気になるものをみつけたわけで。
中立都市ホワイトウォルフでは新しくSランクメンバーとなった3人を祝う祭りの為盛り上がっている。
1箇所を除いてではあるが。本来ならば1番盛り上がっているはずだろう、新に生まれたSランク3人が居る場所だけは何故か時間が止まったかのように静かになっていた。
いや、時間は動いている、ただ…お通夜の様に静まり返ってしまっていた。
「あ、あれ? もしかしてまだ仲良くなってないのか?」
クックも俺が浮かべた表情を見て自分の失言に気付いたみたいで、申し訳なさそうな表情を浮かべている。
「いや……そんな表情されると余計に辛い……」
「大丈夫よ! セラフィくんには私が居るんだから!」
「シャロンの気持ちはありがたいけど、俺も諦めるつもりはないから」
正直、ここの人達と居るのは楽しいのだが、若干苦痛に感じ初めていた。
それは、シャロンのアプローチだったり、周りの視線や態度。
煩わしくも感じていた。
1年もあれば、多少は改善されるかとも思ったけれど、彼女の態度は悪化するばかりだ。
それならば……何処か誰も居ない場所で1人暮らすのもいいかもしれない。
ローズを攫ったあの国を滅ぼした時に、あの場に留まらず、少しでも離れて居れば、今とは違っていたのだろうか。
……駄目だな、暗い事を考えていると深みに嵌っていく。
少しは気を紛らわせた方が良さそうだ。
「まぁ、とりあえずは楽しく飲もう」
「あ、ああ。じゃあ改めて…セラフィ達3人のSランク昇進おめでとう!」
クックが響く様な大声で音頭を取り、その場に居た皆が手に持った容器を高らかに上げた。
クック達と飲み始めてどれぐらいが経っただろう?
気がつけば、空は赤く染まっていて、夕暮れ時だという事を教えていた。
「ぬあ、もうこんな時間か……つうか、記憶が所々抜けてるんだ…が……?」
周囲が飲んでいた時の様な騒がしさがないのに気がついて、周囲を見てみると。
正に死屍累々と表現すべき状況となっていた。
俺の周りには意識のある者は1人も居らず、皆地面に横たわり。
ある者は静かに、ある者は騒がしく寝息を立てていた。
「あれ? 乾杯してからどうなったっけ? そういえば、レギンは…っと居た」
レギンと合流した記憶がなかったので何処かで飲んでいるのかと探しに行こうとした瞬間、足元にレギンが居るのが見えた。
レギンは上半身裸にセリーアの胸を枕に、彼女の身体を抱き締めつつ寝息を立てていた、その幸せそうな顔が妬ましい。
……けしからん奴め、魔法を使って、レギンの額に油性の黒インクで<肉>と書いてから、自分の部屋へと戻り寝なおす事にした。
周りを見てみると、この場にSランク全員が集合しているのだ。
都市全体規模での祭りでこれはどうなんだ……?
思う事は多々あるが、とりあえず身体に酒が残っている様でかなりだるかった。
祭りの翌日、レギンの悲鳴と周囲の笑い声で目が覚めた。
時間は太陽がほぼ真上にある所を見ると正午といった所か?
レギンはどうやら額の<肉>の文字に気付かないまま居たらしく、先ほどそれに気付いて、その反応を見た周囲が爆笑をしているのだろうと予想して家を出た。
家を出て、ギルド本部の前にある広場ではレギンを中心に人だかりが出来ていて、ほとんどの人達がレギンの顔を見ながら笑っていた。
「お~、レギンなんか愉快な顔になってんな」
「ラ、ラフィ~、これやったのラフィでしょ!?
これ水で全然落ちないんだけど、どういうの事なのぉ!?」
「ああ、水じゃ落ちにくいな、頑張って洗えば落ちると思うから頑張れ」
「そ、そんなぁ……」
レギン達と別れ、新しい依頼が無いかを確認する為、ギルド本部に入り、依頼板の前まで歩いた。
Sランクの依頼かAランクの依頼を探してみたが、特に惹かれるものは無かった為、Bランクの依頼を見た時にある依頼を見つけた。
【ホワイトウォルフより北東にある森の調査】
この数年間……いや、今までホワイトウォルフより東、川を渡った先の調査をした事はない。
その上での調査依頼は珍しい。
しかし、目に付いた一番の理由……もしかしたら、今世の生まれ故郷の状態がわかるかもしれない。
まぁ、十中八九滅びているとは思うけれど、この都市に着てからあの村がどうなったかをまったく調べなかったからな。
それに、何故こんな依頼を依頼人の人が出したのかも気になった。
静かにその依頼書を破り、受付へと持って行き手続きを済ませると、足早に旅の準備をする事にした。




