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7 坂の上のメイド少女 2

一方、そのころ。

サラシナ伯爵の城では。


「このごくつぶし!汚らわしい!!」


ヒステリックな叫び声と共に、床にたたきつけられた陶器製の調度品が、ガシャリと割れる音が響いた。


「申し訳ありません、奥様・・・。」


鬼の形相の伯爵夫人---エルザ・サラシナに対し、『おしん』は、床這い蹲るような姿勢で、ただただ涙を流しながら謝るしかなかった。自慢の黒髪には無数の埃が絡みつき、腕や額には小さなあざがいくつも出来ていた。


「ワタクシはね!そこにいるセキカワに紅茶を淹れて来るよう命令したのよ!なぜ、アナタがその汚い手で私の紅茶をのこのこと持ってきているのよ!?」


「そ、それは、その、セキカワさんが、だんな様のお夜食の支度で忙しそうだったので、その、私が代わりに・・・」


「まあ!何て口の聞き方なの!それじゃあ主人のせいで、私はこんな汚い汁を飲ませられそうになったと!?そういうことかしら!?」


「ち、違う!違います!そういうつもりでは」


「ええい!忌々しい!!その腐った性根を叩きなおしてやるわ!」


「ひぃっ!!」


エルザは、右手に持っていた皮製のムチを、目の前で必死に許しを乞うている幼い少女の体めがけて振り下ろした。


ビタァーーーーン!!


「ひっぐっうう!!」


ムチは間髪淹入れず、何度も何度も振り下ろされた。


「ひぎゃああ! 痛い痛いぃ! ごめんなさい!ごめんなさいいぃ!!うぐぅ!」


ムチの跳ねる音と、少女の悲痛な叫びは、夜遅くまで響いた。

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