仲が縮まらないわけで。
現在俺はエルドマド帝国から南に行った所にある森の中に居る。
今俺はSランクのランクアップの為の依頼を受けてるんだが、はっきり言ってしまえば魔法のおかげでかなり楽だ。
ローズを誘拐した国を滅ぼしてから3年程が経つ。
その間、ヤナキュさんやレギンが俺とローズをくっつけようとアレコレしたり。その結果またローズに引っ叩かれたり……おかしいなぁ、戦闘中なのに涙が……
「畜生! 『木っ端微塵になりやがれぇぇええええ!!』」
俺が叫ぶと同時に視界の中に溢れていた多くの獅子が、子気味のいい破裂音を立てて爆発する。
内臓等は全て木っ端微塵と表現して良いほどに散り、周辺には血煙が舞っていた……
「フギャアアア!! セラフィさん、さすがにやりすぎニャアアアア、何匹倒したか確認できニャくニャって増すよおおお」
「ハァハァ……セラフィくん格好良過ぎて私もう立ってられない……」
そして、何故かシャロンとミコスで同じ依頼を受けていたりする。
というかだ、この時代、ギルドのクランというシステムが廃れていてちょっと驚いた。
それでも、一応組んでる人達は居るのだけれど、人数はメンバーの1割を切っているらしい。
そして、今クランに換わるシステムとなっているのが『チーム』というシステム。
簡単に説明してしまえば、1つの依頼を臨時的に協力してこなすらしい。
チームの申請は組むメンバー同士で受付に依頼書を渡して、口頭で告げるだけという単純なものだ。
その際の報酬の分け前や万が一メンバー間で問題が起きた場合はそのメンバーよりもランクが上のメンバーが仲介に入るらしい。
その際、一方的に非のあるメンバーには制裁を、お互いが悪い場合は妥協点を見つけさせ、報酬を3等分させる。
上位ランクは下位ランクよりも面倒ではあるけれど、その分取り前等もらえるから狙っている奴も多い事だろう。
この時代、Sランクの人間は意外と多かったりする。
魔物の被害は多いのだけれど、Sランク級では被害を受けるメンバーが少ないのもあるが、基本的に其処まで強くなってしまうと、先ず死なない。
Sランク級のメンバーはそれこそ、不可避な現象でしか死ぬ事は無いだろうと思う。
今回の依頼で無傷で居られる時点でそれは実証されてる事だろう。
【エルドマド帝国領より南にある未開の森で異常繁殖した獅子の討伐】
これが今回のエルドマド帝国から依頼されたものだ。
メンバーは俺とミコスとシャロン、3人ともAランクだったわけだが。
全員無傷だったりする。
ミコスは7匹程、シャロンは9匹程、残り数十体は俺が倒したが。
「あぁ、すまない。
さて、残りの奴っているのかな? ちょっと調べてみるか、『隠れている奴出て来い』……いないな」
そういえば、レギンと何度かチームを組んだことがあったのだが、この魔法を使って依頼をこなしていた時は、レギンの奴絶句していたなぁ。
「この世界でまともにラフィと戦える人なんていないよ」ってな。
「いないみたいだし、報告に行くかあ」
「申し訳ニャいですが、休憩してもいいですかニャ?」
俺はほとんど動かずに魔法で獅子を倒していただけだが、ミコスとシャロンは動き回り倒していたから疲れたのだろう。
顔には汗が浮かんでいた。
実力だけならS級と言われている彼女達だが、それでも複数の獅子との戦闘は疲れるらしい。
まぁ、理解もできる。
俺の魔法で守られているとは言え、彼女達の身体では獅子の爪や牙は防げないからだ。
本来なら獅子の爪や牙は、鎖帷子をつけていようが紙切れのように引き千切るらしいからな。
「ああ、気付かなくてすまない、さすがにここじゃまずいから少し戻ったら休憩にしよう」
「ありがとうございますニャ」
ちなみに俺の魔法という特異の力を知ってるのはホワイトウォルフを拠点にしている一部の上位メンバーとジェネマス夫妻、それとローズだけだ。
何故知名度が低いかと言うと、レギンがこの力を知った心無い人間が、俺に寄ってくるのを危惧しての事だろうと考えたのだろうと思っている。
本当の事は知らないが。
数分程歩いて、少し開けた場所に出たので、2人は腰を下ろした。
俺は焚き火をするため、そこら辺に落ちている枝を拾い、魔法で火をつけてから一息ついた。
ミコスはこの森に入る前に立ち寄った村で買った果実をおいしそうに食べている。
シャロンは自分と俺にお茶を出してくれた。
周囲には自然の香りとお茶の香りがまざり、張り詰めていた緊張が解けるのを感じた。
早々死ぬ事はないというのはわかっているけれど、それでも多少の緊張はする。
2度とジャイアントアントでの死に方だけはしたくないからな。
「ニャ~、あの数を見た時は危ニャいと思いましたけど、セラフィさんのおかげで楽ができましたにゃ」
「ええ、あの数には驚きましたね……さすがは私の婚約者となる人ね……」
シャロンは出会った時からこんな風に言っているが、今後その様な事が現実になる事はないと思う。
どんなに拒絶され様が俺がローズを嫌いになるはずもないし、今は距離を置いてはいるけれど、駄目だったならば、1人で今回は生きようと思っている。
「シャロンさんもセラフィさんも、本当にすごいニャ。
もうセラフィさんは諦めてシャロンさんと結婚しニャ方がいいと思いますニャよ」
最近ではレギンもローズとくっつけようとする事も減り、ローズのご両親でさえローズの態度の困っている様だった。
まぁ、それもそうかとは思う。
基本的に挨拶をした場合無視される確率が5割程。
シャロン達と依頼をこなして帰ってきて、ローズに挨拶した時に引っ叩かれる確率は8割を超え。
最近では視界に入った瞬間逃げられる。
はっきり言ってしまおう、生きるのが辛い。
いったい俺は何をしたと言うのだろうか? 誰か教えてくれないものか。
これも爺さんが仕組んだ事なのではと疑ってしまうのも、おかしくないと思う。
「はぁ……」
「またローズさんの事ですかニャ?」
俺が溜息を吐くときは、ローズの事を考えている時だとミコスはわかっている。
それ以外の事ならば悩む前に魔法でどうにか出来てしまうというのを知っているからだろう。
ミコスだけじゃなく、俺を知っている人は皆わかっていると思うが。
「先程も言いましたが、いい加減シャロンさんと結婚したらどうですかニャ?
見た限りですと、ローズさんに脈は無さそうニャんですが」
「諦めが悪いというのはわかっているけどね。彼女じゃなきゃいけない理由があるんだよ。
だから、シャロンには悪いけど、俺は彼女の気持ちに応えるつもりは無い」
まぁ、自分勝手な理由ではるけど。
少なくとも、俺はローズでなければ満足できないからな。心身ともに。
「さて、早い所報告して家に帰ろうぜ。
片道だけで半月も経ってるしな」
「そう思うニャら魔法で送ってくれてもいいと思うニャ」
「じゃあ、そうするか『飛べ』」
俺が言葉を唱えると、俺達の身体が淡く発光し、北東へと飛んでいく。
なんつうか、本当にこの魔法便利すぎるわ。
死体を生き返らせたり治療するのは無理だし、目の前に目標がいない場合は発動しないが。
それでも十分過ぎるほど便利だと思う。