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転生ルーレット  作者: 秋葉 節子
転生五回目
55/74

俺まだ何もしてないわけで。

 レーナルの案内で歩いている途中、軽くここに来た目的等聞かれたが、村が危険だったので逃げて来たとは言わず、田舎から飛び出して来たとだけ伝える事にした。

俺が村を出てきた時から状況は更に悪くなっているだろうし、仮としてレーナルに話した場合、協力すると言ってきそうなのだ。

遠慮したとしても、たぶん強引に来そうな性格してると思う、万一向かったとして、あの村に到着する頃にはそこは地獄絵図となっているだろう、いや人は居ないかもしれない。

俺が出る時には既に地獄と言っても過言じゃない状況だったからな……


 それに、比較的仲の良かった人達は既に息絶えてたし、何時の間にか殺されていたし見捨てる事にした。

俺1人だけ生き残る事に罪悪感は不思議と沸いてこなかった……というか、自分の意思である程度できるのならば努力はしたと思うが、所詮体躯は子供なのだから出来る事なんて限られているのだからしょうがない。

まぁ、そんなこんなでギルドに登録してここに腰を下ろす予定とだけ伝えた、ギルドに到着した頃、自分の名前を名乗っていなかった事を思い出した。


「すいません、名乗り忘れていました。

 自分はセラフィ=ブルームと申します、歳は13でたぶん人間です」


何故人種を名乗った時に「たぶん」とつけたのか、彼にはわからなかっただろう。

だって俺自身人間なのかわからないし。

普通の人間が魔素なんて訳の分らん気体を吸って魔法なんてものを使うとは思えないし。

因みにレーナルの人種はコボルトではなくロウ獣人という種族らしい、現在この都市だけではなく、コボルトを初め、純粋種と呼ばれる種族は世界中にほとんどいないらしい。

そして、人間と純粋種の血が混ざり合っている獣人達は純粋種を嫌悪している者が多いとレーナルは言っていた。

何故そんな差別が出来てしまったのかはわからないが、レーナル自身は人間も純粋種も獣人も皆同じ人間だと考えているらしい。彼みたいに本気で言える人間が大勢いたならば争いなんてそうそう起きないだろうにと思う。




 ギルドに到着し、レーナルと別れた後、今まで歩いて観察していた町並みを思い出す。

どうやら街の規模はかなり大きくなっていたが街の中自体はそこまでの変化はないようで、俺がコボルトだった時代の名残は所々に感じられる。

ただ、俺がまだコボルトだった時は川を渡る事はできなかったのだが、川を渡るための装置にゴンドラが設置されていて行き来が出来る様になっていた。

何故橋ではなくゴンドラにしたのかと思ったけれど、ゴンドラでなければいけない理由があるのだろうと思い考えるのを止める事にして、ギルドの店内へと脚を運んだ。




 ギルドの中は増築されてはいるが、俺が居た時と変わらない様子だ。

一息着き扉を潜ると前と変わらず懐かしい光景が広がる。

正面奥にはギルドの受領等行っている受付とその脇には関係者以外立ち入る事を禁止されている扉、その右手側には酒や軽食を頼む為のカウンター。


反対側の左手には宿のカウンターと宿として使っている2階への階段がある。

依頼書が張られているクエストボードは扉の両脇に設置されていた。

それは俺がコボルトの時だった前世と変わらない店内だ。


「そこの人よ、すまんが通らせてもらえねーか?」


懐かしさに(ひた)っていると背後から声をかけられ、謝りながら左へと避ける。


「悪いな」


声をかけてきた主に視線を向けてから横に首を振る。

どうやらギルドのメンバーの様だ、種族は見た事の無い特徴がある。

耳は人間と同じ位置にあるが、それは鳥の羽毛の様な羽がついていた。

また、頭部は普通の人間の様に見えるのだが、頭頂部に縦長の赤い鶏冠(トサカ)の様な物が着いている。

更に驚いた事に鼻の所に垂れ下がった赤い肉タブがついており、口は肉質自体は人間と同じだが(くちばし)の様な形状をしていて、何処か鶏を彷彿とさせる容姿だった。

否、鶏の様にしか見えなくなってきた。

いや、今は深く考えない様にしよう……ニワト……いや、彼の格好は所々汚れているが使い込まれた装備を見る限りそれなりに経験を積んでいる剣士の様だし、いざこざを招く程俺も愚かじゃないと思う。

汚れているのは依頼の帰りだからだろう。

というかだ、あんな種族まで出てきてるんだなぁ。

そういえばと、ギルドの中で所々に設置されている丸テーブルの所で飲み食いしているメンバー達を眺めていると、人間の様な容姿だが肌が白く長身で耳が異様に細長く尖っている種族や。

逆に白い種族と似ているが肌が真っ黒な種族。

筋骨隆々でいかついおっさん顔なのに慎重が俺より小さい小人っぽい種族。

また、コボルトとはまた違い、猫の様な耳に猫っぽい顔の種族等もいた。

俺の知らない種族がこんなに増えているとなると、爺さんが魔王と言っていた牛人間が居てもおかしくないだろうなぁ。

是非とも会って謝りたい……不可抗力とは言え食べちゃったし。

いや逆に黙っていた方がいいのだろうか。


色々考えたが、とりあえずは置いておこうと思い、鶏いや……彼を見送り自分もギルドの登録する為カウンターに居る受付嬢の場所へと進む。


「いらっしゃいませ、本日は何の御用でしょう…か?」


受付嬢が笑顔を浮かべ、用件を聞いてくる。

なんか最後の方、変に間が開いたがどうしたのだろうか。


「登録を行いたいのですが」


「あ、はい登録ですね。字を書くことは可能ですか? なんでしたら私が丁寧に! 代筆致しますが、それとも手取り足取り腰獲りお姉さんが教える事もできるわよ!」


腰と……は?


「……いえ、大丈夫です」


何か良からぬ言動を吐いた気がする受付嬢を見ながら適当に返事をする事にする。


「そうですか……残念、他のメンバーに邪魔にならない様に横にずれるか適当な席に着き、内容をお書きください、なんでしたら私のひ」


変な受付嬢だなと思いながら、登録用紙を受け取り適当な空いている丸テーブルの一つに腰掛けて要項を埋めてる為文字を書き始めた。


「あぁん、小さいのになんて落ち着いているの……すぐに慌てる可愛い子も好きだけど、落ち着いた物腰の子、いえむしろ最高じゃないの……ああ、あんな小さくて可愛い恋人がいればなぁ……」


何も聞こえない聞こえない。

真面目に聞いたら負けだと考えて、登録用紙の記入に集中する事にした。


何々、1、名前性別年齢をお書きください……


2、得意な武器はなんでしょうか。


3、人間と亜人についてどう思いますか。


最初の頃はまだ個人情報について色々書かれていたり、メンバーになるための簡単なルールの確認等が書かれていたのはよくわかる……けど、10項目を越えたあたりから質問がおかしくなってきた。


11、赤い毛の女性はどう思いますか? なんだこれ……メンバーになるのに関係ないだろう。真紅の髪色、つり目気味で細く綺麗な体型ならより大好きです……と。


12、この街は元々コボルトの集落でした。当時その集落の長の毛は白かったと聞きます。信じますか? こんなのメンバーになるのに必要ねぇだろ……俺がそのコボルトだったし……事実です。と。


それからも到底意味のある事とは思えない事が書かれていたが、一応嘘を書き込む程でもないだろうと真っ正直に書いていく。


20、饒舌なお爺さんはどう感じますか? ……胡散臭い笑顔が張り付いてて常に小馬鹿にした態度の奴なら死んでほしいです……と。


色々疑問に思う事があったが、とりあえず全て埋めてカウンターへ持っていく。


「あ、書けましたか? じゃあ、お姉さんが今確認するから、ちょっと待っててね?

 そうだ、これ良かったら飲んでいいからね、お姉さんからのご褒美よ」


 受付嬢は用紙を受け取りながら、何処から出したのか小さい樽型の容器を俺に渡し、用紙に目を移した。

というか、この受付嬢はなんなんだ? さっきから接客態度が色々と怪しい気がするんだが、なんでこんな変な接客態度の受付をこのギルドに置いておくんだろうか。

それと、受付嬢の目を見ると背筋に寒気が走るのだが……

それにしてもコレ美味しいな……何処か柑橘系のような酸味を感じる、舌が子供なせいか酸味の強いせいか反射的に顔を顰めたがうまい。


 受付嬢は俺が書いた受付用紙を眺めていると、突然目を見開いた。

いきなり目力がすごい事になった受付嬢を見て軽く引いたのはバレていないと思う。

そして、横に置いてあった何かの紙と俺が書き込んだ用紙を見比べていく。

赤い毛の部分で更に目を見開き、最後の爺さんの所までいくと眼球が零れ落ちるんじゃないかと思うぐらいに目を見開いていた。

近くで受付嬢を眺めていたメンバーは、その受付嬢の表情を見て悲鳴を上げたのは心の内に仕舞って置く事にしよう。

彼女とメンバーの彼の為に。


「ええっと、一寸(ちょっと)待ってもらってもいいかな? ……的…率……9……」


「え、ええ」


何か嫌な予感がするのだけれど逃げてもいいだろうか?

何かボソボソと何かを呟いていたが意味はわからなかった。

数分程受付嬢を待っていたが、中々戻ってこない。

逃げてしまおうかと思い踵を返した頃、先ほどの受付の女性が俺を押し倒す勢いで肩につかみかかってきた。


「大変お待たせしました! ギルドマスターがお待ちですので着いてきてください!」


受付してた時の明るい表情は何処に行ったのか、息を荒げ、目は血走ってかなり恐い形相で俺にギルドの奥へと押し込んでいく。

俺なんかしたの……? さっき受け取った容器このままでいいんだろうか? というか、軽く危険を感じるのは気のせいか?

心当たりというかここに到着したのまだ数十分前ですけど。

まぁ、ここまで来て殺されるって事は無いと思うが、万が一の事があるし警戒はしておこう、俺には魔法があるしな。

そう思いながら、受付の女性に押されながらギルドマスターが居るという部屋に大人しく案内される事にした。

それにいい加減俺になにやら殺気とか嫉妬の様な感情を混めた強い視線を送る男たちがちょっとウザかったし、まぁ大人しく着いていくか……

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