表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ルーレット  作者: 秋葉 節子
転生四回目
37/74

予想以上にまずい状況かもしれないわけで。

 『じゃあ、男が使ってたのを一式もらう』


『ああ、白いのが決めてくれて構わない』


人間の死体から使えそうな装備を剥ぎ取り、この森で生活するための寝座ねくらを作った地点に戻った。

戦利品は基本的に相談しながら分け合う。

食糧の場合は均等に分配するが、装備みたいな貴重品は大抵1人から1個なので要相談なのだ。

それで今回は罠を考え尚且つ1人で人間を倒した俺が好きな物をもらっていい、と皆から言われたので男が使っていた胸当てと鉄製の剣をもらった。

やはり自分用に柄が作られてないためか握り辛いが扱えなくはなさそうなので我慢するほかない。

布でもあれば柄に巻いて多少はなじませる事も出来るだろうが、コボルトの技術じゃ布の質が悪すぎてどうしようもないから諦める他ないだろう。


3人は女から奪った、所々が潰れている鎖帷子と槍をどうするかと相談していた。

俺としてはアキタに槍とブルドックには鎖帷子を持っておけばいいのではないかと思うのだが。

シェパードは素早いから重い物を身に着けると動きが遅くなるだろうし、着慣れない物を見につけるから動きがぎこちなくなりそうだし。

ブルドックは力は他の2匹より強いがコボルトの中でも動きが遅い方だ、体格も筋肉質なので人間の防具を身に着けてもそこまで邪魔にならなそうだ。

剣で斬られても致命傷を負うこともそうはないだろう。

まぁ……当分は人間と正面から戦う訳にはいかないが。

アキタはコボルトの平均並の筋力と素早さがある、槍で俺や前に立って戦うだろうブルドックの少し後ろから射程の長い槍で援護してもらえれば経験の少ないメンバーぐらいならなんとかなると思う。


だがブルドックが槍をアキタが鎖帷子をもらってしまっていた。


まぁ、他のメンバー達はまだ来るだろうから数日置いてまた狩ればいいだろう。

毎日人間達に襲いかかってメンバーの被害が増えれば高ランクのメンバーがこの森に来るかもしれないからな。

そうなったら、俺の人?生だけじゃなく、他のコボルト達の命が多く失われてしまうだろうし。

こいつらは不満が残るかもしれないが今は耐える時だと思うのだ。




 それから3日後、シェパードと一緒に人間達が居る村に偵察にいった時、恐れていた事がおき居た事を知ってしまった。

既にAランク以上のメンバーが3人程村に来ていたのだ。

どうやらその日にAランク以上のメンバーが到着したようで村総出で歓迎していたから気付けた。

最悪に近いが彼らの来訪が知れたのはいい事だ。

何故こんなに早く? と思ってしまったが、よく考えればすぐに答えは出た。

2人の身包みが剥がされたメンバーの死体が二つ。

そして、男の腹部には罠とわかる木の食いが刺さった後があった。


やったのがコボルトではないとしても、手練といわれてもおかしくないBランクのメンバーが殺されている。

新種のモンスターかもしくは腕の立つ盗賊がやったのか。

どちらがやったとしても注意するのは当然だろう。

何故、あの時罠を処分しなかったのかと内心毒づきながら村を後にして予定より早くコボルトの集落に戻る事にした。




『何故戻るのだ! 人間に復讐するのはこれからではないか』


アキタとブルドックに集落に予定より早く戻る事を告げると、ブルドックは納得できないと抗議の声をあげた。

シェパードも何故そんなにも人間を恐れるのかと俺を睨みつけている。

内心ではメンバーを2人とはいえ容易く殺せた事で自惚れが生まれてしまったんだろう。


『お前らはメンバーの強さをわかっていない。

 人間の村人達が歓迎していたメンバーは人間の中でも特に強い奴等だ。

 俺達4人掛りでさえ手傷を負えさせれるかわからん』


『そんなのはやってみないとわからんだろう!』


ブルドックは怒りのあまり体毛を逆立てながら吼えはじめた。

もし、俺達が村の近くに居たのをメンバーに見られたら気付かれるかもしれないと恐々としているというのに。

メンバーが近くに居たとしたら襲われてもおかしくないのだ。

シェパードもいつもの余裕がなく、毛を逆立てこそしないが雰囲気に怒気が混ざっているため怒ってはいるんだろう。


『2人とも止めないか、たかが2人殺したぐらいで俺達が誰よりも強いと思っていないか?

 言っておくがそんなのは大きな勘違いだと気付くべきだと思うが。

 それに…何故あの時、あのような戦いをしたか理解できてるのか?』


アキタの言葉に怒っていた2人は考え始めたのか怒った雰囲気も潜めて静かになった。

数分もすると、2人とも首を横に振った。

……怒るのを抑えた俺は偉いと思うんだが、どうだろうか。


『はぁ……2人とももう少しリーダーに耳を傾けようか。

 その3人というのはこの前殺した2人よりも強いという事だ。

 俺もそいつらを見てないし、実際どれぐらい強いかなんてリーダー達の話を聞いた限りでもわからない。

 けどな、この中で一番強いリーダーが逃げなければ危ないと言っているんだ。

 そして、あの罠という物が通用する相手じゃないみたいだし、俺達が勝てる見込みはないからこそ、集落に戻ろうと言ったんだよ……ですよね?』


アキタは最後に俺を見て、同意を求めた。

アキタはちゃんと理解できてたのだろうと、感謝の気持ちでいっぱいになる……

身体能力こそコボルトの中では並だが、頭の回転はかなりよさそうだ。

2人はまた少し考え込む。


『わかった…それと白いのが考えた事を理解しようとせず、感情に任せてすまなかった……』


アキタの言葉で理解できたんだろう、それに今日までの3日間で次の手等を相談してたので、俺が人間を倒したいのだと思い出したのかもしれない。

まぁ、倒したいと言うかコボルトを守りたいって訳なんだけどな……

確かに人間は信用できない奴は信用できないと思うし。

憎くないと言ったら嘘になるが、俺も元は人間だし今後も人間になるかもしれない。

悪感情がないと言えば嘘になるが、嫌いなわけじゃないし。

それに、人間を憎んで、ローズが人間でしたなんてなったら実際愛せるだろうが、複雑な心境になりそうだ。

まぁ、ローズがコボルトだと嬉しいんだけどな。

ローズの事だから、コボルトでも可愛いのは当たり前だろう。

早く会いたい、というかだ、族長などしないで旅に出たい……切実に。


『わかってもらえたらそれでいいよ。

 俺はお前達に死んでほしくないからな』


3人に向かってそう言うと、ブルドックとシェパードはもう一度『すまなかった』と頭を下げてくれた。

彼らに死んでほしくないのは当然の事だし、わかってもらえたならとやかくいう事でもないしな。

塒に使っていた場所は多少いじって、あたかも他のメンバーがキャンプをした後のように見せた。

もしかしたら、既に森の中にAランク以上のメンバーが入ってきている可能性もあるため、常に迅速な行動を心がけなくてはいけない。

それに今俺は鎖帷子と胸当てを身につけてるため鉄同士が擦れる音で耳がいい奴が近くに居たら気付かれる危険性もあるからな。


『こんなもんでいいだろう、よし家へ帰ろう』


他の3人が頷くのを確認してから体勢を低くし出来る限り早い動きで森を北側に抜ける事にした。


集落に戻ったら森での狩りは禁止にしてもらおう、たぶん被害が、より一層増えることになる。

行くのは少数での偵察だな、発見されないように細心の注意をはらってもらわないとな。

偵察に言って殺されるのが一番まずいからだ。

ただでさえ狩りの禁止にするため南へ行くコボルトが減る。

そのため勘のいいメンバーは何かしら気付くかもしれない。

そこに偵察しているコボルトを見れば疑問はさらに深くなるだろう。


血気盛んなシェパードなんかよりも、どちらかというと臆病と言えるコリーが向いてるかもしれない。

そう思ったが、たぶん恐怖のあまり悲鳴なんてあげてバレそうだと思って止める事にした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ