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転生ルーレット  作者: 秋葉 節子
転生四回目
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無意識とはおそろしいと思ったわけで。

今回短いです、すいませんorz

 「ようやくできましたね」


ローザが、完成したギルドの支部を眺めながら、横に立つ俺へと喋りかけてきた。

ギルドと正式に和平する事になり、コボルトと人間がともに生きると言う事が現実となって、数ヶ月。

集落にはそれなりに巨大なギルドの支部ができた。

この支部の責任者が現在メンバー最高位のSランク、ローザだ。

1階部分をギルドの受付として利用し、2階より上はメンバーが利用する宿になっている。

ギルドの支部は東側から集落に入り、少し進んだ広場に面している。

4階建てでこの集落で一番高い建物だ。

それと家を建てたのは数名の大工職人と移住希望者のメンバー達だ。

コボルトも手伝える奴は手伝っていたが、コボルトは人間と比べると遥かに不器用なためか、旨く役立ってる様には見えなかった。


「ところで、ラフィさん」


ここまで来たという事に感慨深く感じていると、ローザが話を切り出してきた。


「ギルドの方針としては、コボルトの方々もメンバーを希望するならば、メンバーとして活動する事も可能ですが、どうしますか?」


「そうですネ、希望者ガ居ればメンバーになる事もいいと思いまス」


「あ、そうですよね…この集落のコボルト達を引っ張っていくという大事な役割がラフィさんにはありますもんね」


…? 彼女は一体何が言いたいのだろうか。

よく分らないが、彼女の表情を見ると、庇護欲と言うのだろうか、彼女を手元においておきたいという衝動に襲われる。

俺の本能が彼女を求めているのは、彼女が仮面をとった時からわかっている。

そして、彼女を求める気持ちはこの数ヶ月で恐ろしい程に強くなっていた。

遠くない日に俺は彼女に襲い掛かるかもしれない。

ただし、返り討ちにあうのは目に見えているわけだが。

彼女の強さはまさに異常と言えた、足の速さこそ俺の方が早いが、それ以外は全て彼女が圧倒している。

あの細身の身体の何処にそんな力があるのかと疑う程の膂力。

彼女は顔を覆うフルフェイスの兜、その下には鉄製のコイフ。

身体には全身を覆う鎖帷子に何枚もの薄い鉄の板を重ね合わせたプレートメイル。

肩を防護するポールドロンやグリーブ、ガントレッド等全身に鉄を貼り付けたような重装備っぷりだ。

その癖、動きに鈍さはなく、身に着けている物は鉄じゃなくて布なんじゃないのかと思ってしまう程だ。


『族長、入水式が始まりますので、お急ぎください』


声のした方へ振り向くと、アキタが此方を眺め待っていた。

先月ぐらいから正式に族長となった。

キャプテンはまだまだ若いのだが、面倒くさいと言って全て俺に丸投げだ。

ちなみにキャプテンは今子供の世話をしながら気楽に過ごしている。


「ラフィさん、あのコボルトの方はなんと?」


「ああ、堀に水を入れるので、急いで向かってもらいたいそうデス」


彼女に頭を下げ、川と面している堀の所までアキタと向かう事にした。




 アキタと2人で水をせき止めている場所へと向かっていると、アキタは深く溜息を吐いてから俺に話しかけてきた。


『族長は…あの人間とつがいになるつもりですか?』


『番に? いや、種族が違うだろ……ソレは無理な話だ』


アキタはさらに深い溜息を吐いてから、こちらへと振り返ると、口を開く。


『見ていてわかりますよ、族長はあの人間に求婚している事ぐらい。

 あの人間は気付いていないと思いますが、コボルトは嫌でもわかります。

 族長は自分でわかってなかったのですか?』


コボルトは番としたい者に求婚行動をする事は知っているが、自分が…それも無意識にしていたことに驚き絶句する。


コボルトは番とする異性に対して、鼻を額にくっつけ、了承した場合は異性側は喉に鼻をくっつけるという物だが、まったく記憶にない。

考え始めるとあったく浮かんで来ないが、気恥ずかしさを覚え赤面していくのがわかった。


『今後気をつける…』


無意識の内に行動しないよう、より一層気をつけようと心に決め、堀の場所へと急いだ。


『あ、族長?』


とりあえず、アキタの言葉は聞き流して急ごう、うむそうしよう。



 到着すると多くのコボルトと数名の大工が待っていた。

聞き耳をたてると、どうやらこの堀の作り方を聞いているみたいだ。

人間もコボルトの文化に興味を示している者もそれなりにいた。

見た限りでは友好的に付き合っているようで少し安心感を覚える。

そこでフッとある事に気付いた。

何故異種同士で会話できているのかと。


『ああ、あの人間達と話してるのはセリーナから人語を教えてもらっている者達ですね。

 名前はたしかラジとブーチだったと思います』


コボルトの中にもやっと、人間と手を取り合おうという者が出てきてくれたと思い、嬉しさがこみ上げてくる。

今の関係から少しずつ良くなっていけば、いつか人間とコボルトが暮らしていくのも当たり前の世になるんじゃないのか。

そんな期待が湧き上がってきた。

少し前までは族長なんて面倒だと思っていたが、ローズも見つけた今なら胸を張って族長ができる、そんな気がした。




 「では、これより入水ヲ行う」


川と堀の間には木の板でせき止めている。

そして土の上部を削り少しずつ水を入れていくのだ。

コリーに指示を出して、10人程で作業に入る。

人間達から分けてもらった縄を腰に巻いたコボルト達がせき止めている土の上部を数センチ程削っていく。

せき止めている土が一気に崩れないかと少しの不安が過ぎるが杞憂に終わり、予想以上に順調に作業は進んでいった。

30分もすれば川の水が徐々に流れていく。

水位から30センチ程掘り水が堀に流れていくのを見届け安堵の溜息が漏れた。

今後も少しずつ削っていけば水堀は完成するだろう。

ただ、攻めて来る者がいつか現れると思う、その時この浅い場所は危険となるため、どうにかするのが今後の課題だなと頭で考えながら、入水式の終了を次げて解散となった。

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