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滅亡世界の果てで  作者: 漆之黒褐
第1章
13/52

そんなに巨大でいいのか! 【地図画像】

 教会の生活環境は少しずつ改善されている。

 毎日1個ずつ作成している荷車の御陰で物資の運搬が楽になったことで、子供達は川やら森やらを往復して色々と素材を集めてくれるようになった。


 ウルス村に行く時もそうだが、基本的に子供達は外出する時は4人1組で行動する。

 荷車は2人で引っ張れば楽だし、4人いるから交代して引く事も出来る。

 今までのように全員が手持ちという事がなくなった上に、本人の力、イコール物資運搬量という図式が荷車積載量に変わったので、食糧事情も鰻登りに改善の一途を辿っていた。


 森から木材を採ってきてもらう時には安全のためにユキさんが同行する必要があるので、最近ずっとユキさんは森に通い詰め。

 何度かグラント山に住んでいる巨大熊の子供に鉢合わせしたそうだが、最近ではユキさんの姿を見た瞬間に逃げ出すそうな。

 熊が逃げるって……。

 熊が可哀想なので、熊よけの鈴でも今度作ってみようかなぁ。

 ユキさんに持たせてチリンチリンと。

 暫くすれば、音を聞くたびにユキさんの事を思い出すようになった熊さん達は、子供達が鈴を持っていても音を聞いただけで逃げ出してくれるようになるだろう。


「おにーちゃん、こっちこっち」


「クリス、ちょっと待ってくれ……」


 教会に引き籠もって荷車や水桶作りにせいを出して、さて何日経っただろうか。

 広い聖堂を工作室として使用している俺だったが、ずっと教会の中にいるのを不満に思ったクリスが俺を外へと連れ出していた。

 5歳の子供なのに、クリスは意外としっかりものである。

 これでもう少し身体が頑丈に出来ていたらと思う。


 クリスは病弱である。

 それにたぶん寄生虫に栄養を吸い取られているのだろう、クリスはガリ痩せ体形だった。

 虫下しの薬が欲しい所だが、今の所作れる目処はたっていない。

 そんな特殊な知識なんて持ち合わせていないし。


「はぁ、はぁ……クリスって、こんなに元気だったかな?」


「けんにぃといっしょにいるときだけ、いちゅもよりなんかげんきかな?」


 そう言うマリンちゃんもまだあまり疲れていないようだった。

 俺が荷車を引いているから、という理由にしてはちょっと納得出来ない。

 最近、どうもみんな活発になっている気がしている。

 もしかしたら、才能:支援効果Lv1の影響なのかもしれない。

 やはり取っていて良かったと思う。


 でも、俺自身にも効果あって欲しかった。

 ずっと教会に引き籠もっていたので体力Lv1で得た各種能力も、経験値が足らずほとんど効果なし。

 確実にこの世界に来る前よりも体力落ちてるなぁ。

 才能と能力はやっぱ別ステータスか。


「ふぅ……到着?」


 教会から北西に向けて約1時間の歩き詰め。

 スープに使っている塩分を含んだダシがとれる草や、食べられる草花が色々生い茂っているという場所に俺は連れてこられていた。


挿絵(By みてみん)


 ちなみに4人目は俺の頭の上でスヤスヤと寝ているミントちゃん。

 俺、クリス、マリンちゃん、ミントちゃんの4人PTです。


「まだもうすこし。おにーちゃん、はい、みず。すこしやすむ?」


「ありがとう。クリスは偉いなぁ。他人に気配りが出来る男の子って将来もてるぞ~」


 もう少しということで、もうちょっと頑張った。


「おお……これはいい眺めだな。一面が花畑か」


「でしょ! ここ、ぼくのいちばんのおきにいりのばしょ」


 辿り着いた先は少し丘のように盛り上がっており、そこらかしこに草や花がいっぱい生えていた。

 丘に登るとそこから先は起伏の激しい土地が広がっており、右手方向に向けて緑が広がっている。

 左手方向はこれまで同様に荒野といった雰囲気だったが、もし自然が徐々に荒野を浸蝕しているというのなら、そのうち教会付近も緑に包まれる事だろう。


「家畜を放牧して育てるというのも……いや、それはまだ先の話か」


 水源が近くに見当たらないので、案外気候による影響なのかもしれないな。

 ここから北に向けて雨が降りやすくなっているとか。


「ああ、風が気持ちいいな。昼寝をしたくなる」


「おにーちゃん、きぶんてんかんになった?」


「とっても」


 頭を撫で撫でするとクリスはくすぐったそうな顔をしてはにかんだ。

 ん~、子供って可愛い。

 この世界にきてから随分とそう思うようになっていた。

 腹黒い大人達ばかりいる社会で暮らし続けていたら、きっとその事にはずっと気づけないでいただろう。

 女神に感謝。

 もう1ポイントぐらい才能ポイントを献上しても良かったかなぁ。


 その後は4人でせっせと採集を行う。


「にぃや、それいらないにゃ。どくもってるにゃ」


 調理する時と実際に生えている時とではまるで見え方の違う草花の説明をミントちゃんから教わりながら摘んでいく。

 バージョン2の半獣人タイプになったミントちゃんは、俺の背中にずっと抱き付いて怠けていました。


 そういえば、ミントちゃんがバージョン4の完全人型タイプになってる所を見た事ないなぁ。

 怠け癖と眠り癖のせいで変身訓練をほとんどしてないのかな?

 何でも良いけど、働こうよ。


「のうあるたかはつめをかくすんだにゃー」


 一応、ミントちゃんは教会でユキさんに次ぐ実力の持ち主らしく、俺達3人の護衛という名目もあるらしかった。

 どうやらユキさんと一緒に外からやってきたらしく、ウルス村の住人ではないらしい。

 2人がどうしてそんな強さを身に着けているのかを聞いてみても教えてくれなかった。

 訳ありフラグ持ちっぽいです。


 尚、3番手はポッポ、4番手はビックスだとか。

 ビックスは兎も角、なんでポッポが……。

 と思う所だが、どうやら以前ビックスが本気になってポッポを食べようとした所、逃げ回ったポッポが捨て身のタックルをビックスにかませてノックアウトしてしまったらしかった。

 そりゃ命がかかってるからね。

 捨て身にもなるだろう。


「おさらいにゃ。そのみぎてにもってるくさはなんにゃ?」


「メルトダウン草」


「かごのいちばんうえのは?」


「デスペア草」


「しろいはながついてるのはなんのはなにゃ?」


「ギガポイズンの花」


「むらさきのは?」


「サツリクの花」


「ぜんぶふせいかいにゃー。ほんとは、ほずきそー、くろつきそー、しろあるか、むらさきあるかにゃー」


 頑張って覚えたのに騙された。

 まぁやたら特徴的な名前ばかりだったから、ほとんど半信半疑だったけどね。

 縁起でもない名前ばかりだったし。


「あと、さっきのどくもってるくさは、ぽともいもにゃ。そのうち花もつけるにゃ」


「ポトモイモね」


「たべるとあたまやおなかがいたくなってくるしむことになるにゃ」


「経験談?」


「じょうしきにゃ」


 ポトモイモ、ポトモイモね。

 ……うん、イモ?


「クリス、地面を掘ったことあるか?」


「え? ないよ?」


 イモと言えば、土の下、茎や根に食べられる部分が出来上がるジャガイモやサツマイモが有名だろう。

 この世界には異世界から飛ばされた人がいた。

 過去、もし彼等によって発見され広められたというのであれば、イモの名がついていてもおかしくない。

 ミントちゃんが常識と言うぐらいだから……という期待を込めて、俺はせっせと地面を掘ってみる。


 そうしたら……。


「これは……随分とでかいな」


 ポトモイモの草の根を追いながら30センチぐらいも掘り進んでいったら、なんかとてつもなく大きな物体に行き当たった。


「クリス、マリンちゃん、ちょっとこれ掘るの手伝ってくれないか?」


 なになに~っと言いながら走り寄ってくる2人。

 3人がかりで穴を広げていくと、その先に直径50センチぐらいのジャガイモもどきが現れた。

 熊の子供の大きさもそうだったが、サイズがぱねぇよ異世界。

 俺一人だと持つのも大変な重量だ。


「ミントちゃん、これは?」


「ハクシャクイモにゃね……まさか、ぽともいものしたにそんなのがうまってるとは、わたしもしらなかったにゃー」


 市場でならば見た事があるらしい。

 つまり、これは見た目通り食べられる可能性が高かった。

 男爵イモならぬ、伯爵イモ。

 地球上にあるジャガイモとは似ても似つかぬ巨大さだったが、これがあれば教会の食糧事情は恐ろしく改善される。

 というか、これ一つあれば余裕で1日分以上の量になるだろう。


「今日はイモ尽くしだ!」


「?」


 初めて見る物体にクリスとマリンちゃんは首を傾げていた。

 まだこれが食べられるとは思っていないらしい。

 何せ、毒草の先にあったものだしな。


 ちなみに、ハクシャクイモに繋がっていた茎は更に地下へと伸びていた。

 そしてよくよくみると、丘となっている部分の頂上付近には毒草ポトモイモが……。

 地形を変えるほどの成長力かよ。

 いったい何を栄養にしたらこんなに育つのか。

 もしかして魔力と何か関係があるのか?


「おも、い……」


「けんにぃ、がんばって」


「がんばるにゃー」


「そう思うなら降りてくれると助かるんだけどな……」


 帰りは3人がかりで荷車を押して帰った。

 先に採っていた食べられる草花の上に、ハクシャクイモがでんっと飛び出している。

 俺が引いて、クリスとマリンちゃんが後ろから押す。


 ミントちゃんは相変わらず怠けて俺の背中に抱き付いていた。

 流石に俺が汗だくになってくると、子猫に変身して頭の上に移動したが。










 教会に帰ってからは、早速ハクシャクイモの調理にとりかかる。

 芽の部分や緑色を帯びた皮は当然の事ながら除外。

 誤ってポッポの餌にされても困るので、取り除いた後は厳重に保管。


 あと、念のため身を切り取ってステーキにした後、毒味として先に摘み食い。

 夕食にはまだ時間があるので、もし食用として問題があるなら俺のお腹に影響が出てくるだろう。


 それにしてもでかい。

 石包丁で切るのはちょっと大変だった。

 切るのに失敗して形を崩した部分は茹でた後潰してポテトサラダにしよう。

 草のスープに入れてイモ汁にするのもいいな。

 イモのステーキはタレが欲しい所だが、濃い目の草のスープをかけることで味付けの代わりにする。


 ちょくちょく味見していると、場所によって味に差違があることを発見。

 イモの中央にいくほど甘くなり、芽が出ていた付近にいくほど塩辛くなっていた。

 不思議発見。

 まぁこんだけでかいのだから、色々とあるんだろうね。


 量も量なので、今日は半分だけ使用する。

 油があればポテチやフレンチフライもいいね。

 マヨネーズやケチャップも欲しくなってきた。

 町に行ったら売っていないだろうか。

 文明レベル的に絶望的だと思うが。


「ごはんだよ~」


 っと叫んでから作った料理を持って食堂に向かったら、もうみんな揃っていた。

 おおう……みんな食いしん坊だね。


「にぃに、てつだう」


「あたしもてちゅだう」


 次々と名乗りをあげるお手伝いさん達に、あっと言う間にキッチンから料理が消え去りました。

 そして食堂についた時には、既に争奪戦が……。


「おイモさん、と~ってもおいしいですね~」


 ユキさんも食べ始めていた。

 やっぱりユキさんもまだまだ子供なんだなぁ、とつねづね思う。


「にーちゃんが作る御飯、うっめー!」


「うん。おにーちゃんのごはん、まいにちだんだんおいしくなってる。すごい……」


「あちちっ。このひらべったいおいもはまだちょっとあついにゃねー。したがやけどしたにゃー」


 そりゃ、毎日がっつりと経験値が入ってますからね。

 今日もまた新しい食材を調理したから、大量の経験値が手に入りました。

 もう〈料理・基礎〉の経験値は1000を突破したけど、経験値に限界あるのかなぁ。


「ほら、御前も食え」


 鶏もどきのポッポにもイモ料理を振る舞う。

 ポッポは何でも御座れ、何でも食べる。

 草花のサラダでも、生のままの川魚でも、地面の中にいた虫の幼虫でも、パンくずでも。

 食べれば食べるだけ卵を産む。

 食べた量以上の卵を産む。

 ポッポもやっぱり異世界クオリティ。

 教会の食糧事情が改善してきた今、余った卵はウルス村に住んでいる老人達に少しずつ分けてあげてます。


「んじゃ……この世の全ての食材に感謝をこめて。いただきます」


 さて、水と食料事情が改善した次は……衣食住の衣、服を何とかする番かな。

 そろそろ町に行ってみるか。

▼ちょっとここで主人公 本郷剣斗(ケント)の現在能力整理

(アップ中の情報のみ)


隠密Lv1〈気配隠し〉

効率Lv5

製造Lv1〈鍛治製造・基礎〉〈彫金製造・基礎〉〈木工製造・基礎〉

細工Lv1〈石細工・基礎〉〈革細工・基礎〉

加工Lv1〈裁縫・基礎〉

錬成Lv1〈錬金術・基礎〉〈薬草学・基礎〉〈料理・基礎〉

空間操作Lv1

体力Lv1

脚力Lv1

不屈Lv1

支援効果Lv1


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