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転生ルーレット  作者: 秋葉 節子
転生三回目
33/74

帝都についたわけで。

 「やっとついたあああああ」

ビロードが諸手を上げて大声で叫ぶ。

国境を越えて5日が経過した。

俺達は今、帝国首都エンドワールについていた。

その間、盗賊の襲撃が2度あったが、怪我人も無く、無事撃退できた。


「いや、本当助かりました……こちらが報酬となります」


ジャックスさんは丁寧に一人一人にお礼を言いながら銀貨3枚を渡していく。


「いえ、こちらも助かりました」


心から助かったと思う。

ローズも楽な旅が出来たし、彼女と2人だけだったらもっと大変だっただろう。

もしかしたら彼女に怪我をさせていたかもしれないと思うと寒気がする。


「いえいえ、では、本当にありがとうございました」


門を抜けて、俺達3人とビロード達の5人以外のメンバーは早々とはなれていき。

俺達5人はジャックスさんとまだ話していた。

俺とローズは元々ここに腰を下ろすつもりだったので、いい情報はないか聞いていたのだ。

アルード達は勿論俺達についてくる気なのでわかる。

けど、ビロード達はなんでいるのだろう。


「どうしたビロード? 行かないのか?」


「んー……お前らはこの後どうするんだ?」


「そうだな、とりあえず借家か宿を借りて、金を稼いでから家を買うつもりだ」


それを聞いて、少しの間ビロードが思案している。


「おっし! それなら…「貴様ら!」…なんだ?」


ビロードが声の聞こえた方を見る。

俺達もそれに習い、そちらの方を見ると帝国の兵士達が100人程此方に向かってきていた。

なんだ? 俺達はここについたばかりだし、何かあったのか。


「貴様、アラフィル=アッハバーナだな? 皇帝エルドマド6世様の后様となるフェティーダ=カリブス姫の誘拐した疑いで逮捕する」


こいつらの言った意味がわからなかった。

誰が皇帝の后になるって?

俺のローズがといっていた気がするが気のせいだよな?


「何のことだ」


「カリブス国から、貴様の所業は聞き及んでいる! カリブス王からの密書もここにあるのだ。

 言い逃れが出来ると思うな!」


自然と騒ぎに注意を向ける野次馬が集まっていく。

ビロード達は訳がわからないと言った表情だ。

アルード達も困惑している。

俺は腹が煮え繰り返りそうな怒りを覚えていた。


「嘘です!」


その言葉に、ハッとする。

彼女は俺の影に隠れていたのだが、俺の前に出てくる。

咄嗟に彼女の前に出て、隠そうと思ったが彼女は手を俺の前に出し、留めた。


「私は自分の意志であの国を捨てました。

 それに私は皇帝との結婚等聞いてもおりません、あなた方は謀られたのですよ」


彼女は、真っ直ぐに指揮官のような男に向けて言う。


「しかし、コレは決定事項です、……どちらかというと貴女様の方が狂言に聞こえますが?

 それに貴女様の意思は関係ありません、我が皇帝は貴女様を強く所望しておられます故。

 応じない場合は無理矢理にでもと仰せつかっております」


「それでも、私はお断りいたします」


俺は彼女の前に出て、剣に手を掛ける。

アルードとガルドも落ちついたのだろう、彼女の横に立ち武器に手を掛けていた。


「抵抗する気か……お前らが抵抗するというのなら、カリブス国とは戦争になると思いもしないのか?」


「生憎俺は国なんてどうでもいいんだ、彼女に忠誠を誓っているからな。

 彼女が居る場所が俺の国だ」


そう言い、帝国の奴等は俺を鼻で笑い、手を掲げた。


「王妃様を奪還しろ、あの3人の命の有無は問わない」


「応」と兵士達が叫び、襲い掛かってくる。


「ジャックスさん方…悪かったな、安全な場所で隠れててくれ。

 それと、ここまでの旅路楽しかった、ありがとう

 アルード、ガルド、ローズを連れて路地裏に入れ! 路地裏ならこの数でも多少は楽に戦えるはずだ」


ジャックスさんに言い、アルード達にローズの護衛を任せて敵兵士の中に駆け出していく。

彼女達が野次馬をどかしながら路地裏の入るのを確認すると、帝国の指揮官と思わしき男へと進んでいく。


「笑止!」


指揮官は構えて近づいてくる俺に気付くと剣を構える。

笑止とは珍しい言葉を知っていると内心関心しながら、翔る速度を上げた。

刹那、指揮官が振り下ろす剣を隣に居た兵士の身体を引き寄せ盾にする。


「あ……へ?」


盾にされた兵士は間抜けな声をあげ、力なく崩れた。

思いもよらなかったのだろう、仲間を斬り殺した事にショックを受けた指揮官は数瞬呆気に取られる。


「それが命取りだ」


言うと、ハッとした指揮官が咄嗟に剣を盾代わりにしようとしたが、遅かった。

鎧がない急所である腋に剣を突き刺す。

腋から心臓めがけて刺した為、ほぼ即死だろう。

近くに居た兵士達は指揮官が一瞬で殺された事にうろたえている。

数がどれぐらいいるかわからないが…と考えながら、1人2人と切り伏せていく。

ローズ達は大丈夫だろうか?

路地裏の方を見ると、兵士達が列を成して入っていくのが見え、咄嗟に駆け出す。

路地裏の中では聞きなれない男の断末魔や鉄同士が打ち合う音が響いてきている。


後ろから来る兵士達を無視しながら路地裏に向かう。

路地裏には兵士達の死体が数体転がっていた。

奥を見ると、兵士達のせいで視界が利かない……さっきまで聞こえていた打ち合う音も聞こえなくなっていた。

もしかして……悪い予感が頭を横切るが、すぐに気を引き締めて奥へ駆け出す。

まさか後ろから俺が来るとは思っておらず、兵士は混乱しながら無力に殺されていった。


10人程斬り殺すと、ローズの下までたどり着いた、ローズは怯えた表情を浮かべ地面に座り込み、ガルドは地面に伏していた。

アルードは怪我は負っていないようだったが、何処か呆気に取られているように見えた。


「ローズ大丈夫か!?」


「あ、ラ……ラフィ、駄目…逃げて!」


彼女の場所まで駆け寄り、安否を問うが、瞬間後ろで殺気がした。

彼女と共に、前のめりに倒れると、右腰のあたりに熱く焼ける様な痛みが走る。

その痛みがなんなのかすぐにわかった。




アルードだ。




「アルード、お前……」


「すまないとは思う……けど、な……悪い、姫さんを渡さないと……家族が一番に殺されるんだ。

 姫さんを渡せば皆の命だけじゃなく……家族皆が楽に暮らせるだけの金もくれるって言ってたからさ。

 ガルドは姫さんを守るつもりだったから……邪魔だったんだよ」


「そんな話を……お前は信じるのか!?」


アルードに怒声をあげるが、ガルドを殺したせいなのか、どこか魂の抜けたような表情でたっていた。


「信じたからこそ、ガルドを殺したんだ、後はラフィ、お前だけだ」


まさか裏切られるとは思っていなかった。

彼女に忠誠を誓ったのだから、裏切るなどありえないと思っていた。

自分の馬鹿さ加減に腹が立つ……

アルードも忠誠を誓ったからと俺と同じなわけがないじゃないか。


斬られた場所に手を当てると、それなりに深いのか結構な出血量だ。


「じゃあ、そういう事だからさ、ラフィ。

 お前やガルドと過ごした旅は楽しかった」


アルードは真顔になり、剣を俺に振り下ろしてきた。

俺は、右手の剣を投げる。

その剣を咄嗟にアルードが防ぐが予想外の攻撃をされたため体勢を崩した、その隙を見逃さず一瞬で距離を詰めて左手でアルードの首を掴む。


「グッ……は、離せ」


「俺も……楽しかった」


俺はそう呟いて、右手アルードの頭を持ち、へし折った。

帝国兵士はそれを見て、息を飲むが俺の腰から血が流れていくのを見ると、余裕が生まれたのだろう。

自分こそが俺を殺してやるんだと考えてなのか、剣を突き出し襲い掛かってくる。


なるべく彼女とは離れないように注意しながら、襲い掛かってくる兵士達を1人また1人と切り伏せていく。

鉄の鎧ではない場所を斬り付けるとはいえ、刃こぼれするため使えなくなった剣を捨て死体から剣を奪っていく。

1人1人を数秒で殺していくが通りの方から続々と兵士達が入り込んでくるため、きりがない。




 1時間近くもすると出血のせいか頭がボーッとしてきた。

しかし、兵士達はいまだに途絶える気配がない。

内心悪態をつくが、現実は変わらない。

一体どれだけの兵士を殺しただろうか。

50ぐらいまでは数えてた気もするがいつの間にか数えるという事が出来なくなるほど無心になっていた。

兵士の死体は他の兵士が運ぶため、死体の数はないが地面には血の海が広がっている。

そして、また1人斬り殺す。


兵士達は怯えながらも俺の体力がもうすぐ底をつくのがわかるのだろう。

勢いはいまだに途絶えない。

また1人断末魔を上げて地面に倒れる。

剣を杖代わりに立ち、目の前の兵士を睨みつける。

兵士は焦った表情を浮かべたが、少しすると、余裕のある嘲笑を浮かべた。


どういう事だ……

不振に思って、笑った意味を考えた瞬間、後ろを振り向く。

短剣を喉元に突きつけられ、羽交い絞め(はがいじめ)にされているローズの姿があった。


「貴様!」


「動くな!」


脅しだろうと、考え一歩近づくと、彼女の喉に短剣が軽くささったのだろう。

「痛い」と彼女が悲鳴をあげ喉元から赤い雫が一筋降りていった。


「いいか、そのまま動くなよ」


動けない俺は睨みながら、何も出来ない自分が歯痒く歯を噛み締めていた。

後ろに居る兵士達が、今までの怨みを晴らす勢いで俺に剣を突き刺していく。

簡単に殺すつもりはないのだろう、下半身から腰と足元から上に剣を突き刺してゆく。

そんな俺を見ながらローズは涙を流しながら俺を見続けていた。


 不思議と痛みがなかったせいだろうか。

何処か他人事のように思いながら自分の身体に刺さっていく剣を見ていく。

元々血が足りなく、体力も尽きていたせいか。

身体に力が入らなくなり身体が地面に落ちると、視界も暗転していく。


ローズの俺を呼ぶ悲鳴を聞きながら意識が暗転していった。

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