集落を大きくしたいわけで。
今回冗談抜きでうざい爺さんが出てきます(゜A゜;)
『』はコボルトの言語
「」は爺さんの発言となります。
集落が見えてくると、族長を始め集落の皆が家から出てきた。
どうやら無事に帰ってきたので、出迎えてくれるみたいだ。
そして俺の格好や槍をもったアキタ達を見て村全体で歓声があがる。
『族長、ただいま戻りました』
『おお、白いの良く戻った、それでどうだった?』
『一応2人程倒して装備品をもらってきましたが、状況はまずいというべきですね……
メンバーの中でも特に腕の立つ者が、森に入ろうとしているのを見ました。
当分は南の森に行くのは危険だと思います。
落ち着くまでは狩りを禁止し、人間達の警戒心が落ち着くまでは監視していた方がいいでしょう』
族長につげ、その言葉を聞いた家族皆は意気消沈と言った感じに俯きはじめた。
彼らの気持ちもわかるが、コボルト達を数百と狩っているやつらが居るので危険なのだ。
『……まぁいい、お前らが無事戻ったのはいいことだ。
今日はお前らが無事帰ってきた祝いに祝宴を挙げよう!』
族長の言葉にまた一気に盛り上がる面々を見て、苦笑が浮かんだ。
見た目こそ違うが彼らは本当に人間味がある。
騎士や王族の奴等なんかより余程人間が出来てると思うんだが。
宴は夜通し行われ、なんとも騒がしかったが嫌な気などまったくせず、むしろとても楽しいひと時だった。
ただ参った事に、今回の俺の戦いをアキタが脚色をしながら語るので、女性から熱っぽい視線など送られ続けたため。
……正直、人間と戦ったときよりも変に疲れた。
ローズだったら嬉しいが、不思議と他の者からのそういう類の扱いは慣れない。
むしろ、居心地が悪くなってしまうのだ。
もしかしたら俺はローズという存在に俺の存在全てが惚れているのかもしれないな。
そんな事を思いながら溜息を零すと、周辺からこちらを見ている女性達が同じように溜息を零した。
何故真似をするんだ?
おきる頃には既に日が真上に昇っている程の時刻だった。
宴をした中央の広場では死屍累々といった感じに寝てる者達で埋まっていた。
それにしてもだ、ここ最近で人口が増えてきている。
ちなみにコボルトは3年ほど生きて大人になってから、年に1ヶ月程発情期が起きる。
そして妊娠して半年ほどで子を産む。
族長や母親が言うにはここ数年は3匹以上を産む事も珍しくないと言うほどに子供が出来るらしい。
もしかしたらだが、コボルトが大量に狩られるが故に種を残そうと必死になってたりするのだろうか?
そろそろ村を大きくするべきなのかもしれない。
それに、掘っ立て小屋では色々と厳しい物がある。
あれだ、まぁ夫婦の営みというのを子供の目の前で必死になられるのも困り物だという事だ。
生後1年の時に目の前でやられた時は頭が痛くなったのは、決して良くは無い思い出だ。
ちなみに今年は時間を呼んで狩りにいってましたよ?
勿論、族長達には内緒でだが。
まぁ、そんなわけで、起きたら俺の事を覗いている小さな子犬じゃなくて子コボルト達が覗いていた。
『な、なんだお前ら、すまんな遊ぶのに邪魔か?』
『んーん!』
『白い兄ちゃんのはなしがききたくてまってた!』
『わ、わたしも!』
そう言いながらチビっ子どもが俺を囲んでいた間合いを更に近づき、目を輝かせながら人間との戦いを聞いてきた。
コボルトはまぁ人間に多くの仲間が殺されているし、人間を殺す場合もあったが、最近ではほぼなくなってきたために、こういう話は英雄譚に見えるのかもしれない。
『話してもいいが、脚色はしないぞ? ア……槍もってた兄ちゃんが言うようなことは無いんだぞ?』
『ん! それでもいい!』
『人間をたおしたはなしが聞ければいいの!』
子供でも血の気が多いというか怨恨が深いなと内心嘆息しながら先日の話っぷりを、リアルさ重視に話始めた。
あ、もちろんグロ描写は言わなかった、可愛そうだし!
女の子いるしな! いくら顔が小型犬のような顔でも女の子なのだ。
俺なんてシベリアンハスキーだしな……
そして、俺のリアル重視な話をすると、徐々にテンションを上げていくチビっ子一同。
『白い兄ちゃんすげぇ!』
『わな? っていうのすごいね! どうやって作るの?』
『あのつよい人間を簡単に倒せるんだもん! とっても大変なんだよ!』
と色々と想像を膨らまして、罠の作り方等を聞いてくる。
しかし、気分は子犬に懐かれるような感じだ。
親というより飼い主? 的な視点が複雑だ。
しかし、犬より遥かに頭いいけどな!
『そうだな、今後の事も考えて罠を皆で作っていこうか?』
『うん!』
『白い兄ちゃんだいすき!』
チビっ子達の可愛さに自然と口元が綻ぶ。
なんて可愛いのだろう、人間とは違う可愛さを彼らは持っている。
あと数年もすれば大人となり戦士として戦うのだから少々複雑だ。
そう思いながら、馬防柵のような物や原始的な落とし穴等を教えていく。
チビっ子達は少しでも覚えようと必死なのか物覚えがすごくいい。
日が暮れる頃には落とし穴を作ると言っていた。
チビっ子達と色々な罠等を作るために話ていると、後ろから族長が声をかけてきた。
『なんだ白いの、興味深い話をしてるな俺も混ぜろ』
笑いながら族長が俺の横に座り、今後の集落をどうしたいか等を聞いてきた。
族長自身も人間という脅威をただ見ているわけにはいかないと思っていたらしい。
『俺は頭がいいわけじゃないからな、白いのが生まれてきて本当助かっているぞ』
笑いながら俺の肩を叩き、『じゃあ真面目な話をしようか』と笑顔を一変させ真面目な表情に戻していた。
俺もチビっ子達と話していた時のような顔つきから真顔に戻して、話し合おうと族長に向き直った。
『ほら、子供達は親と一緒にいなさい、今から大事な話があるからな』
『やl! ぼくも話きく』
『わたしも!』
チビっ子達は自分が大人になった時のために、話を聞きたいと駄々をこね、俺がどうしたものかと困っていたら。
いきなり族長が大きな笑い声をあげた。
『ガハハ、これは将来有望な子供達だ、お前さん達が大人になった時、この集落がどれだけのものになってるか楽しみだな! え、白いのよ』
そう言い、大声で笑ってる族長を見ていると、自分もなんだか楽しみな気持ちになってきた。
そして、食事をしながらも話し合いを続け、子供達もさすがに眠気が勝り始めた頃に今後の方針が決まった。
まず集落の繁栄。
これは集落を大きくし、万が一人間達に攻められてもそれなりに抵抗ができるように大きくする。
簡単に言えば、ケファラスのような城塞都市もどきを作るのだ。
今のペースで人口が増え、10年後も十分に住めるように巨大にさせるつもりだ。
石材で城壁とかは難しいが、木でチビっ子達と話した馬防柵ぐらいは作れるだろう。
それと出来るかはわからないが、水路を作るのはどうかと族長に提案すると、実験的でもいいから作ってみることに決まった。
作る事が出来たならば、堀をつくれば侵入も容易ではなくなるだろう。
それと、木製ではあるが単純な槍も作る事に決まった。
なので武器が棍棒だけではなく、槍も増えるのだ。
まるでレキの時代に戻ったような錯覚を覚える。
しかし、ローズがいないのは確かに寂しいんだけど、こういう街づくり的な話をして行動に移すって、楽しいんだよな。
癖になりそうではある。
「ほう、癖になるとな!?」
出た、糞爺だ。
「糞とは酷い言い様だのう……仮にも神様に対して」
それもそうだな、糞に失礼だ。
「言うようになったのう……お主が成長してお母さんは嬉しいよ」
誰が母さんだ誰が、とりあえず今楽しい時間過ごしているんだから邪魔するなよ。
「そうかぁ、お主の大事なあの子の情報を教えようと思ったんだが、黙っておこう……じゃあ、残りの人生頑張ってな」
おいいいいい! 待て! 爺さん、教えろよ。
『黙ってないで教えろよおおおおおおおおおおお!』
『いや、いきなり黙ったのは白いのだろう?』
っは!? つい、声に出して叫んでいた……
というか、あの爺さんまじで教えにきたのか?
それとも弄るためだけに話してきたのか?
とりあえず、殺したいほどうざい……
一体なにがしたいんだ、そして何をしてもらいたいんだあの爺さんは……
『で、いきなり叫んでどうしたんだ?』
族長が俺の奇声について聞いてきたが、どうにも答えようがなく困った。
どうやって答えようかと思った所で、思わぬ所から救いの声が届いた。
『もう眠い~』
チビっ子達が眠いと騒ぎだしたのだ。
なんというタイミング! 爺さんじゃない神様に感謝。
『子供達を送っていきますので、そろそろ解散にしましょう』
『いや、だからなん……『では、失礼します』…あ、おい!』
逃げるが勝ちという言葉があるように、この場は逃げるに限る。
族長に頭を下げてから、自分の家に近いチビっ子達を3人程抱えて、チビっ子達の家へと送った。
残りのチビっ子達を族長に任せて家に帰る事にした。
しばらくは街を大きくする為に頑張りますかね。