をしよう。
後日、俺はウルマーさんとハーデトリさんに怒られた。
女性に同じプレゼントをしてはいけない! と言われたのだ。お揃いだと仲が良さそうで、いいと思ったのだが……。
しかし彼女たちは、一緒だと喜んでいるセトトルとフーさんを見て許してくれた。
プレゼントって難しいね……。