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決戦

「我々は今、未曾有の恐怖に晒されています。またより深刻な事は、その事実を元老院は隠蔽し続けている事なのです。皆がその地を夢見ている天上界は実在しません。それどころか、それを信じた我々の仲間は、アイオーンという怪物の食料として提供されていたのです。元老院は、アイオーンの食料となる人を選別する組織だったのです。我々は何も知らずに犠牲となった多くの尊い命を、無駄にするわけにはいきません。皆さん、今こそ立ち上がり、我々と共に行動し、自らの生きる権利を、勝ち取ろうではありませんか!」


 テレビで放映されている鄭の熱い演説を、真実の目の幹部と共に智也たちとミゲルや修一、龍次も集まり、その様子に注目していた。


「ま、言っている事は今までと全く変わらないんだけどね」

 カークンは綾音にウィンクをしながら微笑んだ。


「各国政府の軍隊も動き出しているみたいですね」

 不安そうなタマオの肩に、藤堂が手を添えた。


「軍隊とは言っても、今までまともな敵もおらず演習しかしていない彼らに、僕たちの居場所は簡単には突き止められないさ。国もまた有事には備えていただろうけど、所詮は形骸化していて、まともに機能せず情報が錯綜しているようだ。いずれにせよ、先ほどの放送を止める手立てもないようなら、たかが知れている。それよりも、S.I.SやS.O.Tの活動を足止め出来た事の方が大きな成果だね」


「各国政府もアイオーンの存在は知らされてなかったわけだから、今頃は元老院も事実確認の問合せで忙殺されているはずだ。この機を逃すわけにはいかないさ」

 カークンが彩音の肩に手をまわすと、悟の拳が強く握りしめられた。


「では、作戦を確認しよう」

 藤堂が元老院の設計図をテーブルの上に広げた。


「厳戒体制ではあるけれど、通常の警備員はたいした問題ではないだろう。ただ、中枢にはS.O.Tの精鋭が守りを固めているはずだ。そこを突破できるかが、この作戦の鍵だね」


「ミゲルさん、修一くん、龍次くんを中心とした先発隊が道を開いて、後発隊の鄭さんや智也くんと僕が、狙撃手のソジンさんとを伏龍を守りながら内部に潜入する。シンプルですが、効果的ですね」

 タマオに向かってニッコリと微笑んで頷いた藤堂は、ミゲルたちの方へ顔を向けた。


「僕たちには腕の立つ者がいないので、先発隊をあなたたちにお願いするしかなかった。申し訳ない」

「大丈夫ッスよ! こんな時のために俺たちは鍛えてきたッスから!」

 腕に力こぶを作り、修一が応えた。


「ゲイリーさん、間に合うのかな」

 彩音が心配そうに呟いた。


「それは心配ないよ。だって、あの人はケンジくんが帰ってくる日を心待ちにしていたから。明日がその日だって言う事は、本人が一番良くわかっているさ」

 智也の言葉に、彩音は小さく頷いた。


「結局のところ篠原道源は、我々の味方なのでしょうか」

 タマオの言葉に一瞬の沈黙がうまれた後、藤堂が口を開いた。


「さあ、今はまだわからないな。ただ僕たちがこうやって準備を整えられたのも、彼の資金のお蔭だから」

「でもアイオーンを欺きながら自分の直属組織であるS.I.SやS.O.Tには事実を知らせず、孤立無援で何かを企むなんて事が、果たして可能なのでしょうか」


「行ってみればわかるさ。我々がアイオーンを前にした時、彼がどちら側につくのか」

 演説を終えた鄭が戻ってきた。


「鄭さんっ! 」

 皆の声が揃った。


「よし準備は出来ているな。それでは李、カークン、後を頼む」

「ああ、任せておけ」


「私は?」

 綾音が手を上げた。

「君はここに残って各国軍への対応など、李やカークンの補佐を頼む」

「私も、後発隊に同行してはダメですか?」

「非常に危険だぞ」

「わかっています。でも、これまで一緒に戦ってきたみんなと、最後まで一緒にいたいんです」

 鄭は智也の目を見て、頷いた。


「よし、一緒に行こう! 綾音」

 智也の声を聞いて一歩前に出ようとした悟を、太一が止めた。


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