あの世にて六回目 急いであの場所へ
気が着くと、暗い空間に俺、爺さんとベルデバルドさんの3人が居た。
「はい、お疲れさん。
……まぁ、こうなるとは思ってた」
「いいじゃないのよー、私はアンタなんかより、この子の行動理念を支持するわよ」
「とは言ってものう……そのせいで、またあの娘は1人で生きるんじゃぞ? 可哀想だとも思えるがの……
それも今回は不老と来た」
不老? 俺が魔石を渡したからそうなったのか?
「え? いや、なんかおかしくないか?
なんで、俺の時は不老でも無かっただろ、なんでローズに魔石渡したら不老になるんだよ」
爺さんの両肩に手を置き、そう聞くと、珍しく眉間に皺を寄せ、何か悩む様な表情を爺さんはした。
「うーん……いやのう、元々魔王の魔石にはそういった効果があったみたいなんじゃよ。
一定の身体年齢を迎えればそのまま不老へとナッテおったんじゃ。
お主もその恩恵を受けておったしのう……あのまま生きていれば数百年以上は優に生きていたはずじゃ」
んなばかな……いや、それでも俺は彼女に魔石を埋め込んでいたと思うから、たいした問題でもないのか?
「じゃ、じゃあローズは今は1人で居るって事なのか?」
「んー、実はそうでもないんだよねぇ~」
爺さんに向け、声をかけると、その返答は爺さんからではなく、何時の間にか後ろに居たレギンが答えた。
「んっとねぇ、今ローズさんはあの場所で暮らしているよ」
「誰とだ?」
「僕が死ぬ前までだとー、10人ぐらいの孫、曾孫に囲まれて穏やかにくらしてたかなぁ?
それにねぇ、ローズさんは神様の言うとおり、不老の身体になってたねぇ……カリブス国の人達がどこで聞きつけたのか彼女の身柄を狙ってたし、気をつけた方がいいかもね?
まぁ~あの人達にローズさんをどうにかできるとは思えないけどねぇ~。
それと、言伝をローズさんから預かってるよ。
何時までも待ってるから会いに来てだってさ~」
またあの国か……ローズの身柄を狙ってるね……何のためか知らないが、どうせ碌でもない事なんだろうな。
そんな事より、ラフィが預かったという彼女の言葉を聞いて、俺はもう居ても経っても居られなかった。
意識を集中すれば、手の中にはダーツが現れる、それをルーレットへと構え、投げた。
何処に刺さったかも確認して、転生を今か今かと待っていると、ベルデバルドさんの笑い声が聞こえてきた。
「アハハハァ……おっかしい、もうすごい必死ね、まるで親の元に帰りたがる子犬みたい。
んー、この馬鹿みたいだったら、引き裂こうとも思ってたけどね、いいわ。
私も貴方に加護をあげる、効果はすぐに現れる訳じゃないけど、期待してて?
じゃあ、私も楽しく貴方の人生見させてもらうわ」
ベルデバルドさんはそう告げると、まるで最初からそこに居なかったかのように消えていった。
「うん、じゃあ僕も行くね、今回も早くに再開できる事を祈ってるよ」
レギンも小さな光の球となって、どこかへと飛んでいった。
よし、俺も行こう。
「じゃ、俺も行くわ」
「あいよー、たまには自分の身体も大事にしろよ」
もしかしたら、爺さんは俺の自己犠牲みたいな行動を止めてほしくて言っていたのかな? と思った頃、意識が遠のく感覚を覚えた。
この感覚は転生する時の感覚だ。
1人で旅が出来るようになったら彼女の下へ行こう、そう心に近い意識を手放した。