子孫だからって許せない事もあるわけで。
玉子の披露宴も終わり、無事? 帰国したカリブス国一同。
今は親衛騎士団団長に説教されてる俺である。
まぁ、運良く軍事問題にはならなかったから良い物の万が一戦争になったらどうするのかと言われた。
ぶっちゃけるとそんなの俺には関係がない。
親衛騎士は国に特に強い忠誠を誓う集団だ。
しかし、俺は国への忠誠心なんて上辺だけだ、俺の忠誠の対象はローズなのだから。
ローズを大事に扱ってるのなら、もう少しの忠誠心を分けてやる事も吝かではないのだが。
「で、アリバルドから、フェティーダ王女に騎士の誓いを立てたと報告があったんだけど?」
少々苛立った声で俺に聞いてくる団長。
「ええ、その通りです」
「何をしたかわかってるか?」
「勿論」
団長は顔を俯かせ肩がわなわなと揺れている。
「貴様は馬鹿か? 国に忠誠を誓っておいて個人に忠誠を誓うとは」
「学がないのは認めますね、それにフェティーダ様は王族です、なんら問題はないでしょう」
「問題があるから言っておるのだ!
なんて事をしているんだ! 国に忠誠を誓った身で個人にそれもフェティーダ王女等…「訂正を」…何?」
「フェティーダ様を団長とは言え騎士個人が<等>と軽んじる言葉に訂正を求めます。
忠誠を誓うに価する方だからこそ、私は忠誠を誓いました。
いかに団長と言えど、フェティーダ様を軽んじる態度を取るのならそれなりの処置をとらせていただく所存であります」
殺気を出しながらも、団長に笑顔を向ける。
暗に「それ以上言うなら打ち殺すぞ」と言う感じにだ。
「っ……しかしだ、俺は認めんぞ。正式に行うというのならば親衛騎士に貴様の居場所はないと思え!」
「そうですか、では今までお世話になりました」
俺の即答振りに団長は絶句し顔を強張らせている。
「では、届けは後日に出します故、本日はこれで失礼致します」
そう言い、親衛騎士の詰め所から出る。
無駄に金のかかった防具は売って新しく作るか。
この無駄に派手な装飾が掘られた鎧は好きになれんからな。
今後どうするかを考えながら、とりあえずローズに会おうと思いローズの私室へと向かった。
-=Ξ=-=Ξ=-=Ξ=-
「今なんて……?」
「ですから、フェティーダ様の騎士をやると言うのなら、辞めろと言われたので辞めてきました」
そう笑顔を答える。
彼女はそこまで大事になるとは思ってなかったのだろう、顔が引きつっている。
「わ、私のせいですか?」
「いえ、自己判断です」
今回、ローズはネガティブ思考のせいかなんでもかんでも自分のせいにしてしまう嫌いがある。
どう考えても相手が悪い事も自分のせいだと思いつめるのだ。
そういう思考になるような状況を作ったこの国に忠誠心などあるはずもないだろ?
「……ではアラフィルは今後如何するつもりですか?」
「そうですね、フェティーダ様御付きの私兵にでもなりたいとは思っておりますが」
「ですが、それはお父様が……」
「認めないでしょうね」
まぁ、そうだろうな。
王が認めない者に忠誠を誓うなんて。
簡単に言ってしまえば、異端者みたいなもんだ。
「アラフィル、親衛騎士に戻りなさい、今ならまだ間に合うと思いますから」
「もう手遅れですよフェティーダ様、国より貴方様に忠誠を誓ったと団長の目の前で言ってしまいましたから」
「じゃ、じゃあアラフィルは」
「そうですね、たぶん父親からも捨てられるかと」
さも関係ないかのような笑顔でいるのだろう、俺は。
彼女は俺の表情を見て絶句し、震え始めている。
「わかりました……出来るだけやってみます、アラフィル……何処までも着いてきてくれますか?」
「この命に代えても」
騎士の礼で返事をして、その日は久しぶりに実家に帰宅した。
まぁ、その夜に父親から勘当されて追い出されたけどな。
その日はギルドの宿屋に寝泊りした。
翌日、退職届というか、まぁ、親衛騎士辞めます的なことを正式に伝えて、ローズへ連絡はギルドの横の宿でお願いしますと伝えた。
一応騎士になる前はメンバーやってた時期もあったから簡単な依頼を受けて、過ごした。
メンバーの依頼をこなして数日経った頃に、ローズからの手紙が着いた。
内容を読むと北の領地を一部もらえる事になったのでそれに着いてきてほしいと書いてあった。
日付と時間が書いてあったのでそれを確認して待った。
当日が待ちきれず、街中を散策していると、後ろから誰かがぶつかってくる衝撃を受けた。
殺気とか感じなかったから気付かなかった。
後ろを見ると、どうやらローズのようだ。
目元が赤いのだから、ないてたのか?
何があったのか心配になり、抱きついている彼女を話、彼女の身体を見る。
彼女の格好はこの時代の町娘そのものだ。
頭によぎる<変装>という単語。
「フェティーダ様、何かあったのですか? 姿を見る限り尋常ではなさそうですが……」
俺が彼女に質問すると身を切り裂かれたかのような悲痛な表情を浮かべた後に首を横に振る。
何かあったのだろう。
「フェティーダ様が良ければ、私の部屋まで来ますか……?」
そうたずねると、力なく頷き宿屋まで案内する事にした。
宿の自室で彼女が落ち着くまで待ち何があったのかを聞く事にした。
しばらく経ってから、重く閉じた口が開き言葉をゆっくりと紡いでいく。
「アラフィルが騎士を辞めるといった日、父上にどこか国の領地を貸してもらえるように言いました……
父上は最初、反対をしていましたが、母上達は気が楽になると言った風に分けてあげろと言っていました。
他の家族たちの言葉を聞いて父上も獣人族達との国境線の一部の領地ならばいいと言ってくださいました。
その場所は馬車で3日程の北東に位置する古い村なのですが。
昨日、その道中に私を殺すように命令する父上の姿を見てしまいまして……
いくら、アラフィルが私を守ると言っても危険な事です。
だから……だから、逃げてきました。
私は何もしてないのに……人並みの幸せがほしかっただけなのに!」
最後の方になると声は涙声でそして、悲痛な声が響いていた。
本当に、この国はどうしようもない。
救いようがないとも言うが。
「フェティーダ様……」
「その名で呼ばないで!
私は、フェティーダ=カリブスの名を捨てます……
今の私は名も無き一人の人間です……王族でもなんでもない一人の人間です!」
彼女は目から涙を零しながらこちらを睨む。
「わかりました、それでも……私は貴方に忠誠を誓った身、貴方が望むのであればどこまでも着いていきますよ」
抱き締めたい衝動を抑えて、頭を撫でる。
「けど、私に居場所なんてあるのでしょうか……」
確かに、不安だらけなのだろう。
今の彼女は何も持っていない。
あるのは今着ている服のみだ。
それと俺か?
「そうですね、一緒に旅にでも出ますか。
それか帝国へ亡命しましょうか?」
彼女はまったくそんな事考えてなかったかのように驚く。
「エル…ドマドに?」
「ええ、あそこなら無闇に手は出せない、あそこにもギルドはありますので食い扶持に困る事もないでしょう。
一応騎士になる前まではメンバーで小遣い稼ぎはしてましたから」
俺がメンバーをやってたという事に驚きを隠せない表情をローズが眺めている。
前世では彼女もメンバーやってたんだけどなぁ?
「まぁ、長話もあれですね、出発しましょう。
本当は出発のために馬を一頭買っておいたので、二人乗りで申し訳ないですが」
「い、いえ……アラフィル、ありがとうございます。
貴方が居てくれて本当によかった」
彼女の言葉に身体全体が震える。
身体だけじゃなく心から歓喜という感情が溢れる。
前世では悲しい目にあわせたが、今度こそ守ってみせる。