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【智也たち】合流

 ゲイリーは一度UWWFの事務所に戻った後、武瑠からもらった地図を頼りに、竹やぶの中を彷徨っていた。

「本当にこんな所にあるのかよ……」


「ゲイリーさん、ゲイリーさん、こっち、こっち」


「ん? どこだ?」

 茂みの中を覗き込んでみると、暗闇の向こうに光る目が、かすかに見えた。その方向に顔を寄せてみると、幾十にもからみついた竹の根の中から、すらっとしたきれいな指先が伸びてきて、ゲイリーの腕をつかみ、中に引きずり込んだ。


「うわっ! 何だ!?」

「へへー、ゴメンね、ゲイリーさん。大丈夫? つけられたりしなかった?」

「綾音かあ。お前、俺を誰だと思っているんだ?」

「さっすが! ゲイリーさん。ところでケンジくんは?」

「ああ、それはみんな集まったときに話すわ」

「うん、わかった。じゃあ、ついてきて!」

 綾音に案内されて中をしばらく歩いていると、一気に広がった場所に差し掛かった。そこにはずらりと最新の情報端末が並べられ、大勢のスタッフが忙しそうに働いていた。


「へー、すげえな」


「でしょ! みんな頑張ったんだよ。ほとんどの人たちには信じてもらえないけれど、それでもこうやって少しずつ仲間も増えてきたんだよ」

「ゲイリーさん! お帰りなさい。無事だったのですね!」

 タマオがゲイリーに気づき、手を振りながら駆け寄ってきた。それを見ていた智也や、他のスタッフたちもぞろぞろと集まってきた。


「お帰りなさい、ゲイリーさん。あれ? ケンジは一緒じゃないの?」

「ああ、あいつはいねえ。パラソル、何だったかな、なんかそっちの方へ行っちまいやがった」

「ひょっとして、パラレル・ワールドではないですか? 並行世界のことですね」

「おお! それだ、それ!」

「なんでそんなトコに行っちゃったの?」

「そりゃお前、道源がそこにあのでかい怪物を倒すヒントがあるかもしれねえって……」

「道源がっ!? それは罠じゃないの!?」

「と、智也さん、落ち着いて。ゲイリーさん、詳しく話を聞かせてもらえませんか」


「ああ」

 ゲイリーは身振り手振りを交えながら、時間をかけて皆に説明した。


「本当にそんな世界があるのかよ、漫画でしか読んだことないぜ」

「あ! それ藤堂トオルのだろ!」

 ゲイリーが嬉しそうに悟を指さして答えると、悟は意地悪そうな表情を浮かべて笑った。


「なんでじいさんが俺らの中でもマニアしか読まないような漫画を知っているんだ?」


ゲイリーは悟の頭をわし掴みにして、持ち上げた。

「誰だ? この口のきき方を知らないイガグリ坊主は?」

「イ、イテテテッ!!」 

「同級生の悟だよ。で、横で笑っているヤツが太一だ」


「なんだ、ケンジの同級生か。よろしく!」

 降ろされた悟は痛む頭を抱えながら、太一を睨みつけた。


「でも俺だけじゃねえ、あの道源も知ってやがったぞ」

「道源がなぜそんな若者向けの漫画を知っていたのでしょうか。悟さん、それはどんな内容なのですか?」

「あ、えーと、えーと、そこは審判の日がなくて、人は長生きして、すごくたくさんの人が住んでいて、だから人同士で醜い争いが起きるんだ。天上界なんて存在しないけれど、それでも人は自分たちで未来を切り開いていくっていう話。なんか信じらんないけど、でも妙にリアリティがあって、つい引き込まれちゃうんだよなぁ」


「ひょっとして、その漫画家さんは60才を過ぎているのじゃないですか?」

「年齢不詳だし、顔も出さないし、一説では消息不明みたいだよ」

「……きっとその人も、過去にパラレル・ワールドへ行った事があるのでしょうね」

「ええー、ホントかよ!?」

「バカだな、悟。行った事があるから漫画が描けるんだよって、イテテテッ!」

 悟は力いっぱい太一の頬をつねった。


「是非その方と会って、お話を聞いてみたいですね」

「それなら簡単だ」

「どうして? 智也、藤堂トオルの居場所は編集者とか一部の人以外、誰も知らないんだぜ!?」


「うちの実家に下宿しているからな」


 智也の一言に、皆が一瞬固まった。しばらく続いた沈黙を、悟が破った。

「ななな何だってぇ!? 智也、お前、俺が藤堂トオルの大ファンだって知りながら、今までなぜ隠していたんだよ!?」

「お前がファンだなんて知らねえよ。仮に知っていても言わねえけど」

「でも、それなら話が早いですね、智也さん、案内してもらえますか」


「はいはいはいはい! 俺も行く!」

 悟は勢いよく飛び跳ねながら手を挙げた。


「悟はダメだ、騒ぐだろ」

「えーっ!? 静かにして、邪魔しないよ。あ、でも、ちょっとサインもらうのはいいだろ?」


「私たちと一緒にお留守番だね」

「え、あ、はい……」

 綾音の一言で意気消沈としている悟の姿を見て、斜め後方から太一が声を殺して笑っていた。


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