最初からクライマックスなわけで。
何回も転生を経験すれば色々と慣れはすると思う。
うん、慣れはすると思うんだ、さすがに幼児の時に派手に動き回れば目立つし危ない目にもあうだろう。
しかし、それは派手に動いた時前提だ。
俺は人間に生まれて、この13年間、普通を心がけて生きてきたつもりだ。
確かに、生後10ヶ月ぐらいで歩いたり喋ったりと他に比べると早いと言われるかもしれないけどさ。
けどさ! こんな扱いを受ける様な事をした覚えはまったくない。
俺が今回生まれた村は名前もない知らない村だった。
その村は、何処かの国の管理に置かれている訳でもない。
というかだ……ここ何処なの?
この13年間、普通に過ごしながらも現在地が知りたくて周辺の探索とかも色々したのだけど、四方が森に囲まれて居て、何処なのかがわからなかった。
子供の脚では森を抜ける事も出来ない……というか過去に数回遭難しかけた。
前世で現在地を割り出すのに役に立ったカリブス国の北にあった山も見当たらんし……
少なくとも、今まで居た場所とは遠く離れているという事だろうか?
それと、この村で生まれて分かった事がある、カリブス国やその周辺は<恵まれていた>という事だ。
この村は住民は少ない、それなら食糧にも困らないだろうと思ったのだが。
畑を作るための種等ない、周辺の森を探しても基本的に見つかるのは毒物ばかり。
極たまに何処からか現れる巨大な熊か空を飛んでいる鳥を矢で撃ち落とすぐらいしかできないという生きるにはあまりにも辛い場所だった。
まぁそれでも、過去に多くの犠牲を払ったおかげなのか一種の毒性の植物とある鳥の血を合わせて調理すれば、毒を中和する事が出来る物等が発見されている為、餓死をする人とかはいなかった。
まぁ、それは今までなのだが。
俺が13歳になったこの歳、周辺地域には新種の毒性植物が群生し、そのせいか今まで被害を受けながらも狩りをしていた熊等の動物が近寄らなくなってしまった。
そのために遠くへ探索に向かった一団も居たが、誰も帰ってくる事はなかった。
狩りが出来る男達の大半は帰らず、周辺には録に食べられない物だらけ。
その結果、この村の住民がどうなるかなんてのは想像するに難しくないだろう。
1人、あた1人と餓死者や飢えの余り毒性の植物を口にして中毒死する者が増えていった。
中には餓死した死体を貪る人間まで現れたのだから、この村の末期具合がわかる。
今世の親は両親共に狩りに向かってから帰ってこなくなったため既に居ない。
親の居なく、まだ裕福とは言えないまでも現状よりもマシだった時はまだ周囲は優しくしてくれていたが、今はそうも行かないだろう。
弓矢で鳥を射抜く事が出来るという特技もあったため、まだ良かった。
しかし、今は人間が人間を食べるというかなり狂っているのが現状だ。
弓矢や木槍等が扱えるが、基本的に非力な子供である。
飢えた男達に殺されるのは時間の問題だろう。
食糧はほとんどないため長距離の移動に不安を感じるが、ここで村人に殺されるよりは森を抜けれる事に賭けて、単身この村から脱出する事にした。
村を抜け出して数日、まぁなんとかなるだろうと思っていたのだが、甘かったと言うしかない。
どの方角へと最初は悩んだが、とりあえず食糧が多そうな南に進路を取り、歩いていたのだが、見つかるのは毒性と思われる植物ばかり。
紫と緑の斑模様の50センチぐらいの木の実なんて毒だろう常識的に考えて。
もしかしたら栄養満点の植物かもしれないが、幾ら腹が減ったとしても俺には食べるという勇気はもてなかった。
それにまだ歩ける体力も気力もあるのだ、まだまだ極限状態とは言えないと思う。
自分的には冷静な思考が出来てると思うし。
それからまた3日が経過した。
森はいまだに抜ける事が出来ない。
食糧らしい食糧も見当たらない。
心なしか、木が毒々しい色をしている気がする……
もしかしたら、今回何もせずに死ぬかもしれない……だって目の前に頭が牛の人間が見えるんだもん。
どう見ても幻覚だろうこれ……
そして、半分力尽きたように膝から崩れ落ちて、四つん這いになり、その牛人間を見ていると、どうやら15匹程の狼に襲われているようだった。
死ぬかもしれないけれど、あの狼を倒す事が出きれば食糧が手に入ると考え、力の入らない体に叱咤して動き出す、近くに生えている比較的普通に見える木の枝を渾身の力を込めて折る。
先端は細長くなっているが、槍としては扱えそうにない、鈍器としてならなんとかなりそうかな。
そして、狼の方を見ると、先ほどよりも数が増えていて、牛人間が劣勢だった。
牛人間の所々には切り傷等が出来ていてあのままでは狼に殺されるのは時間の問題だろう。
牛人間と友好関係が結べるかわからないが、協力するためにふら付く足で駆ける。
「手伝います!」
牛人間にそう伝えてから近くに居た狼に木の枝で応戦するが、役に立っているのかさっぱりだ。
牛人間は俺の存在に驚いた様だったが、狼達に意識を向けて近くの狼へ手に持った石斧で殴りつけていた。
30分程すると、狼達は数を減らし、生きているのは後3匹程といった感じか。
俺は怪我こそ負っては居ないが、体力は尽きて満身創痍だった、ほとんど気力だけで立っているに過ぎない。
牛人間は至る所に傷が出来ており、大量の血を流していた、このままでは出血死するのではないかと思われる量だ。
それにしても、この狼達は何故退かないのだろうか。
既に狼は3匹まで減っているし、そこまでこの牛人間に恨みでもあるのだろうか?
野生の動物ならば、少し不利になれば逃げると思うが、この狼達は執拗に牛人間を殺そうと襲いかかっている。
そして、程なくして残りの狼も息絶えて、人心地つくと牛人間の方に向き彼の安否を聞こうとした瞬間、牛人間は何を思ったのか俺に襲い掛かってきた。
焦りながらもなんとか横に転げて回避する、悲鳴を上げる体に力を入れて立ち上がるが、その時には牛人間は力尽きたのか倒れ微動だにしなかった。
一体なんなんだ……しかし、俺の体力も気力も限界を超えて、視界は真っ暗になった。