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転生ルーレット  作者: 秋葉 節子
転生一回目
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やっぱり寿命は短かったわけで。

 ギルドを開業して5年が経ちました。

三十路過ぎた。

最近身体が重くなってきた気がする。

それでも若者には負ける気がしないけどな。

というか、こう思う時点で歳を取ったなぁ……って思うわ。

軽く憂鬱である。


 文字はそれなりに浸透してきている。

といっても、漢字については俺の知らない文字も多いし嫌いだから平仮名とカタカナだけだがな!

基本は平仮名だけど名詞とかにだけカタカナを使うようにした。

明らかに紀元前レベルとかファンタジーっぽい世界なのに文字が平仮名って笑える。


『シュールだな』


 確かに。

ついでにギルドの大半の奴らも文字は読み書きできるレベルにはなったし。

この村と周辺の村々には文字を義務教育として教えさせてるから大丈夫だろう。

今後他の村まで開拓できるようになっていけば世界に平仮名とカタカナが広がっていくんだろうなぁ。

それはそれで楽しみな世の中ではあるけれど。

「俺はそこまで生きていられるのか?」


『いや、無理だろう。寿命あと1年ないし』


 短い! というか1年持たないの!?

まぁ、ラキ達息子たちと別れるのも悲しいけどそれはそれで運命なのかなぁ。


『運命だな』


神がそう言うならそうなんだろうな。

にしても、前世より倍長生きしたんだな俺。


『むしろ早死にしすぎだろ』


誰のせいだよ。


『神様の気まぐれ☆』


気持ち悪い神だな。

それにしてもギルドのおかげか村に人が増えてきてるなぁ。

人口は1000人を越えてきてる。

ギルド名簿も300人ぐらいまでメンバーが増えてきたからな。

そろそろお金とか必要になってくるかなぁ?

紙幣とかがいいのかな? けどやっぱ金貨とか銀貨が浪漫だよな……金とか銀……鉄とか見つかんないかな?


『山でも彫れば見つかるんじゃね?』


そんなもんなのかねぇ。

鉄鉱石っての? 見つかっても製鉄技術もないしなぁ。


『じゃあ、製鉄技術を発明すればいいじゃない』


どうやってだよ……やりかたさえわからんぞ俺。


『あれだ、アスファルトみたいに熱して溶かして叩けばいいんじゃね?』


そんなもんなのか……?

色々抜けてる気がするんだが……


『そこはあれだ、神様の能力発動で何故か出来ちゃったとか』


OK……とりあえずこれだけは言わせてくれ。


「この神ダメすぎだろう……」


『ほめ言葉として受け取っておくよ』


 そうですか……

じゃあ、とりあえず製鉄の件は任せた。

鉄鉱石は何処にあるんだ?


『あの山とかじゃね?』


あの山って……俺が生まれた場所じゃねーか。

あそこにあるのか?


『あるね』


御都合主義で?


『御都合主義で』


じゃあ、とりあえず掘ってみますか。






-=Ξ=-=Ξ=-=Ξ=-






 うん……軽く30kgぐらいはあるかな?


『出たろ出たろ』


ああ、でたね……掘る度に出るとか……

御都合主義万歳か。

それで、どうやって鉄を作るんだ?


『知らん』


もう……イラッてくるよなぁ。

じゃあ、どうするか。

火で溶かせばいいのかな?

けど、アスファルトよりも高温じゃないと無理だろうし。


『まぁ、思ったとおりにやるといいだろう、ある程度はワシの力でなんとかする』


まぁ、土で1メートル程の高さにして直径40センチ程の炉を作ってみた。


『お疲れ、じゃあ火つけれ』


それはそうだ、中央には地面まで届く穴を掘って横からは風を送れる穴も掘ったし。

あれだ、昔風鈴の作り方とかをテレビで見たときの炉を真似てみた。

残りは神さまの気まぐれでな。


 火をつけてから木炭と鉄鉱石を入れる。

風を入れる場所にはお手製の空気入れのような物、神が言うにはフイゴって言うらしい。で風を送る。

最初は大した火力じゃなかったんだが、徐々に火力が上がっていったのがわかった。

木炭と鉄鉱石を少しずつ足していく。






 で、現在皆が寝静まってもおかしくない時間。つまり深夜。

黙々と火を燃やして、鉄鉱石と木炭を足す作業を繰り返している。

これいつまでやればいいんだ?


『明日の朝ぐらいまでかな?』


長いな……

それに眠い……

というか、これ一人でやる作業じゃないだろう。


『そうだな』


ラキとかに手伝い依頼すりゃよかったかなぁ……

けど、報酬なんて渡すもんないしな。

貨幣を作ったほうがいいんだろうけど。

そんなのはさすがに王様とかにならんと無理だわなぁ。


『寿命も残り少ないしな』


……後1年ないんだよなぁ。

前世に比べれば遥かに長生きだったな。

楽しい人生だったし。


『それはよかった』


まぁ、文明的に低すぎたけどな。

もっと便利な時代に生まれたかったぜ。


『それはしょうがないだろう、お前が異世界のところに刺したんだから』


元々は爺さんのせいじゃないか。


『30年生きてても覚えてる事に驚いたわ』


 何故か記憶力が良くなっててな。

未だに覚えている。


『ほう……もういいみたいだぞ?』


幾らなんでも早すぎじゃ……って朝になってる……


『御都合主義だな』


 ……だな……

所でこれどうやって取り出すんだ?

手突っ込んで取り出すのか?


『大火傷したいのか? 外側をぶち壊せばいいんだよ』


了解、石のハンマー持ってくるか。






-=Ξ=-=Ξ=-=Ξ=-






 ……何故?


『御都合主義』


 またそれか、なんで鉄作ろうとしたのに剣が出来てんだよ。

どんだけ御都合主義を使えばいいんだ。


『まぁ、あれだ神様からの贈り物って事で』


 色々突っ込みたいが……まぁいい。

この剣はありがたくもらっておく。


『名前決めてやれ、一応神様が手を加えた物だから聖剣って奴になるだろう』


 聖剣ねぇ……

うん、カリブスにしよう。


『なんでまたそんな名前に?』


 なんとなくだなんとなく。

決めろ言われても直感でしか浮かばんよ。


「よろしくなカリブス」


 言った直後にカリブスが発光しだした。

何これ? 離したほうがいい!?


『気にするな、付属効果がつくだけだ。ついでに名前も彫っておくわ』


 随分とサービス精神旺盛だな。

光が治まると剣は鞘に納まってた。

何度も言うけど御都合主義だなぁ……いいのかこんなんで?


『いいだろう、気にするなよ』


 気にしたら負けなのは20年弱と30年強生きてるからなんとなく悟ったよ。

にしてもこの世界で初の鉄の剣か……なんかいいな。


『戦争とか今はないから宝の持ち腐れだけどな』


 いいんだよ、これは気分なんだから。

まぁ、今日は寝るかぁ。

寝てないからキツい。






-=Ξ=-=Ξ=-=Ξ=-






 それから1週間ぐらいが経過した。

村人やクラン《仲間》が剣を見た時は誰もが目を輝かしてカリブスに魅了されてたな。

どうやって作ったのかとか色々聞かれた。

神様からの贈り物とか言えないから説明に困ったものだ……


『うまく誤魔化してたろ』


 まあな……

山から普通とは少し違う石……鉄鉱石を彫り。これを熱する。

いい具合に解けてきたらそれを熱しながらハンマーで打ちつけて鍛えると……

明らかにおかしいが知識が彼等にもないので納得してくれた。

ついでに何人かは自分で作ろうと試行錯誤してくれている。

これなら何年かすれば鉄器時代に入るかな?


『そのうち出来るようになるだろうよ』


 神様の言葉だから絶対なんでしょうね。


 そんでもって、今重大な問題が発生している。

ヘタすればこの村が滅ぶかもしれない問題だ。

簡潔に纏めると未開拓地帯から化け物が100匹ぐらい出てきた。

聞いてないぞあんなの。


『聞かれてないし』


なんだよあれ! どこのファンタジーものだよ。


『あちらの世界で言うゴブリンとかコボルトをモデルにしてみました。結構自信作なんだけどどう?』


本当この神どうにかしたい。


 襲撃者か……大人よりも一回り小さい犬顔の二足歩行してるのがコボルトだな。

んで、浅黒い肌に子供と同じぐらいの身長でずんぐりむっくりな体型、そして頭には小さな角のような物が生えているのがゴブリンか、どちらもグロテスクだな。

あいつらの持ってるものは木製の棍棒ぐらいか。

こちらの戦える奴ら……Dランク以下の奴らはビビってるか、Cランク以上の奴はなんとかなるか?


「Cランク以上の奴らは前に! それ以下は村に入れさせないように警戒と周辺の村に援護要請出せ!」


 簡単な指示はこんなものか。

どれぐらい強いのかは未知数……まぁ、出来る事だけやりますかね。

さすがにギルド長なんだし先頭に立たないとな。


「親父! 俺もいく」


ラキか……なんとも可愛い奴だ。

だが、こいつはまだEランクだから戦闘に参加させるわけにはいかない。

子供が目の前で死んでほしくはないからな。


「ラキは弟達と母さんを守ってやれ、メンバーなんだから出来るな?」


 下の息子達と妻を餌にするのは汚いかな? けど、リキだろうかルキだろうが死ぬところなんて見たくないからな。

つーか……あれだろこの剣ってこのときのための剣だろ


『頑張れよ』


 腹立つなぁ……あと1年ない命だしなそっち行ったら殴らせろ。


『殴れるもんならの』


腹立つ……が今はそれどころじゃないな。

村を守らないとな。


「Cランク以上の奴ら! なんとしてでも村を守るぞ。俺に……続けぇえええ!!」


俺が怪物達に走っていくのに続きラージやブチ達他のハンター達も距離を詰めていく。

怪物たちの先頭に居るのは……犬顔の奴、コボルトだったか。こいつの方が足が速いみたいでゴブリン達は数十歩分ほど遅れている。

これはチャンスだな……


「先に先頭の……コボルトと銘々する! コボルトを叩き潰してから奥の奴ら……ゴブリンを片付ける。村を守れえええええ」


「「「「「おおう!!」」」」」


 地鳴りのような叫び声を皮切りにコボルトと人間の衝突が始まった。

コボルト達の犬のような悲鳴と断末魔。

人間達の死にたくないと叫ぶ断末魔や異常な悲鳴。


 いつもならば血を見たくない俺だけど今回は違う。

守るべき者が後ろに居るんだから。

甘えてる場合じゃない。


「ひ、ひぃいぎゃああああああ」


真横で聞きなれた声が悲鳴をあげる。

ブチがコボルトに喉を噛み千切られた姿がそこにあった。


「ブチ!? くそっ!」


 悪態をつきながらカリブスでコボルトを斬り殺していく。

奴等は腰に布切れを巻くだけだから剣で斬るのは容易い。

だが、他の奴らを状況はよろしくないみたいだ。

周りを見てみるとこちら側が押されていた。

クラン達は奮戦しているが周りのCランク達では不利だ。

カリブスでコボルト達を数匹斬り続ける。


中央に居る俺の所は押しとどめているが、他の所はどんどん押されていく。

昨日までは気楽な毎日だったのに!


『すまんすまん』


こんな時も軽いな!


『まさか、こんなに人間達が弱いとは思わなくてな』


これけしかけたの爺さんか?


『うむ、伝説の一つもほしいかなぁって?』


俺死んだとき覚えておけよおおおおお!!


腹いせにコボルト達を斬り続けていると、コボルトとゴブリンが合流していた。

救いなのは村へと向かわずに俺を狙っている事か。


『さすがに、村も滅びたら伝説にならんからな、お主を狙わさせた』


はいはい、かみさまありがとうございますよ。


『有難がってないな』


少しは思ってるから安心しろ。

しかしどうしかものか……はっきりいって多勢に無勢だ。

コボルトが半数近くは減ったとはいえ、それでもゴブリンは50匹近く居る。

これ勝てるのか?


『ちょい厳しいか……うーん……よし!』


 何が良しなのかわからんが……悪い予感しかしない。


 ゴブリンとコボルト達は俺を囲んで円陣を組むと、正面から二匹? 俺に向かってきた。

他のゴブリンやコボルトと違い明らかに体格が大きい。

なるほど……リーダーってことか。


『そいつ等を殺せば逃げてくようにしといたぞ』


 なんともまぁありがたい御都合主義で。


 気合を入れなおし剣を構える。

リーダー格の二匹も棍棒を構えて警戒するかのような奇声をあげている。

まず飛び掛ってきたのはコボルトだった。

真正面に飛び掛りながら大きく振りかぶった棍棒を縦に叩いてくる。

跳躍力には驚いたが動きが直線的過ぎるため半身になり避ける。

隙を突いて剣できりつけようとするが、それを狙ったかのようにゴブリンが低い姿勢のまま横薙ぎに叩いてきた。


 意外といい連携だな!


『そうゆう設定にしたから』


 設定とか言うなよ! 雰囲気が壊れるだろ!


『随分と冷静だな』


 冷静じゃないわ!


 本当にこの神は雰囲気を台無しにする。

っと! 注意散漫にしちゃまずいな。

二匹は上から下からとタイミングをずらして攻撃を仕掛けてくる。

どうするか……

考えに耽っていると同時に二匹が攻撃を仕掛けてきた。

一匹ずつの攻撃に慣れてきてたために意表を突かれた!?

右手から来ていたゴブリンの方は棍棒を弾きながら一気に剣を叩き着けて絶命させる事は出来た。

だがコボルトの棍棒をわき腹に思いっきり受けてしまった。


 ボキ……と鈍い音と共に身体がへし折れるんじゃないかという程の衝撃を受けて横に視界が飛ぶ。

ってぇ……これ折れたんじゃねーか……つか肺の痛みが尋常じゃないぞ。


『肋骨が折れてるな。 肺に刺さってるなこりゃ』


 まじかよ……ここで負けたらこいつらに家族や村人達が殺されちまうよな……

コボルトの顔もムカツク。

勝利を確信したかのように眼がにやけてやがる……


 一気に勝負を掛けるといったかのように口を思いっきり開いて飛び掛ってきた。

食い殺そうってか……相打ちでもこちとらいいんだ! 乗ってやるよ。

コボルトが俺の左首筋に噛み付き余りの痛みに目がチカチカと点滅するが、飛び掛る勢いを利用してコボルトの胸に剣を突き立てた。

数秒か数分かわからないがコボルトが顎に力を入れてたが力が抜けるのを確認して引き剥がす。

どうやら絶命したようだな……

足が限界とばかりに折れようとするが剣を地面に突き刺してなんとか耐える。

コボルトとゴブリン達が俺を睨んでいる。

もう動く体力も残ってないけれど、来るなら来てみろと奴等を睨んだ途端に森の中へと逃げ出していった。

なんとか……なったのかな?


『ご苦労さん、じゃあ次話す時はあの場所でだな……』


 つか、今日が寿命かよ……


『ああ、だから一年ないと言っただろう?』


 一年無いと言ったって一週間じゃねーか……


『ま、ご苦労さん次も人間に生まれられるといいな』


その言葉を最後に俺の意識は遠のいていった。

勿論死を覚悟しながら。

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