6 坂の上の作戦会議
「そんなことより、仕事の話だ。」
周り客の数が少なくなってきたところで、私はロッコに切り出した。
「伯爵から聞いた噂話・・・、例の少女は、『銀の少女』のことなんだろうか?」
ロッコは、空いたグラスに残った氷をかじりながら、答えた。
「わからない。ただ、可能性は、あると思う。」
「よし。じゃあ、そいつがよく出没する、その海岸に張込みを掛けてみるか?」
「それはいいと思うけど・・・。」
「けど?」
「その前に、このリュウトの『一ノ宮の神』に会って、話を聞いてみたい。」
「一ノ宮?・・・ああ、カグヤヒコの神のことか。」
一ノ宮というのは、その地域でもっとも権威のある神社の事だ。
このリュウトの国の一ノ宮に祭られているのは『カグヤヒコ』という高齢の女神で、なんでも、女王の祖先であるアマテラスの曾孫にあたる神様らしい。
「じゃあ、こうしよう。明日はまずカグヤヒコの神に、事件について何か知ってることはないか聞いてみる。で、夜になるまで街の中をまわって聞き込み調査。夜になったら例の海岸で張り込み。・・・こんな感じでどうだろう?」
「賛成だ。・・・いっておくけど、カグヤヒコ様に色目使うなよ。」
「いやいやいや。神様口説くなんて、そんな恐れ多いこと俺にはできねぇよ。」
「よく言うよ。私だって・・・。」
と、そこまで言いかけたところで、ロッコはテーブルにばたりと突っ伏し、そのまま酔いつぶれてしまった。
「やれやれ、世話の焼ける神様だ。」
私は彼女を背負い、勘定を済ませ、宿へ向かうことにした。