10 坂の上のロリババア 3
「・・・じゃが、髪の色とか特徴とか、そういった細かいところまでは聞いておらんのう。」
カグヤヒコ様は、すこし申し分けなさそうに答えた。
「だったら、俺たちがその倅に直接会って、話を聞いてみるか。・・・カグヤヒコ様、そいつの居場所、何処だかご存知ですか?」
「確か・・・、伯爵の城で働いている、とか言っておったなぁ・・・。」
「え、伯爵の城? それって、サラシナ卿のですか?」
「他におらんじゃろう? このリュウトを治めている人物じゃからな。」
なんてこった。つい昨日、その伯爵を尋ねたばかりだというのに。
「二度手間だな。めんどくさいにゃぁ・・・。」
ロッコの両耳がくたっと垂れ下がっていた。
「もっとも、例の女子に願いを叶えてもらった以上、あの城に勤め続ける理由もないじゃろうから、今はもう別のところにおるかもしれん。
・・・まあ、いずれにせよ、あれだけ羽振りが良いのじゃから、いまさらこんな田舎町にはおらんじゃろう。
おそらく、リュウトの市街地の何処かで、遊女をはべらせて昼間から遊んでおるかもしれん。」
と、カグヤヒコ様はそこまで話し終えると、少しぬるくなった番茶をずずっとすすった。
ちらっと壁に掛かっていた古時計のほうを見ると、もう9時を回っていた。聞きたかったことはある程度聞けたので、そろそろお暇しようかと、腰を上げようとしたときだった。
部屋の引き戸がバァン!と勢いよく開いたかと思うと、和服姿の中年の男が飛び込んできた。
「これ! ジンベエ、騒々しいぞ。今客人がおるゆえ---」
男はカグヤヒコ様の言葉を遮った。
「た、大変だ、カグヤヒコ様! ウチの娘がっ!!」
「-な、なんじゃ!?」