夏の終わり
ギラギラと照りつけていたはずの太陽が、もう西の空へと落ちていく。
夏休みも、あと4日。
時間が経つのって早いもんだ。
夏休みなんて始まったのが昨日みたい。
「武!アンタ宿題は終わったの!?」
ああ、うるさい。
母さんに言われなくたって、分かってるさ。
そんなおっかない顔して、怒鳴りつけなくたっていいじゃないか。
毎年毎年先延ばしにする僕も悪いと思ってる。
でも、今年は頑張ったよ。
読書感想文も、絵日記も、算数の勉強もみんな終わってる。
あとは、自由研究だけなんだから。
赤トンボが夕暮れを横切った。
もう少し位、この雰囲気に浸ったって良いんじゃないのかな。
ほら、この重たい足音は父さんだ。
仕事が早く終わったからって、先に風呂に入って。
またお酒を飲んだら説教始めるんだろうな。
少し何か言うと叩くだろうし・・・
ああ、うるさい。
これ以上とやかく言われるのも嫌だし、とっとと自由研究始めちゃおうか。
そして残りの日々を好きなように過ごそうか。
親に言われて、始めるのも癪だけどね。
まあ、自由研究をやらないと先生に怒られちゃうし、また今年も模型標本でいいか。
捕まえたら、箱の中に入れてしっかり蓋をするんだ。
最初のうちは、バタバタして少しうるさいけどすぐ静かになるよ。
本当は薬を使いたいんだけどお金が無いし。
「行ってくるね。父さん、母さん。」
居間で、食事中の親に手を振って少年は飛び出していった。
少年の大好きないつも優しい両親は、手を振り返してくれた。
沢山の薬品のアンプルと、カーテンの下には夥しい数の標本、そして一辺が2メートルはある大きな木箱。
箱の内側に刻まれた爪の跡、染み込んだ血液の痕跡。
そして腐臭。
長く使われた痕跡の無い椅子・机、割れた鏡、壁の傷跡。
少年の背中の火傷・不自然にひしゃげた親指。
十五年前まで、絶えず聞こえていた悲鳴・絶叫。
それを知るものは、周りには今や誰もいない。
ただ子供部屋の二体の白骨だけが、その全てを知っていた。
ほら、どこかでツクツクボウシが鳴いた。
もう、夏も終わりだね。
どうも。AOIです。
この季節になると毎年苦しんでた記憶があります。
今回初めてホラーを書いたんですが、人体物は私が最も恐いと思うジャンルなのでこれを選択してみました。
・・・ありきたりかなぁ?
もし良ければ感想等お願いします。