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転生ルーレット  作者: 秋葉 節子
転生四回目
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落ち着いたと思ったら、また一波乱あるわけで。

 入水式が終わり。

その夜、人間とコボルト達で宴を行った。

コボルト集落でのギルド発足と人間達との和解を祝ってだ。

この数ヶ月で、コボルトと人間の距離は確かに近づいていると思う。






 まぁ……全てがうまくいくとは思っていなかったんだけどな、さすがにあんな事件が起きるとは思わなかった。


 それは入水式も終わり、集落の中限定ではあったけれど、人間とコボルトが日常で仲良く暮らしている事が当然に見え始めた頃だった。

ある朝、コボルトと人間が1人ずつ殺されていた。

集落の西に位置する家が集まった場所にある小さな広場で発見された。

当初は人間とコボルトで言い合いになり、殴り合いにまで発展してこの結果になったのでは? 等、喧嘩の末の死亡説が上がった。

死体の2人はそれなりに仲も良かったためありえないと思いつつも、何も手がかりらしき物が見つからず、その日はお開きとなった。


そしてその翌日、東の広場でコボルトの死体が1つ発見された。

コボルト達はソレを見て、人間はやはりコボルトとは共存する意思はないのだと騒ぎ始めた。

しかし、俺はどうしてもそうは思えなかった、まるで何か作為的に見えたのだ。

それに、ローズもそんなはずはないと否定していた。

他の人間はどうあれ、ローズの話は信用できると思っていたし、その日はコボルト達を落ち着かせ、ギルドに調査の依頼を出した。


翌日、次は人間の死体が西の広場で発見された。

この3日間で4人というヒトが殺されるという事件に、2種族間の友好関係は徐々に崩されていくのがわかった。

やはりこれは、2種族の友好関係を快く思っていない人物だろう。

そして、それは多分個人ではなくて、集団で存在し行動している。


ローズに自分が思った事を伝え、彼女も支部のギルドマスターとして同じ見解の様だった。

その夜から、戦闘型のコボルトとメンバーを混ぜた数名で集落の巡回をしてもらう事とした。


その夜は、厳戒態勢の為か誰も殺される事はなかった……が、もしかしたら隣人が犯人ではないのか? という疑心暗鬼に苛まれる事になった。

そのせいで小さいが、それでも確かに衝突を繰り返すようになっていた。


今の状況は犯人達にとって、理想の状態へと向かっているんだろう。

犯人達の目的、俺の予測ではあるけれど…この集落を奪い、尚且つコボルトを根絶やしにする事だと思う。

そして、コボルトは人間の敵だと思い込ませるんだろう。

もしかしたらだが、共存派の人間も対象になっているかもしれないが。




 その後も厳戒態勢は解く事はなかったが、数日おきにコボルトと人間の被害は増えていくばかりだった。

そして、2種族の関係も悪化の一途を追っていく。

目の前の状況を見る限りでは悪い事しかおきてないように見えるが、しかし、いい事もあった。

ギルドと一部のコボルトの信頼関係だ。

メンバーと、それに同行するコボルト達はお互いを認め合い信頼し始めていた。

中にはメンバーに登録するコボルトさえ出始めたのだ。

事件の存在は悩ましき事だけれど、それでも人間とコボルトとの絆は繋がっていると思えた。




 「最初の被害が出てから、既に1月……けれど、解決に向け進展は全く無しとはさすがに、危険ですね。

 このままでは2種族で大きな衝突が起きるのも時間の問題のように感じます……」


自分の部屋で被害者の名前が書かれた木簡を見ながら悩んでいると、何時の間にかローズが家に入っていたようだ。

顔を上げてみれば、ローズの隣には弟の1人であるマニが立っていた。

どうやら、マニがローズを俺の部屋で案内したようだ。

蛇足ではあるが、俺の家族は皆ローズを気に入っている。

基本的に俺の好みと似通っている部分はあるんだろうか?

しかし、マニがローズの隣に立っているのを眺め、軽い嫉妬心に駆られる自分に気付き少々情けなく思った。


「ああ、ローザさん気付かなくてすいませン。

 どうやら、事件について夢中になっていたようで」


椅子から立ち上がり、彼女に挨拶してから、応接用にと作らせた席へと勧めた。

ついでに、マニに何か飲み物を出す様頼んだ。


マニはどうしてか赤面をしていたが頷き、部屋から出て行くと、集落で続いてる事件について話始めた。





 「……では、ギルドとしても今後はその方針で行こうと思います」


「ええ、コボルトの住民にも徹底させましょウ、一日でも早くこの事件が解決できる事を願って」


今後ギルドとコボルト達はどう行動していくかを決め、彼女をギルドの支部へと送る事にした。

彼女の方が明らかに実力は上だが…まぁ、男として送っていかないのはどうかと思ったからな。

彼女を支部へと送る道中、予想よりも種族間の溝が広がっている事に気付いた。

数名のコボルトは殺気を含みながら彼女を見ているし、少なくない人間のメンバーは俺へと敵意を向けているのがわかる。

他の事で忙しいからと他に任せすぎるのもいけないか。

俺はその夜から、皆が寝静まった頃を見て集落の散策を始めた。






 深夜、集落の中を散策してる間は死体が見つかる事はなかった。

しかし、時折影が動いてる様に見えたため、やはり誰かが2種族の友好関係を崩そうとしているんだろうと確信した。


そして、誰が2種族をよく思っていないか、それはすぐに分かる事になった。


その日も、集落の中を散策し明け方頃、家に帰った。

そして、泥の様に眠ってる最中に起こされた。


「族長! 南の森から武装した人間の集団が向かっております!」


突如、部屋に入るなり、頭に響くような音量で叫んだアキタ、その叫び声に頭の中で木霊こだましている言葉の意味を確認するなり、飛び起きた。


「何!? わかった、すぐに向かう。 東と西、どちらに向かってきている!?」


「東側に向かってきてるのを確認してあります、西側には10名程のコボルトは配置済みです」


アキタに向け、頷く、そしてその旨をローズにも伝えるよう伝えると、鎧と武器を身につけて東の門へと駆けた。

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