【智也たち】マギー・ラウ
「ご苦労だったな、マギー。で、どうだった?」
「これが内部の見取り図です。ここが司令室で、鄭栄や藤堂トオル、カークン・ヨイチョイなど主要な幹部は、大半の時間をここで過ごしています。例外として李小平は別にある研修室にこもりっきりですが。竹やぶの子たちも全員が合流している様子です。警備は厳重で、入り口を含め要所ごとにかなりの数の武装した警備員が配置されています」
「そうか、よくやった。さすがはS・I.Sだな」
「有難うございます」
マギーが褒められ、少しだけ不機嫌になったユンファがアーロンに詰め寄り、顔を近づけた。
「どうするんですか? 隊長。これだけ武装されちゃあ、私たちだけでは相手ができませんよ」
「その辺りは沢村が色々と動いているはずだ。今は指示を待つしかない」
「でも隊長ぉっ! このまま放っておいたら、ヤツらはどんどん強大になっていきますよぉ。今のうちに私たちで何とかしないとダメじゃないですかぁ」
「焦るな、ユンファ。上からの指示があるまで待つんだ」
「隊長の言う通りだ。今までは一部の狂信的な信者によるオカルト教団としてしか認知されていなかった彼らが、今は武装したテロリストとして全国で蜂起している。マスコミも注目する彼らに攻撃して、僕たちの存在を知らしめるような事は、避けなければならないんだよ」
「瀬戸っちまで。わかりましたよっ」
ユンファがチョンスの頬をつねって気を落ち着かせていた時、モニターから声が聞こえた。
「待たせたな。全員揃っているか?」
チョンスは何も言わず、少し赤くなった両頬を押さえていた。
「待たせ過ぎだよ。それで、攻撃許可は下りたのか?」
アーロンはゆっくりと椅子を回転させ、モニターの方に顔を向けた。
「厳しい状況だな。彼らには各国の軍が対応する事になったよ。これは多くの国家予算を割り当てられながらも、主だった活動は演習くらいしかなかった彼らに取って、格好のアピールポイントだからな。どの国も、こぞって軍で鎮圧する事を表明している。これも彼らの狙いだったのだろう」
「マギーの情報では、既にヤツらは何かしらの武器を完成させ、近く元老院への攻撃を計画しているようではないか」
「その件での連絡だ。お前たちは本日付けで元老院に入り、護衛の任に着くよう命ずる」
「……アイオーンという存在に対抗する武器のようだが」
「ほう」
「ヤツらは巨額を投じ、俺たちの知らない、そのアイオーンとやらに対抗する兵器を開発している。お前はその存在を知っているのか?」
「私もお前たちと同じく、上からの命令に従っているだけだ。仮にそれを知ったところで、お前たちの任務には影響ないだろう」
「フッ、そうだな」
「では、そういう事だ」
モニターの電源が落とされた。
「隊長ぉっ! 私たちは命を懸けて戦うのに、真実を知ることも許されないのですか!?」
目に涙を浮かべて、ユンファは背を向けているアーロンに訴えた。アーロンからのアイコンタクトを受けた瀬戸が、ユンファの肩にそっと手を添えた。
「ユンファ、組織に所属しているからには上からの命令は絶対だ。それを疑って僕たちが独自の判断で行動をしてみろ。それで結果が失敗だった場合、上層部の判断が間違っていたのか、それとも命令の不徹底が原因なのかがわからなくなるだろう? だから、上からの命令を確実に遂行する事は、プロフェッショナルとして最低限の仕事だ。そこを疑う余地はないよ」
「……わかりました」
気が付くと、ユンファの目の前にアーロンが立っていた。
「安心しろ。俺たちは無駄死にするつもりはない。俺は沢村を信じている。お前は俺を信じろ。疑う事よりも、信じきる事で活路を見出せ」
「はいっ!」
曇っていたユンファの顔が晴れた。




