表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/55

【ミゲルたち】ファイナル

 ミゲルがドアを開けると同時に多くの報道陣が押し寄せてきて、たくさんのフラッシュと畳み掛けるような質問を、次々と浴びせかけられた。


「エル・ティグレさん、今の気分は?」

「ずばり聞きますが、勝算はありますか?」

「ラ・サント側は自信満々で、1分以内であなたを倒すと言っていますが?」

「……」

「あなたが連れてきた日本人同士の対決は、リュージ・ヤガミ選手に軍配が上がりました。これは意外な結果だと思いますか?」

 ミゲルは何も応えずにその場を離れようとしたが、最後の質問に足を止め、振り返った。


「お前、さっきの試合を見なかったのか? 誰があの試合の結末を予想できた? 俺は、最後までどっちが勝つのかわからなかったぜ」

「では、あなたがシューイチ選手のリベンジを果たせると思いますか?」

「修一も龍次も俺の仲間だ。俺は、俺のケジメとして全力を尽くして戦い、そして勝つ」

 そう言い残すとミゲルはガウンを翻し、ゆっくりとリングに向かって歩き始めた。かつては何度も繰り返し通った薄暗く、配管から漏れた下水が滴る通路の角を曲がると、煌めく光が大量に降り注いできた。先ほどの興奮が未だ冷めやらぬ観声は、ミゲルが姿を現すと、より大きなうねりとなって会場を震わせた。


「登場してきました! エル・ティグレ選手です!」


 巨大スクリーンに紹介映像が映し出された。入場曲は流さず、たった一人で優雅に入場する姿に観客は大歓声を上げ、中には興奮して発炎筒を投げ込む輩もいて、配備された警備員だけでは抑えきれず、ILLGの若手選手も事態の収拾に当たっていた。


「美しい刺繍が施されたガウンを頭から深く被っているため、その表情は窺い知れませんが、垣間見える鍛え抜かれたボディから、調子の良さが伝わってきます。久しぶりにエル・ティグレ選手の華麗な空中技が見られるとあって、私たちも今日この瞬間を楽しみにしてきました!」

「本当ですね。近年まれに見る好カード、今日この実況席にいることを光栄に思います」


 ミゲルは軽いステップからトップロープを軽々と飛び越して入場すると、歓声と怒号が入り交じり、リング上には様々なものが投げ込まれた。係員が懸命に片づけていると、突然、場内のライトが全て消えた。どよめく歓声の中、無数のレーザー光線が飛び交い、それらが入場口の一点を刺すと同時に両脇からスモークが立ち込め、巨大スクリーンにはジルの派手なプロモーション映像が映し出された。


「続いて、ラ・サント選手の入場です!」


 アナウンスが響き渡り、へヴィメタルの入場曲が流れ出すと、ミゲルの時とは明らかに違う野太い男どもの歓声が地鳴りのように会場を揺るがした。ビキニの上にゴールドの鎧をまとった美女が、激しく踊りながら登場してきた後、セコンドに若手数人を引き連れたジルが入場してきた。


 リングに上がると同時にガウンを脱ぎ捨て、両手を挙げて獣のような雄叫びを上げた。いつものパフォーマンスに熱狂的なファンが盛り上がる一方、女性客やVIP席からは冷ややかな視線が注がれた。長身で細身のミゲルに比べると、身長は低いが岩のような筋肉をまとったジルの体には無数の傷があり、歴戦の激しさを物語っていた。


「それでは本日のメインイベント、元チャンピオンのエル・ティグレ選手対、現チャンピオンのラ・サント選手とのILLGライトヘビー級タイトルマッチ60分1本勝負を行います!」

 国内で人気のあるアーティストがメキシコ国歌を斉唱した後、両選手に花束が贈呈された。


「青コーナー、156ポンド、元ILLGライトヘビー級チャンピオン、エル・ティグレ!」

 大歓声の中、ミゲルは軽くステップを刻んだ。


「赤コーナー、158ポンド、現ILLGライトヘビー級チャンピオン、ラ・サント!」

 ジルは仁王立ちのままミゲルを睨みつけていると、試合開始のゴングが鳴った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ